第十一話 裏切り
エイプリルフールネタも考えたんですが、繋げるのが面倒くさくて結局省いちゃいました(´・∀・`)ハハハ…
前回いつもの数倍の量書いたのになぁ…
王都へと帰還した俺達は、まず体を休めるよう言い渡された。
翌日に、王様と謁見することになっている。
しかし俺は大人しく休んでいられず、悠が寝かされている部屋を訪れた。
静かな寝息を立てる悠の近くに、椅子を持ってきて座る。
「呑気なもんだなぁ…さっきまで死んでたってのに」
正直な話、このまま目を覚まさないんじゃないかとか、もし記憶とかが無くなってたらとかそういう不安もある。
だが、今はただ帰ってきてくれたことが何より嬉しかった。
「なぁ悠、俺はどうしたらいい?アイツの言う通り魔王になって、この戦争を終わらせるのか、それとも、役目も何もかも投げ出してひっそり生きるのか…」
今の俺は魔族だ。どんな功労者だろうと、民衆の意識が変わるわけではない。確実に反発を食らうだろう。
最悪、魔族と人間の両勢力を敵に回すことになりかねない。
魔族だと露見すればこうなることは分かっていたはずなのに、あえてそれを利用した。
「…俺も人の事言えねーなぁ」
考えなしの刹那快楽主義者、今の俺を表すにはぴったりだ。
「ふぁ…あ」
しばらく考え事をしていたら、段々と睡魔が襲ってきた。
この際、睡眠だけでも取っておこうか。
俺は眠気に身を任せ、意識を手放した。
* * *
side 悠
気が付けば、少しだけ見覚えのある天井を見つめていた。
「ここは…」
周囲を見渡すと、アルミナが壁に寄りかかりながら静かに寝息を立てているのが目に入った。
「すぅ……すぅ……」
「もしかして、看ててくれてたのかな」
そういえば、俺はなぜここに居るのだろう。
気を失う前の記憶では、俺は魔王と戦っていたはず…
…いや、思い出した。最後に魔王から攻撃を受け、治癒が不可能な呪いを受けたのだ。
あの後魔王はどうなったのか、自分の身に何が起きたのか、聞きたいことは沢山あるが、アルミナを無理に起こすわけにもいかない。
自分ももうひと眠りくらいしてしまおうかと思ったとき、丁度アルミナが目を覚ました。
「…あ、目が覚めた?」
「…ん」
目をゴシゴシと擦りながら寝ぼけ眼でこちらを見つめる。
「…起きたのか…」
「なんか、アルミナが男口調なのって意外だな」
「え…?あ、そっか…」
彼女は顔をぱちぱちと叩いて、普段通りの口調で話し始める。
「よし…気分はどう?」
「今のところなんとも。もう死んだと思ったけどね」
「…実際死んでたんだよ」
「えっ」
「魔王を倒した後、ユウの遺体を持って帰る途中に息を吹き返したの」
「ウソ…だろ?エリーゼが蘇生したとかじゃなく…?」
「蘇生魔法が使えるようになるまで魔力が回復する頃には、既に蘇生不可能になるまで時間が経っていたから、断念したんだよ…」
そんなことがあるのだろうか。
エリーゼが使える蘇生魔法によるものではなく、自力で蘇生しただって?
「恐らくだけど、前にユウのスキルに文字化けしてたものがあったでしょう?それなんじゃないかって」
「アレか…」
初日に鑑定不可と言われた文字化けスキル。
確かに、それ以外に原因が見つからない。
「明日には王様との謁見もあるし、しばらく後にでも確認してもらうといいよ」
「分かった、そうする」
そう言って彼女は立ち上がり、部屋を出て行った。
………
死んでた、か。
アルミナが言う通り、俺は一度死んだのだろう。
あの死がすぐそこまで近づいてくる感覚が、未だに忘れられない。
───怖い。
死とはこんなに怖いものだったのか。
ふと、響谷の死が頭をよぎった。
アイツも、こんな気持ちだったのだろうか。
その日は、あまり気持ちよく寝れなかった。
* * *
翌日、アルミナの言っていた通り王様との謁見が行われた。
「皆、よくぞ帰ってきてくれた。早速だが、結果を聞かせてくれ」
ここは、代表である俺が答えるべきなのだろうが、俺は結果をよく知らない。
どうしたものかと考えていると、アルミナが声を上げた。
「陛下、そのことでお話が」
「なんだ?」
「我々は、魔王に条約を結びたいとお互いの和平を持ちかけた結果、拒否され戦闘になりました。しかし、ある条件を提示されたのです」
「条件?申してみよ」
「それは…『自分を倒し、お前が魔王になれ』と…」
「…なんだと?」
確かに、魔王はそう言った。
魔族であるアルミナなら、新たな魔王となれる。
…まさか、今ここで言うつもりか!?
「魔王は魔族でなければ継ぐことはできないと記憶しているが、どういうことだ?」
「こういうことでございます」
止めなければ。そう思うには遅すぎた。
アルミナを覆っていた何かが消え、魔力が魔王のものとよく似た純粋な魔力へと変質する。
また、その外見も魔族のものへと変貌した。
「其方…魔族だったのか」
「はい」
その瞬間王様は目の色を変え、見定めるようにアルミナを凝視する。
「ご存じの通り、魔族は実力社会。私が魔王になり条約を結べば、多くの魔族は従うでしょう」
「しかし、どうやって其方が魔王だと示すつもりだ?魔王が倒されたことは既に知れているだろうが、それが誰の仕業かは分からないのであろう?」
「『魔王紋』、というものがございます」
『魔王紋』…聞いたことは無い。しかし、あるというからには実際に存在するのだろう。
「既に魔王本人から、魔王紋を継承する術は聞き出しています」
「ふむ……一つ聞かせてほしい」
「なんなりと」
「何故其方は人間側に付いたのだ。我々と同じ知性を持つ存在であれば、同じ種族に付くのは道理。同胞を敵に回してまでこの手法を取った動機はなんだ?」
王様は問う。──何故魔族を裏切ったのか、と。
言われてみれば、戦争を終わらせるために人間に付かなければならない訳では無い。
魔族としてこの戦争を終わらせる方法もあったはずだ。
だが、あえてそれをしなかった。
魔王を下し、魔族全てを従えられる力を持ちながら、どうして人間と手を組む道を選んだのか。
アルミナは「勇者への復讐心」が、「戦争そのものへの怨恨」へ転換したと言った。
よくよく考えれば、都合が良すぎる。
勇者に復讐したいと思っていたなら、次の矛先は人間に向かうものじゃないのか?
復讐なんて、あくまで利己的な代物でしかない。
自分自身を否定してまで出来ることではないのだ。
「話してもらおうか?」
「…分かりました、お話し致します。ですが、陛下であっても全てをお話しすることは出来ません」
「…ほう?何故だ」
「恐れながら申し上げると…陛下が知るべきでは無いからでございます」
今までの雰囲気から一変、緊張感が辺りを支配する。
俺もエリーゼもシャルロットも、この空気を前に口出しすることが出来ないでいた。
「其方…その言葉の意味、分かって言っておろうな?」
「勿論です」
「人間まで敵に回すつもりか?」
「必要とあらば」
キッパリとそう言いきったアルミナ。
王様は更にその目を剣呑とさせ……ふ、と笑みを漏らした。
「良かろう。そこまで話したくないのであれば無理に詮索はせん。話せるところまでで良い」
「…感謝致します」
アルミナも安堵したように息を吐く。
そして、彼女はゆっくりと話し始めた。




