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そう、あれは夢じゃなかった。
あたしは、シャナという異世界に、サイカ王国のリクの花嫁として召還され、そしてそこで一年ほど過ごしたのだ。
でも、あたしは年をとったかどうかも分からない。
だって、帰ってきた日本では、日付が次の日に変わっただけだったから。
「金の一族たる市ノ瀬サクラが望むはシャナの世界!金の堕天使でも構わない、もう一度あの世界へ!!」
あたしは一気に、言い終える。
サァァァと、桜が散っていく。
そこに、桜の花弁で象られたレンがいた。
「レン」
「やっぱり。こうなることを、選ぶと思っていた。元のシャナの、あの世界に戻る選択肢を、君は選ぶんだね。辛いよ。きっと、この世界にいたほうが良かったと思うかもしれない」
「それでも構わないわ。中途半端で終わりたくないの!」
「そう。さぁ、いっておいで。再び、シャナの世界へ。僕は、この世界に残された最後のレンの残留思念。さようなら……」
さぁぁぁと、散っていくレンに手を振って、あたしは開け放たれた扉をくぐった。
真っ白なロードをまたひたすら走り続ける。
そこはシャナの夢の中。
たくさんの少年少女が眠る場所。
「こないで、いや!」
あたしを、その墓場に埋めようと、シャナの世界で無念のまま死んでいった魂たちが、塊になって、黒い霧になって追ってくる。
あたしはそれから必死で逃れるために、がむしゃらに走った。
「あなたも、ここで眠りなさい」
「そうだよ。レンもここで眠っているよ。一緒に眠ろうよ」
「嫌よ!それに、レンはこんな場所にいない。サレイとあたしの心の中にいるわ!」
黒い霧が、少し薄くなった。
「どうして、どうして、どうして!」
醜悪な、金色の化け物になっていく。
霧が集まって。
あれが、例え、あたしの最後の姿だとしても。
あたしは選んだ。
シャナへ、再びいくことを。
あたしは
あたしだけの王
王たるはサクラ
サクラは王
あたしは金の王
あたしは、金色の化け物を、金の堕天使の力で消滅させてから、また走った。
走ることに限界がきて、膝ががくがく笑っていた。
だから、黒い翼を羽ばたかせて、ただ真っ白な世界を、シャナに向けて。
翼で空を切り、あたしはとんだ。
何日飛行したのかもわからない。
時の流れが、少し元の世界と違うのだろう。
何日も飛び続けた。
不思議と、水も食料もいらなかった。
あたしは、ただ入り口に入った時から求め続けている、出口までを飛び続けた。
やっと、終わりが見えてきた。
そこに、黒い豹と白い豹を従わせた綺麗な少年が立っていた。
いつの日にか、リクが黒い獣、白い獣といっていた存在が、今なら分かる。金の堕天使として羽化した今なら。
黒き獣は金の天使を守り、白き獣は金の堕天使を守る。
それが、シャナの世界の法則。
「白き獣を連れていくかい?」
あたしは首を振った。横に。
「いらないわ。あたしは、あたしが王なのだから」
「王に、護衛は無用か。レンとはよき友であった。許してやって」
「あなたは、何を思い、シャナを生き続けるの?5千年も」
「さぁ、何をだろう。金の化け物になることもない。神といわれても嬉しくもないし。ただ、この狂った世界を、いつかシャナの夢を覚まさせてあげたい」
「そう。あたしはもう行くわ」
黒髪黒目の少年。金の天使の神。シャナの世界に君臨する、世界の調整者、バランスの執行者。
あたしは、振り返ることもなく、扉をくぐる。
彼は、もうあたしに干渉してこないだろう。
彼は、世界を見守る、ただそれだけの存在なのだから。
シャナの世界は夢を見ている。
夢を見ている限り、召還は続く。
いつか、あたしには無理だけど、その召還をなくすために、シャナを目覚めてさせてくれる人が現れるのを祈ろう。
あたしは、シャナの世界へ、足を踏み入れる。
懐かしい、澄んだ空気。空に浮かぶ月の隣には、地球が、エデンが浮かんでいた。
「ああ、やっと戻ってこれた!」
あたしは、金の堕天使の力を封印した。こんなもの、いらないもの。
あたしは、みんなに会いたい。
ただ、それだけ




