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3

そう、あれは夢じゃなかった。


あたしは、シャナという異世界に、サイカ王国のリクの花嫁として召還され、そしてそこで一年ほど過ごしたのだ。


でも、あたしは年をとったかどうかも分からない。


だって、帰ってきた日本では、日付が次の日に変わっただけだったから。


「金の一族たる市ノ瀬サクラが望むはシャナの世界!金の堕天使でも構わない、もう一度あの世界へ!!」


あたしは一気に、言い終える。


サァァァと、桜が散っていく。


そこに、桜の花弁で象られたレンがいた。


「レン」


「やっぱり。こうなることを、選ぶと思っていた。元のシャナの、あの世界に戻る選択肢を、君は選ぶんだね。辛いよ。きっと、この世界にいたほうが良かったと思うかもしれない」


「それでも構わないわ。中途半端で終わりたくないの!」


「そう。さぁ、いっておいで。再び、シャナの世界へ。僕は、この世界に残された最後のレンの残留思念。さようなら……」


さぁぁぁと、散っていくレンに手を振って、あたしは開け放たれた扉をくぐった。


真っ白なロードをまたひたすら走り続ける。


そこはシャナの夢の中。


たくさんの少年少女が眠る場所。


「こないで、いや!」


あたしを、その墓場に埋めようと、シャナの世界で無念のまま死んでいった魂たちが、塊になって、黒い霧になって追ってくる。


あたしはそれから必死で逃れるために、がむしゃらに走った。


「あなたも、ここで眠りなさい」


「そうだよ。レンもここで眠っているよ。一緒に眠ろうよ」


「嫌よ!それに、レンはこんな場所にいない。サレイとあたしの心の中にいるわ!」


黒い霧が、少し薄くなった。


「どうして、どうして、どうして!」


醜悪な、金色の化け物になっていく。


霧が集まって。


あれが、例え、あたしの最後の姿だとしても。


あたしは選んだ。


シャナへ、再びいくことを。




あたしは



あたしだけの王



王たるはサクラ



サクラは王



あたしは金の王



あたしは、金色の化け物を、金の堕天使の力で消滅させてから、また走った。


走ることに限界がきて、膝ががくがく笑っていた。


だから、黒い翼を羽ばたかせて、ただ真っ白な世界を、シャナに向けて。


翼で空を切り、あたしはとんだ。


何日飛行したのかもわからない。


時の流れが、少し元の世界と違うのだろう。


何日も飛び続けた。


不思議と、水も食料もいらなかった。


あたしは、ただ入り口に入った時から求め続けている、出口までを飛び続けた。


やっと、終わりが見えてきた。


そこに、黒い豹と白い豹を従わせた綺麗な少年が立っていた。


いつの日にか、リクが黒い獣、白い獣といっていた存在が、今なら分かる。金の堕天使として羽化した今なら。


黒き獣は金の天使を守り、白き獣は金の堕天使を守る。


それが、シャナの世界の法則。


「白き獣を連れていくかい?」


あたしは首を振った。横に。


「いらないわ。あたしは、あたしが王なのだから」


「王に、護衛は無用か。レンとはよき友であった。許してやって」


「あなたは、何を思い、シャナを生き続けるの?5千年も」


「さぁ、何をだろう。金の化け物になることもない。神といわれても嬉しくもないし。ただ、この狂った世界を、いつかシャナの夢を覚まさせてあげたい」


「そう。あたしはもう行くわ」


黒髪黒目の少年。金の天使の神。シャナの世界に君臨する、世界の調整者、バランスの執行者。


あたしは、振り返ることもなく、扉をくぐる。


彼は、もうあたしに干渉してこないだろう。


彼は、世界を見守る、ただそれだけの存在なのだから。


シャナの世界は夢を見ている。


夢を見ている限り、召還は続く。


いつか、あたしには無理だけど、その召還をなくすために、シャナを目覚めてさせてくれる人が現れるのを祈ろう。


あたしは、シャナの世界へ、足を踏み入れる。


懐かしい、澄んだ空気。空に浮かぶ月の隣には、地球が、エデンが浮かんでいた。


「ああ、やっと戻ってこれた!」


あたしは、金の堕天使の力を封印した。こんなもの、いらないもの。


あたしは、みんなに会いたい。


ただ、それだけ

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