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 北條ミツキが生み出す見えざる手は、触れた対象の身体的情報を改変することが出来る。

 エレンの懇願もとい脅迫を受けたミツキは、その能力を使ってマヤの過負荷(オーバーヒート)を鎮めようとしていた。

 

「――言っておくけど、僕にできるのは頭痛を緩和させることだけからね」


「ええ、それで十分よ」


 激しい頭痛がする中、エレンとミツキの会話が聞こえた。

 そして、冷たい手が額に触れるのを感じると、先程までの頭痛が嘘のように消失した。


「……あれ? 治った?」目をぱちくりとさせてマヤが言う。


 そんなマヤを見て、「マヤさん!」とエレンが声を上げる。


「大丈夫ですか?」


「ああ、うん。何か、一瞬で治ったみたい。……すごいね、ミツキちゃん」


 マヤに褒められると、ミツキはまんざらでもないように、「まあね」と答える。


「でも、無理したらダメよ? 僕が治したのは、頭痛だけだから。体力は元に戻っていないんだから」


「りょっ! っていうか、マジで助かったよ、ミツキちゃん。ほんと死ぬかと思ったし」


「そりゃ、あんな出鱈目な能力の使い方をしたらそうなるよ」呆れたようにミツキが言う。


「だって、仕方ないじゃん。シュウ君の為なんだし」


「で、何か情報は得られたのか?」


 マヤが不満そうに口を尖らせていると、ソウが言った。


「あー、それが全然。何か、めっちゃガードが固くって……」


「そうか……」


 小さく頷いたソウの様子は、どこか上の空といった感じだった。


「ん? どしたん、諌山君? 何か、元気ないじゃん?」


「あ、いや……。俺が余計なこと言ったせいで大変なことになったから……」


「ああ、何だ、そのこと? いいよ、気にしないで。完全にうちの自業自得だし」


 別にソウから強制された訳でもあるまいし。

 マヤは笑ってそう答えたが、ソウはまだ難しい表情を浮かべている。

 意外と真面目なんだよね、この人……。


 多分、何を言っても、彼は責任を感じてしまうのだろう。

 さてどうしたものか? 


 現状、シュウジの居場所について情報ない。

 マヤ自身も、能力の過剰使用でまともに動けない状態だ。

 そのうえ、ソウも落ち込んでしまっている。


 ……ええ、何これ? 

 完全に骨折り損のくたびれ儲けって奴なんだけど。

 そんなことを考えていると、メイが口を開いた。


「あの、それで、この後のことなんですけど……。どうしますか?」


「どうって言ってもな。手掛かりがないんじゃ、地道に聞き込みをするくらいしかないだろ?」


 ソウの言う通り、現状でマヤたちに打てる手はなかった。

 それからソウたちは知人や街の人に聞き込みを始めた。

 ただ、マヤだけは体調不良を理由に外出を禁じられた。

 こんな時に何も出来ない自分が歯痒かった。

 そんなマヤの代わりにミツキがシュウジの捜索に駆り出された。


「……僕、敵だったはずだよね? 何で、いつの間にか駒の一つに数えられてるの?」


 当然、ミツキは不平不満を漏らしていた。

 だが、マヤがエレンをミツキのバディに指名すると途端に静かになった。

 扱いやすい子で助かる。

 とにかく今は時間がない。

 使えるものは何だって使わなくては……。

 

 その後、夜になるまでシュウジの捜索は続けられた。

 しかし、何一つとして情報は得られなかった。

 まったく、何一つ。

 街の誰一人として、シュウジの足跡を知る者は居なかった。 

 それは、あまりに不自然だった。


 まるで、この街からシュウジの存在が消えてしまったかのようだった。


 そして、何の備えも出来ないまま、翌日の夕方を迎えた。

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