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「愛しているよ」


やっと、サレイに言うことのできた言葉。シアルーを見ているような気分になってくる。


ドレスなんて着せるんじゃなかった。


サクラという同胞の少女は、しっかりしていて、サレイを支えてくれるだろう。


これからも。


サレイのことをよろしく。


僕は、もう、疲れたよ。


ねぇ、シアルー。


そろそろ、僕も眠ってもいいかな?


君の声が聞きたい。


君に愛しているといいたい。


君に愛しているといってもらいたい。


シアルー。



僕は、疲れたんだ。


ゆっくりと。


レンは、真っ赤な髪と真っ赤な瞳を、金色に染めて、あたしとサレイを見る。


そして、金の堕天使だという証である、黒い翼を羽ばたかせて、サレイの前にくると、その華奢な身体を抱きしめた。


「愛しているよ、サレイ。僕とシアルーの子」


「父様?」


サレイは戸惑っている。


この話は、全て真実なのだろうか。


でも、レンは嘘をいうような人じゃないし、そんな嘘をいって何になるというの。


「証を、見せよう」


サァァァと、桜が散るように、レンの金色が解けていく。そこにあったのは、赤い髪と赤い瞳。


それも解けていく。


黒い髪と、黒い瞳を持った、美しいレンがいた。

どこか、少しだけサレイに似ている。


父親、だからだろうか?


「ほら、君も」


レンが手を伸ばすと、サレイの金髪碧眼はさらさらと崩れて、黒髪に黒目をもった、美しいサレイの姿が晒された。


「僕達は、親子なんだ。僕は、金の堕天使になったせいで、死ぬこともなく年をこれ以上とることもなく生きているけど。もう疲れたよ」


「レン――」


あたしは、言葉に詰まった。


「知っているかな。元の世界に戻るには、同じ金の一族を、同胞を殺すしかないんだよ」


「え……」


あたしは固まった。


サラサラと、頭上で桜が散っていく。夜桜が。


「サレイには、黒より金と蒼が似合うね」


「レン、レン!」


サレイは、レンに縋り付いて離れない。


にこりと微笑んで、レンはサレイの髪と瞳の色を元に戻す。


「最後の証、だよ」


背中にある、焼印の後を見せて、そして首にかけていた、シアルーの肖像画の入ったロケットペンダントを、サレイの細い首にかけた。


サレイは不思議そうに、その中身を開けて、銀髪碧眼の母であり、少女の容姿の肖像画を見つめた。


「僕はね、君のことが好きだった、市ノ瀬桜」


「え?」


「僕達――金の一族は、同じ日本の、ここ20年以内に生まれた少年少女ばかりが、このシャナの世界に時空をこえて、未来や過去に飛ばされるんだ。僕は、召還されるまで普通の高校生だった」


「まさか」


「そう、同じ都立泡世高校出身だよ。君が先輩で、僕が後輩。僕は進学科クラス出身で、君に憧れていたよ」


「そんなの嘘よ!!」


あたしは叫んでいた。大声で。


「生活指導担当の雪原先生、しつこいよね。うざいっていうんだっけ、ああいうの」


ああ、思い出した。


雪原先生。


何かあるごとに、あたしのスカートが短いだの、あたしの髪が茶色いだの呼び止めてきたウッザイばばあ。


「嘘でしょ――」


あたしは、泣きながら、笑っていた。


だって、こんな喜劇。


笑うしか、できないよ。泣くことしか、できないよ。

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