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第十三話 剣の扱い

 

 ───勇者宅にて、


「『剣を教えろ』…?」

「正確には違うけど結果的にはそうなるね」


 悠からいやお前魔法使いだろとでも言いたげな視線を受ける。


「ぶっちゃけるけど、剣を教えて欲しいならシャルが適任じゃないか?」


 …いつの間にか愛称呼びになっていることは気にしない方向で。


「そうじゃなくて、私がして欲しいのは実戦での動きのトレース?が近いのかな」

「…どゆこと?」

「簡単に言えば、悠の『神界剣術』の動作の模倣。実質スキルコピーに近いかな」

「…それ大丈夫なのか?」

「別にスキルそのものを自分に転写するとかそんなんじゃないよ」


 これは原理的な話になるが、これを端的に表せば『魔法を用いた学習AI』だ。

 つまり、魔法で作りだしたAIに悠の動き、思考などを学習させ、それを自分で再現することが出来る。


 だから俺はスキルコピーに近いものだと言ったのだ。

 しかしまぁ神界剣術そのものではないから、多少なり差異は出る。

 故に100%の再現は不可能だが、理論上99.9999…%の再現は可能だ。

 …そこまでやると寿命で死ぬほど時間かかるけど。


 それに、模擬戦の段階で悠の方が技術面で優れていることはわかっている。

 まぁ言っちゃ悪いが、普通の人間が十数年鍛錬した剣技より、何万年何億年と積み重ねられた神の剣技の方が上に決まっているじゃないか。


「だからお願い!」

「…はぁ、分かったよ」

「ぃよしっ!」


 言質は取った。そうと決まれば早速始めよう。



 *   *   *



 悠を中庭に連れ出し、何かしら適当に剣を振ってもらうことにした。


「適当に、ねぇ…」


 どうやらなかなか上手く出来ないらしい。

 仕方ない、こちらは頼んでいる立場だ。できる限りの助力はしよう。


「人形みたいなのでも出そうか?」

「うーん…まぁそれでいいや」


 俺は悠に発動している動作学習用の魔法と並行して、幻術魔法を発動させる。

 すると、悠の前に、白くのっぺりとした顔のないマネキンのような人形がでてきた。


「…なんか見た事ある気がする」

「気のせい気のせい」


 問題点としては、服飾店でよく見るマネキンにすごく似ているところだろうか。


 手始めに、軽く動かし適当に攻めさせる。


 スパンッ


 …一瞬で終わったんだが。


「…こんなんでいいの?」

「…いや、普通にダメだね」

「ダメかぁ…」

「データが取れなさすぎる。『神界剣術』の技全部と、敵の攻撃の対処、体術…それらを全部覚えさせてようやく使えるからなぁ…」


 そう言うと、悠はうんざりとした顔をする。

 いや分かるけども。


「なんかもっと手っ取り早いやつないの?」

「あるにはあるけど悠は無理」

「なんで?」

「長年使われてきた武器から記憶的なのを抜き出してっていうのならできるけど、ユウ持って無いじゃん」

「…聖剣じゃダメ?」

「試す?」


 結局ダメ元で試してみることになった。


 ホント魔法って便利だよね。

 魔力の法則さえ分かれば改良も創造も簡単にできる。

 それでも限界はあるが、大抵の事はできるのだ。


 魔法万歳。


 俺は悠の出した聖剣に魔法を試行しつつ、ふと思い出す。


「そうだ。そういえば、前に冒険者になるとか言ってなかったっけ」

「言ったけど…」

「なんかテキトーな討伐依頼受けてさ、その魔物と戦ったデータ取れば、こんな何の面白みもないこと続けるより断然いいんじゃない?」

「それもそうだな…」


 俺の提案に納得し、すんなり受け入れてくれた。


 さて、そろそろ結果が出る頃…


「あ」


 剣の記憶らしきものに触れた瞬間、初めて魔力に触れたときのような、しかしそれとはまた違う情報の波に呑まれ、大脳が耐え切れずに弾け飛んだ。



 *   *   *



「あ」


 パンッ!


「え」


 突然の破裂音とドチャッと水の上に何かが落ちる音が聞こえ、ふと剣から顔をあげると


【以下省略】


 すると、先ほどまで倒れていたアルミナがむくりと体を起こした。

 まるで何事もなかったかのように。


「びっくりした~…まさかいきなり頭が吹き飛ぶとは……あっ」


 やべっ、という顔でこちらへ視線を向けた。

 その視線の先に広がるのは、涙と吐瀉物でぐちゃにぐちゃになった俺の顔と、アルミナ自身の【自主規制】だった。


 その惨状にアルミナも、酷く申し訳なさそうに目を逸らした。


「うん…色々、ごめんね」


 アルミナは魔法でここら一帯を綺麗にした後、未だにあの光景が頭から離れない俺を連れて部屋へと戻った。


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