41話
深夜、ソーニャのいる屋敷―
チユキは、ソーニャの部屋の近くにいた。刀を手に、周囲を警戒していた。どうしてもやりたい、と無理を言い、警備に入れてもらったのだ。
―朝になったら、すぐに謝らなきゃ
稽古の疲れもあり、少し眠いが眠るわけにもいかない。
野草のいい匂いが夜風に運ばれてくる。呼吸が深くなり、リラックスする。一瞬、目を閉じる。わずかな違和感、少し、香り過ぎている。
暗闇から、ころん、と鈴がなるような涼しい金属音がする。
チユキがそちらを見た瞬間、手に収まるほどの球体が見えた。丸い陶器のような「何か」
鼻をつく、火薬の臭い―
「やばっ……!」
チユキは、とっさに柱の後ろへ跳ぼうとする―しかし、すさまじい光が全身を打つ。
ーあれはばくだ……
ドゴ、と鈍い炸裂音がし、建物が揺れる。
ぱらぱら、と何かが顔に降ってくる。チユキは、我に返り、周囲を見る。建物の一部は崩れ、天井から瓦礫が振ってきている。
とっさに腹を押えると、生暖かい感触。ふと、右耳から温く、ぬめった感触。水中のなかにいるような、音の濁った感触。
耳は削げ、腹はざっくりと切り裂かれていた。チユキの視界が白く濁っていく。
―暗殺者が本気を出し、ついにここまで来てしまった。
チユキは脱力し、かすかに呻き声を上げた。
「ソーニャ……にげて」
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