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 その倉庫の中は、前回のループで見たのとまったく同じように荷物が積まれていた。

 そこには身を隠す場所はいくらでもあった。

 だが、シュウジは、倉庫の入口から真っ直ぐ伸びる通路の中央に堂々と立っていた。


 エレンとマヤを見たシュウジは、「やっぱり二人ともやられたか」と苦笑を浮かべて言った。


「まあ、予想はしていたけど……」


「……本当に、シュウちゃんなの?」マヤが言った。


「そうだよ」シュウジが答える。「他に誰に見える?」


「本当に、イレイザーズになったの?」


「ああ、うん。まあ、そうだね。でも、安心してよ。ちゃんと以前の記憶も残ってるから」


 それを聞いて、マヤがほっとした胸を撫で下ろす。


「だったら、こっちに戻って来よ? シュウちゃん、知らないかもだけど、うちならイレイザーズになった人を元に戻すことも出来るし」


「いや、知ってるよ。二人とも、前回のループより、更に能力に磨きが掛かったみたいだね」


「え? 前回のループって? シュウちゃんもそのこと覚えているの?」


「そりゃあ、俺も一応はSVだからね」そう言って、シュウジがエレンに目を向ける。「その節はどうも。あのときは、おかげで助かりました」


 突然、謝意を受けたエレンはキョドりながら答える。


「あ、い、いえ。全然、そんな大したことじゃ……」


「ははっ。本当に面白い人っすね、エレンさんって。前の人格も良かったけど、俺は今の方が断然好みかな。小動物みたいで」


 その言葉に、エレンの前に立っていたマヤがゆっくりと顔をこちらに向ける。


「……ねえ、エレン? 何で? 何でシュウちゃんに気に入られているの?」


 そんなの、私に聞かれても困る。

 だから、瞬きもせずにこちらを見続けるのをやめていただきたい。

 何だか瞳孔も開いているし、本当に怖い。


「姉ちゃん、忘れたのかよ? 俺は前のループでエレンさんに命を救われているんだよ? 少しくらい、好意を持ったっておかしくないだろ?」


「あ、あーね。うん、まあ、そんなこともあったね……」


 地獄みたいな空気の中、エレンがおろおろしていると、ミツキが咳払いをする。


「ねえ、二人とも。僕たち、その人を捕まえに来たんだよね? 本来の目的、忘れてない?」


 それを聞いて、マヤが諭すような口調でミツキに言う。


「ミツキちゃん、今、シュウちゃんに悪い虫が付きそうになっているの。これって、シュウちゃんがイレイザーズになるのと同じくらい良くないことなんだよ? 分かるでしょ?」


 悪い虫って、聞くまでもなく私のことだろうな。

 エレンがそんなことを考えていると、ミツキが口を開く。


「いや、うん。分からないような、全然分からないような……。でもさ、結局、やることは一緒じゃない?」


「どういうこと?」


「だって、その人を捕まえてイレイザーズの記憶を消去すれば元(・)に(・)戻(・)る(・)んでしょ?」


 それを聞いて、マヤが何か気付いたように、「あっ!」と声を上げる。


「そうか、そうよね、その通り! 流石、ミツキちゃん! シュウちゃんを元に戻すってことは、必然的に前回のループのものを含めてイレイザーズの記憶を消去することになんだから。それなら、余計な記憶も一掃出来て、一石二鳥よね!」


 その発言にエレンがシュウジの方を見ると、何とも形容しがたい苦笑を浮かべていた。


「……うーん。やっぱり、俺の姉ちゃんやべえな」


 その点については、同意する。

 お気の毒としか言いようがない。

 だが、その会話をきっかけに、倉庫内の空気が一変した。


「ところでさ?」シュウジはそう言って、ミツキの方を指差す。「そこに居るあんたも、俺たちと同じイレイザーズだよね? 何で、そっち側にいるの?」 


「え? いや、まあ、それは、色々あって……」


「ふーん。要するに俺たちを裏切ったわけだ」


 シュウジが冷たい口調で呟く。

 その次の瞬間、シュウジがエレンたちの視界から消えた。


「おぼぇっ!」


 後ろから聞こえて来た声にエレンとマヤが振り向くと、ミツキが腹を抱えて蹲(うずくま)っていた。

 そのすぐ傍には、シュウジが立っており、転がるミツキを見下ろしていた。


 ……今、どうやって移動したの?


 銃弾でさえ目で追うことが出来るエレンが、今のシュウジの動きは全く見えなかった。

 驚愕するエレンたちを他所に、シュウジは蹲るミツキの前にしゃがみ込むと、その髪を掴んで自分と同じ目線の高さまで顔を上げさせる。


「ダメじゃん? 仲間を裏切ったら」淡々とした口調だが、そこには明確な殺意が宿っていた。


「シュウちゃん!」マヤが声を上げる。「やめて! 何でそんなことするの?」


「何でって、俺、イレイザーズだよ? つまり姉ちゃんたちの敵なんだ。で、コイツはその敵に寝返った裏切り者。制裁するのは当然だろ?」


「敵って、うちが? シュウちゃんの敵?」


「まあ、そうなるね」

 

 シュウジはそう答えると、ミツキの髪から手を離す。

 そして、また一瞬で元居た位置に移動した。


 どういう原理か分からないが、シュウジは一瞬で場所を移動出来るらしい。

 目で追えない速度で移動する敵を相手に、エレンは警戒を強くする。

 それを見て、シュウジが喝采を上げる。


「嬉しいよ。エレンさんは、ちゃんと俺を敵だと認識してくれているみたいで」シュウジはそう言うと、戦いの鐘を鳴らす。「じゃあ、始めようか」

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