日常と帰還
「ふあーあ」
あたしは、目を開けた。
長いこと、ずっと眠っていた、そんな感覚。
何か、その間に冒険をしていたような。そんな気がするけど、気のせいだっつーの。
カレンダーは、昨日から日付を1日かえただけ。
「こらぁ、置きなさい、桜!」
「はぁい」
あたしは眠い目を擦って、ベッドから出ると、セーラー服に着替えて、台所に下りる。
それから、洗面所で髪を梳かして顔を洗って。
桜色に光るルビーの、一万円したピアスを煌かせて、あたしは朝食を食べると、妹のすみれがトイレにこもり始めた。
「うおおおお!篭って漫画読むのやめろやあ!」
「あら、そんなの私の勝手だわ」
その言葉に、あれ?って思った。
なんか、この口調どこかで聞いたことがあるような。ずっとずっと、身近で。すみれじゃない、もっと幼い女の子が。
あたしは頭を振って、思考を整理すると、すみれが出てきたトイレに篭る。
ああ、朝からトイレに篭る青春。
「うおおお、紙がねぇ!」
またか。
これで、あたしの一日は始まるのだから。
あたしは、普通に登校した。
「おっはよ」
途中で親友のあやかと合流して、そのまま門をくぐる。
今日は生活指導の雪原はいないみたいで、茶色というかさらに金髪になってしまったあやかの髪を見ていた。
ドグン、ドクン。
あたしの中で、心が悲鳴をあげるように、鼓動を打っている。
いつもの美人で綺麗なあやか。
でも、そのせいじゃない。
金髪という、その髪の色をもっと身近で接していた人がもっていた気がして。
あーあ、なんなんだろう。
ゲームのしすぎか、アニメの見すぎだろうか?
「最近、さくら綺麗になってきたね」
「そう?」
「化粧はしてないけどさー。ピアスに続いて高そうなネックレス2つもしてるし!」
そう。
あたしは、着替えるときに気づいたんだ。
プラチナの鎖の、サファイアとアメジストのペンダントをしていることに。
何だろうと思いつつも、そのまま首にぶら下げたまま登校してきてしまったのだ。
こんな高価そうなもの、いつ買ったんだろう?
というか、いつ身に着けたんだろう?
「っつ」
「大丈夫?」
脳裏に浮かんだ金髪に紫の髪の青年の姿を追おうとして、あたしは凄い頭痛に苛まれて。
結局朝は保健室で眠る羽目になった。
それくらい酷い頭痛で。
薬を飲んでも、治らなかった。
「いい加減、授業出なきゃ」
もう4時間目が始まっている。あたしの嫌いな数学だけど仕方ない。
あんまりサボると、出席日数やばいし。
何気に、あやかと一緒に学校をさぼって、ロッカーに預けた私服に着替えて町を午前中からうろつくことだってある。
まぁ、頻繁ではないけどさ。
数学はあたし、苦手なだけに、出席とか課題の提出でカバーしないと、ほとんどオール5の成績に3がつきそうだ。
あたしは、桜散る校舎を歩く。
こんな風に、綺麗に散っていく桜を見るのはなんだか悲しい。
さくらという名前の、自分が散っているようで。




