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八重咲の勇者たち ~最弱スキルで最強になれ~  作者: 賢河侑伊
第一部 4章 異能殺し 編
42/69

43話

 今回、残酷な描写が多いです。

 ガクは剣を構え、呼吸を整える。


 瞬時に暗殺者を観察―黒い髪を後ろでまとめ、顔は黒い布で覆われている。視線が見えず、不気味だ。


 暗殺者は、刀を構える―刀身を前に突き出し、両手が顔の横に来るような構え。そして、その背中からは、細かい霧のような物が出ている。


 水分を圧縮あっしゅくし、散布さんぷしている? 毒か? 


 ガクは瞬時に《植物探知》で水滴を分析。噴射ふんしゃされた液が、瞬時に蒸発しているようだ。だが、毒ではない。


 じゃあ、あれはなんだ? チユキのように、氷を作り出すのか?


 考えても仕方がない―一瞬で勝負を決めるしかない。


 ガクは、とっさに布団をり上げる。白い綿とともに布団の残骸が散る。


 暗殺者は、瞬時に反応。布団は両断。しかし、生まれるわずかなすき


 ガクは踏み込み、突きを繰り出す。暗殺者の曲刀を抜け、胴体へ―


 ガクの剣が、何か弾力のある物にぶつかる。誰かが、ぐっと握ったかのような、強い力で押し戻される感触。


 暗殺者は曲刀を構えているだけだ。手で剣をつかんだわけではない。


 ガクの剣は、暗殺者に届かない。まるで見えない盾があるような、異様な感覚。


 なぜだ―


 ガクの背を冷たい汗が伝う。とっさに後退。風切り音と共に、黒い光が鼻筋をかすめる。


 暗殺者は、再度、曲刀を構えなおす。


 あの曲刀、何か仕込まれている―ガクは、呼吸をととのえつつ思考。


 ガクの剣を何かしらの力で弾いたのだ。おそらく磁力か何か。


 ならば、曲刀を使わせないまでだ―


 ガクは《加速》を発動。ゆっくりと泥のように暗殺者へ接近―現実の時間の中では、異常な速度で接近。


 刀をわずかにずらし、首筋を叩くしかない。ガクは暗殺者の刀を、自分の剣でずらし、横へ―


 まず感じたのは、ねつ。全身に焼けた鉄を押し付けられたような強烈な熱さ。


 視界が真っ白/あつ―/あつい/いたいい/たいいたいいたい


 ガクののどから、しぼり出すような悲鳴が出る。


 床がひんやりとして心地が良い。視界のはしで、血が床に広がっていくのが見えた。


「あ……」


 ガクは我に返り、腕を見る―黒い穴が開いていた。ざっくりと皮膚がえぐれている。その傷は数十にもおよぶ。


 意識がもうろうとし、ガクは短い呼吸を繰り返す。粘性ねんせいの液体が口を塞ぎ、何度も咳き込む。


 視界がドロドロとしたものでおおわれていく。世界がやわらかくなり、全身がフワフワと浮かび上がる。


 世界がゆっくりと白く、ぼんやりとしていく。


 ガクは、妙にはっきりとした意識で考える。


 この傷の原因は、あの水滴だ。あれは、噴射ふんしゃされ、水滴が蒸発した数秒後に、非常に微細な結晶になる物質がふくまれているのだ。


 結晶に普通の速度で当たるだけなら、皮膚がわずかに赤くなるくらいの切れ味なのだろう。だが、それに《加速》でぶつかれば―


 世界が白くにごり、閉じていく。

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