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 シュウジのイレイザーズ化を回避する算段も付き、そのための準備も進めていた。

 それなのに、肝心のシュウジの居場所が分からない。

 まさか、Xデーの前日にシュウジが姿を消すとは誰も思わなかった。


 午前中、マヤからのその知らせを受けたエレンはすぐに斉木家へ向かった。その途中で、諌山兄妹にも連絡を取り、合流してくれるようにお願いした。


 そして、現在、エレンたちいつものメンバーとミツキがマヤの部屋に集まっていた。


「シュウジ君の友達には確認したのか?」全員が集まった所で、ソウがマヤに言った。


「そんなのとっくにしている! でもだめ。誰に連絡してもシュウちゃんがどこにいるのか分からないって……」マヤの返事には苛立ちの色が隠せず、だがそれ以上の焦燥が浮かんでいた。「どうして!? 前回のループじゃ、こんなことなかったのに!」


 マヤの言う通り、前回のループと同じなら、斉木姉弟は今日、一緒に映画を見に行っているはずだった。それが今朝になって、シュウジが突然姿を消した。


 母親には、「友達と遊びに行く。泊りになるから」とだけ、伝えてあったらしいが、詳しい行先については何も言わなかったとのことだった。


「ママも、どこに行くかくらい聞いておいてくれたらいいのに! うちの放任主義がこんなところで徒になるなんて……」


「でも、シュウジ君は、今日、マヤさんと映画に行く約束をしていたんですよね?」


「うん。昨日だって、何の映画を見に行くは話してたし」


「それなのにどうして突然?」


「そんなの分かんないよ!」


 弟のこととなると途端に冷静な判断が出来なくなるマヤにどうしたら良いか分からず、みんなが頭を悩ませていると、ソウが嘆息混じりに口を開いた。


「なあ? それだったら、斉木の能力で調べることが出来るんじゃないか?」


「……え?」ぽかんとした表情でマヤが言う。「どうやって?」


「いや、だから。斉木の能力なら、自分の記憶の中にある昨日のシュウジ君の記憶も探ることが出来るんじゃないか?」


「あ……」


「忘れてたのかよ。昨日、自分で自分の記憶を読んでいた癖に」


「……たしかに兄さんの言うとおり、その方法なら、弟さんがどうして今日いきなり姿を消したのか、理由が分かるかも」


 メイがそんな独り言を呟く間にマヤは勢いよく立ち上がると、部屋の隅にあった姿見の前に移動する。そして、そのまま何も言わずに鏡に映った自分を睨みつけた。


 いつもの流れなら、マヤは何らかの情報を得て戻ってくるはずだ。これまでの実績がそんな考えをエレンたちに抱かせた。だが、それが安易な思い込みだったと、すぐに知ることになった。


 四十秒、五十秒、……六十秒。

 マヤは鏡の前で自分の瞳を睨み続けた。

 そんなマヤをエレンはすぐ傍で見守っていた。


 マヤさんはすぐに無理をするから……。


 だが、今日は、いつもより少しだけ記憶を読み取るのに時間が掛かっていたが、鼻からも目からも血を流すようなことはなかった。


 だから、気付くのが遅れた。


 二分が経過した頃、突然、マヤがその場に崩れ落ちた。


「――ああっ!」


 ほんの一瞬、声を上げたマヤは頭を抱えると、尋常ではない痛がり方を見せた。


「お姉様っ!」


「何だ!? 何があった!?」


「分かりません!」


 声を出すことさえ辛いのか、マヤは、時折、掠れるような息を漏らしながら体をぎゅっと丸めていた。 ソウたちはすぐに救急車を手配しようとした。しかし、それより先に意外な人物がマヤに近寄った。


「ああ、やっちゃったね」


 そう言ったのは、野放しにしておくわけにもいかないので、仕方なくここまで連れてきたイレイザーズのミツキだった。


「お前、斉木のこの状態が何か分かるのか?」ソウが尋ねる。


「いや、こんなの考えるまでもないでしょ。能力の過剰使用。オーバーヒートだよ」


「どうにかする方法は?」


「んー、まあ、あるにはあるけど。ただって訳には……」


 情報の有無が立場を変える。

 自分の優位性を感じのか、ミツキが勿体ぶった態度を取る。

 おそらく何かしら自分に都合の良い条件を引き出そうとしているのだろう。

 そんな彼女の前にエレンが一歩踏み出す。


「やって」


「え?」


「やって」


「あ、い、いや……。で、でも、これって結構、僕にも負担が……」


「やって。お願い」


 三度目の懇願。

 ミツキを見下ろしながら。


「……ワカリマシタ」


 無機質な声でミツキが言った。

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