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ガクは、朝起きてすぐ、周囲を見渡す。ふと、異界に閉じ込められた時のことを思い出す。あの時は、部屋が永遠に進み、時間の概念もなかった。
闇がわずかに、光で薄れていく。そのわずかな光で、驚くほど、心が軽くなる。
周囲を見るが、ソーニャが毛布にくるまり、寝ているだけだ。
―チユキも、フェルグスもいない
ガクは、携帯食料を小さくちぎり、口にする。
―この状況が何日も続けば、水も食料も足りなくなる。
ソーニャが目をこすり、起きだす。
「おはよう……」
ガクは、無理に笑顔を作るが、すぐに元に戻ってしまう。
「ちゆき、さがしにいこ」
ソーニャの声に、ガクは心のなかを透かされたような気がした。
―チユキがいれば、なんとかしてくれる……
「そうだね……それに、昨日、気になったことがあったから、そこも調べたいし、もう少し、この街にいよう」
ガクは、身体をほぐし、廃墟を出る。
気になることとは、甘い匂いのことだ。ゲオルクと交戦した近く、植物性の甘い匂いが風に乗っていた。本当に、かすかな臭いだ。
―あれが皆を洗脳、もしくは凶暴化させているのか?
ガクは、植物の知覚を頼りに、匂いの元へ近づく。
それは、街外れにある、巨大な城から香っていた。廃墟と化していたが、他の建物よりも保存状態が良かった。
誰かが、ここを根城にしているのかもしれない。
ガクたちは、正門ではなく、裏門から城へ入り込む。
城に入ると、ガクは鼻を殴られたような衝撃を感じた。
「うぐっ……」
あまりにも甘い匂い。その匂いは、鼻の奥を刺激するほど強い。砂糖、バニラだろうか、甘ったるい匂い。祭日の屋台、子供向けのお菓子の強烈な臭いのような―
「がく、だいじょうぶ?」
ソーニャがかけより、背をさする。ガクは無理に笑おうとするが、こみ上げてくる物を抑えきれず、地面に吐き出す。
―植物の鋭敏な知覚が、匂いを倍加させているのか
ガクは、脂汗を拭き、立ち上がる。
植物操作を止めれば、敵の検知も難しくなる。止められない。
ガクは、重くなる足を必死に動かす。
甘い匂いは強くなり、目頭が強烈に痛み、頭痛がする。強烈な香水のようだ。




