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第十五話 模倣

 

 時は飛んで、王都を東に抜けた先の森へとやってきた。


 え?門番はどうしたのかって?

 そもそも会ってないというか、城壁を乗り越えてきた。

 普通なら犯罪なので、良い子は真似しないように!


 と、そんな笑えない冗談はさておいて、昼間に試した"アレ"がどれだけ使えるか試してみるか。


「しっかしなぁ…途中で頭吹っ飛んだからな…」


 実のところ、上手くいくかは五分五分だ。


 俺は地面に手を当て、土を剣に成形、補強し引き抜く。


「…他で試すか」


 出来上がった剣の出来は酷かった。

 剣身はガタガタ、剣の中線がズレまくって重心もおかしい。

 作り直すことにした。


「木刀っぽいのは…ギリだな」


 木刀らしきものも作ってみたのだが、反りが上手くいかなかった。

 しかし、剣よりはマシだろう。


 傍から見ればただの棒に見える土刀を試しに構えてみる。


「お?意外と…」


 自然と構えがしっくり来て、まるで自分の体の一部となったような気分になる。

 そういえば、と悠が模擬戦の時使っていた『禍津風(マガツカゼ)』とやらを試してみることにした。


 俺は悠の技の初動を思い出していると、


「『禍津風(マガツカゼ)』」


 自然と体が動き出し、まるで操られているような感覚を覚えながら技を繰り出した。

 それは、悠のモノとは比べ物にならないほど速く、鋭かった。

 そうだな、悠のが一撃間の間隔が0.2秒ほど。

 俺が使ったのが0.09秒くらいだ。


 おおよそ倍近く速いことになる。

 しかしまぁ、スペックの違いだろう。

 俺は魔族である故に、その保有魔力量に身体能力が比例する。


 それはつまり、戦闘が長期化すればそれに応じて段々弱くなってしまうということなのだが…

 実力が拮抗していないとそうなる可能性はほぼないに等しい。


 …っと、話がそれたな。


 とりあえず、その辺の魔物でも引っ掛けて実戦訓練と行きますか。



 *   *   *



「ギュァァァァア!」

「──ッ」


 ヒュンッ

 ──ズシャア!


 無策に突っ込んでくる魔物に一閃、ただの棒がその胴を薙いだにしては軽い音が鳴る。

 数瞬の後、魔物が二つに断たれ絶命した。


「わぉ…あいつのスキルも割とえげつねぇな…」


 ほぼ不完全な模倣、しかもただの棒でこの威力だ。

 悠がちゃんと鍛えれば、それこそ息をするように同じことができるだろう。

 いつか空間そのものまで斬っちゃったりして。


 …本当にやれそうだな、これ。



 *   *   *



 翌日、悠と顔を合わせるのはちょっと気まずかったので、シャルロットに話をする。


「私と模擬戦?アルミナがか?」

「そう。前に聞いたと思うけど、模倣した恩恵が対人でどれだけ使えるか試したくて」

「…やってることがもはや神を冒涜しているとしか思えんが、まぁいいだろう」


 シャルロットの意見ももっともだ。実際禁忌っぽいなとは思っていた。

 だからこそ失敗するかもと思っていたが、あっさり成功してしまった。

 いや、成功というのは語弊があるか。事故ったし。


 しかし、半分は成功だろう。事実、多少なり技術の模倣はできている訳だし。




 中庭に着くと、シャルロットはどこからか木剣を出してきた。


「あ、シャルロット。木剣じゃまずいかも」

「何故だ?」

「剣が持たない」

「…なるほど」


 俺がそう言うと素直に木剣を置き、自らの得物を持ってきた。

 もちろん、『真剣』である。


 対して俺は土刀、いや棒を作り出す。

 剣は未だ作れないのである。


 開始の合図用に金貨を取り出す。

 俺は、それを高く弾いた。


「切られても文句は言うなよ」

「もちろん。怪我するのは慣れてるから」


 キィン、と金貨が地面を跳ね、甲高い音が響くと同時に俺は駆け出した。


 ガンッッ!!


 地面にひび割れが起きるほどの力を推進力に変え、一気に距離を詰めて突きを放つ。

 読んでいたのかシャルロットは難なく躱し、反撃に逆袈裟で切りつけてくる。

 棒を素早く引き戻し、攻撃を防ぎつつ蹴りを放ち距離を取る。


 一拍、お互いに見合い、今度はシャルロットが仕掛けてきた。


「『陽炎(カゲロウ)』!」


 何の変哲もない一振り、少なくとも俺にはそう見えたが、嫌な予感がする。

 迎え撃つために剣を合わせた瞬間、その剣身がブレ、すり抜けるように襲ってきた。


 このタイミングで回避は不可能、為す術なく切り裂かれ…──なかった。


 剣が直撃した瞬間、その姿が霞を切ったかのように霧散し、掻き消える。

 これも技の一つ、『蜃気楼(シンキロウ)』だ。


 シャルロットは持ち前の経験から、俺が背後に移動したことを読み、咄嗟にしゃがみ込むと丁度首があったところを棒が横切った。


「はぁっ!」

「…っと」


 シャルロットの切り上げを宙返りで避け距離を取る。

 しかし、着地の瞬間を狙い追撃に来たシャルロットが視界に映る。


「『一閃万華(イッセンバンカ)』ぁ!」


 一度聞いた技名、地に足がついていないながらも、俺は口角が上がるのを隠せなかった。


 ─来る…!

 シャルロットはそれに気づきながらも、その勢いを衰えさせない。

 それどころか、より一層速度を上げた。


 ──残り、五メートル。


 まだ動かない。その時ではないからだ。


 ──残り、四メートル。


 まだ、もっとだ。


 ──残り、三メートル。


 もっと近くに…!


 ──残り、二メートル。


 俺の集中力が極限まで高まる。

 次第に世界が速度を失い、全てが緩慢な動きを見せる。


 嗚呼、これが『ゾーン』ってやつか、と思いながらも集中は切らさない。
















 ──残り、一メートル。














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