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八重咲の勇者たち ~最弱スキルで最強になれ~  作者: 賢河侑伊
第一部 4章 異能殺し 編
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49話

 《迅刀(じんとう)》は、ソーニャを見下ろしていた。


 ソーニャは、《迅刀》を見て、動きを止めていた。まるで凍り付いたように。


 あえぐような荒い呼吸が聴こえ、それに歯が鳴る音が重なる。


「4本ある」


 《迅刀》は、剣を地面に突き刺す。ざくっ、とにぶい音がする。交差しないように、ゆっくりと地面をえぐり、突き刺していく。


「一本目」


 《迅刀》が剣を抜く。ソーニャの表情筋がかたまり、唇だけがふるえる。


 《迅刀》は笑ってしまわないように、唇を強くかみしめる。血がしたたり、あごを濡らす。強烈な快感―電撃が走ったような。


 怖いだろう。叫べ、震えろ、命乞いをしろー


 だが、ソーニャは、期待した反応を示さない。傷口を押え、血を止めている。


 《迅刀》は、予備動作なく、ソーニャを殴りつけた。鈍い音がし、細い身体が倒れそうになる。


 ソーニャの頭がふらつき、《迅刀》の方に向かってくる。


 《迅刀》は容赦なく、刀のみねの部分を頭に叩き込む。ガツ、と鈍い音がし、糸が切れたように、ソーニャが倒れる。その形の良い鼻から、どろりと血が流れ出る。


 《迅刀》は、倒れたソーニャの脇腹わきばらを蹴り上げる。藁人形わらにんぎょうのように、その身体が転がる。


 まぁ良い、寝ている方が骨にあたらないように、刃を垂直に差し込んでいくのにはちょうど良い。


 ふと、《迅刀》の背中で、どっという鈍い音。


 《迅刀》が振り向くと、その背には、折れた刀を突き立てるガク。


 《迅刀》は刀を抜く。傷は浅かったようで、わずかに血が付いているだけだ。


《迅刀》は、ガクの顔を蹴り飛ばす。肉と骨がぶつかる湿った音が響く。


「ゴミが……」


 屋敷の奥から、騎士たちの声が聞こえる。《迅刀》は歯噛みし、磁力を使い、屋敷から脱走する。そして、そのまま闇に消えた。

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