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「お、市ノ瀬。もういいのか?」
「はい、ご心配おかけしました」
ざわつく教室。
あたしは、自分の席についた。その隣を見る。
ポツンと、そこだけ空席。
いや、休んでいるだろう他の空席もあるけどさ。
そこだけ、誰も―――いいえ。
サレイっていう転校生が来たんだった。そして、あたしの隣の席を貰ったんだった。
近くのあやかに聞いてみる。
「ねぇ、サレイはどうしたの?」
「サレイ?」
「転校生の金髪碧眼の美人さん」
「はぁ?そんな子いないよ」
「え」
あたしは、自分が夢を見ているような、そんな錯覚に陥る。
あやかが、あたしの隣の席を見る。
「その隣の席、ずーっと空席だしー。あ、もうすぐテストなんだよね!ノート見せてね」
「はいはい」
あたしは、授業を続ける先生の問題と答えをノートに筆記して、そして数学の時間はチャイムと共に終わった。
「だるいよねー。あーお腹すいた」
あたしとあやかは、購買部でパンを購入して、それをもって屋上にやってきた。
この高校の桜は遅咲きで、まだ綺麗に咲いて散っていく様子を見ることができた。
あたしは、焼きソパパンをもぎょぎょと口にしてから、隣のあやかに、自分がしていたネックレスを見せてやった。
「ちょっと。どんな高級なの買ったのさ。このアメジストのはプラチナの鎖が太いし、サファイアなんてスターライトサファアじゃないの!何十万もするよ!」
「ぶげっ」
鼻にドリンクが入って、あたしはむせた。
「ちょ、どうせ偽者でしょ?」
「本物じゃん、これ。プラチナも石も本物だよ。伊達に、宝石店の娘やってないっての!」
「まじなの……」
「つけるのはいいけど、体育の時外したりしちゃだめだよ。絶対に盗まれるから!」
「うん」
あたしは、2つのペンダントをぎゅっと握り締めて、そして首にかけた。
どうしてこんなペンダントを、つけているのだろうか。
誰かに買ってもらったわけでもない。
朝起きると、つけていた。
まさか幽霊から…。
こんな豪勢なことしてる幽霊がいたら、なめなめしてべろーんってしてあげるわ!
あたしは猫か!
(忘れてはいけないよ。君は、君だけの王。そして負の感情を抱きすぎてはいけないよ)
耳に届いたその声。
あたしは立ち上がって、残っていたパンを全部あやかに押し付けて、走り出した。
校庭にある、一本の大きな桜の木に向かって、全速力で走り続けた。
目の前で見上げたら、その迫力に言葉をなくす。
(さくら。さようなら)
桜の幹に座っていた青年は、あたしに手を振って、ざっと消えてしまった。
まって、まって。
あなたは誰なの!
教えて!
あなたの名前を!
ザァァァアと、散っていく桜。
市ノ瀬さくら。
それがあたしの名前。
もちろん、名前の由来は桜からきている。
さくら。
桜。
「サクラ!!!」
たくさんの、あたしを呼ぶ声に、あたしはまた痛み出した頭を抱えて、桜の大木の下で蹲る。
酷い痛みだ。
あたしは、ペンダントの石を手でぎゅっと握った。
光が、弾けた。
金色の光。
あたしはびっくりした。
そのまま、校内に戻って、トイレに駆け込む。
「嘘でしょ」




