49話
《迅刀》は、ソーニャを見下ろしていた。
ソーニャは、《迅刀》を見て、動きを止めていた。まるで凍り付いたように。
あえぐような荒い呼吸が聴こえ、それに歯が鳴る音が重なる。
「4本ある」
《迅刀》は、剣を地面に突き刺す。ざくっ、と鈍い音がする。交差しないように、ゆっくりと地面をえぐり、突き刺していく。
「一本目」
《迅刀》が剣を抜く。ソーニャの表情筋が固まり、唇だけが震える。
《迅刀》は笑ってしまわないように、唇を強くかみしめる。血が滴り、顎を濡らす。強烈な快感―電撃が走ったような。
怖いだろう。叫べ、震えろ、命乞いをしろー
だが、ソーニャは、期待した反応を示さない。傷口を押え、血を止めている。
《迅刀》は、予備動作なく、ソーニャを殴りつけた。鈍い音がし、細い身体が倒れそうになる。
ソーニャの頭がふらつき、《迅刀》の方に向かってくる。
《迅刀》は容赦なく、刀のみねの部分を頭に叩き込む。ガツ、と鈍い音がし、糸が切れたように、ソーニャが倒れる。その形の良い鼻から、どろりと血が流れ出る。
《迅刀》は、倒れたソーニャの脇腹を蹴り上げる。藁人形のように、その身体が転がる。
まぁ良い、寝ている方が骨にあたらないように、刃を垂直に差し込んでいくのにはちょうど良い。
ふと、《迅刀》の背中で、どっという鈍い音。
《迅刀》が振り向くと、その背には、折れた刀を突き立てるガク。
《迅刀》は刀を抜く。傷は浅かったようで、わずかに血が付いているだけだ。
《迅刀》は、ガクの顔を蹴り飛ばす。肉と骨がぶつかる湿った音が響く。
「ゴミが……」
屋敷の奥から、騎士たちの声が聞こえる。《迅刀》は歯噛みし、磁力を使い、屋敷から脱走する。そして、そのまま闇に消えた。
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