50話
【1】
屋敷から、死体が運ばれていく。その青白い顔を、朝日が照らす。
情報管理官は、それを無表情で眺めていた。しかし、その拳は、強くにぎり締められている。
脳裏で死者、負傷者のリストが流れていく。そのなかに、ある3人の名前が浮かぶ。
ソーニャ・ダーン 重体。現在、意識不明。
チユキ・ヤリュウ 重傷。
ガク・アイメルト 重傷。現在、意識不明。
「なぜ……防げなかった」
情報管理官は、空を見上げる。
これは、始まりなのか。それとも終わりなのか―
【2】
《異能殺し》の襲撃から1週間後―
北部同盟中央区は、再度の襲撃に備え、臨戦態勢に入っていた。
北部同盟騎士団長は、《異能殺し》の主犯を逮捕し、調査するという意向を出した。
―つまり、《異能殺し》を生かしたまま捕らえるという事だ。その決定に、騎士団内部は荒れた。
《異能殺し》は、仲間の頭を割り、肉を削ぎ、むごい苦しみを与え、殺した。そんなものを生かすだと?
北部同盟が《異能殺し》に報復を行えば、戦禍が訪れる。無能力者と能力者の分断は広がり、内乱が起こる。それが《異能殺し》の目的だ。
―報復を行えば、異能者との融和は、水の泡になる。分断は加速し、地獄が訪れる。だから、報復は絶対にするな
フェルグスの言葉に、一部の騎士は歯噛みして応じた。だが、仲間や兄弟を殺された者は、受け入れなかった。小さな反乱がおき、規律維持のため、全員が牢に入れられた。
中央区では、憎しみの炎が燃え、どす黒い輝きを放っている。それを抑えることができるだろうか―フェルグスは、自問する。
読んで頂きありがとうございます。感想、評価、レビュー、ブックマーク、お待ちしております。




