42話
《迅刀》は闇の中を進んでいた。
ソーニャの護衛は、全員殺した。数人の騎士が血の海のなかに沈んでいる。完全武装の騎士が、なすすべなく殺されている。
騎士たちは、全員が剣を握ったまま死んでいた。刃が壁に突き刺さり、それを肩に担ぐようにして、倒れている。まるで、剣を振り上げた瞬間に強風で吹き飛ばされたかのようだった。
がら空きの胴体からは、臓物がこぼれ落ち、ぬらぬらと血で濡れていた。
《迅刀》は手に持っていた曲刀をふり、付いていた血をはらう。サーベルの刀身は長く、太い、刃幅も通常のものより分厚かった。
「さて」
《迅刀》は、ポーチから丸い陶器を取り出す。これは、閃光を発生させる爆弾の一種で、強い光と音で、敵の視覚と聴覚を一時的に奪う。
耳が良すぎるのも仇になるよ、《角笛吹き》―
異能には、メリットとデメリットが必ずある。それを理解した者が勝利するのだ。
《迅刀》は、閃光爆弾をソーニャの部屋に投げ込む。
ぼん、とくぐもった音がし、それと同時に《迅刀》は部屋に飛び込む。
ベッドの中に、ソーニャらしき人物はいた。
《迅刀》は、鉄妖に指示―全身の金属鎧を媒介にし、加速。ヒトを越えた異様な速度で、ベッドへと接近。
布団をはぎ取らず、上から刀でめった刺しにする。
しかし、狙った場所に当たらず、布団の柔らかい感触と、ごり、と何か硬い物に当たった感触。
何か、いやなものを感じ、《迅刀》は後ろへステップ。布団がはがれ、現れたのは、刀を持った青年。
「ソーニャ……じゃないね、君」
《迅刀》は、瞬時に《植物使い》のガクであると判断。
ガクが《加速》と言う技を使うというのは、調査済だった。だが、問題はそれにどう対応するかだ。
《迅刀》は身体に装着されている「ある機構」を機動。それはガクが《加速》を利用した瞬間、死に至る最悪の武装。
《迅刀》はほほえむ。
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