偽りのメシア
僕は、メシアになれなかった。
金の堕天使となって、偽りのメシアとなった。
そう、僕は死ぬこともできずに今も、世界を彷徨っている。
知っているかな。
金の一族は、一度羽化すると、死ぬことができなくなる。
永遠の命を、手に入れるんだ。
それは、老いさえも止めて。
神になるんだ。
金の天使も、金の堕天使も。
シャナの世界の、神に。
それが、この世界の理なのだから――
僕は、レン・ファウ・ラザーとして亡霊のように生き続けた。
いつか、シアルーの生まれ変わりに出会える、そんなことを考えながら。
いつか、サレイに出会える。
このサイカ王国で生きていれば、いつかきっとまた出会える。
父とは名乗れないけれど、友人になれたらいいな。
そんな甘いことを夢見ていた。
サレイと出会った時、神であるはずなのに、何故わが子を守れなかったのだろうと泣いたよ。
神。
それは、不老不死にして、人が超越する力をもった存在。
それを、人は恐れ敬い神と呼ぶ。
僕は、きっと邪神だろうね。
だって、金の堕天使だもの。
「レン、レン!」
泣きついてくる、大人になったサレイ。
シアルーそっくりで、腹の奥から殺せ、殺せという声が聞こえてくる。
それを無視し続けた。
金の堕天使としての力を、なんとか封印して日々を過ごしていた。
それでも、負の感情に飲み込まれると、また金の堕天使としての姿を取り戻す。
それを隠して、サイカ王国を転々として生きてきた。
やっと出会えたサレイは、壊れていた。だから、もうどうにもならないその精神ネットワークを、僕は金の堕天使の力で癒し続けた。
金の堕天使は、癒すことだって、やろうと思えばできる。そうしないと、サレイは壊れたままで、もう元に戻ることもできないだろうから。
できるだけ、ゆっくり時間をかけて、元に戻るように促した。
僕は、この世界に生きていて、同胞がやってきたことを、生きているだけで知った。
その子が、金の堕天使に羽化するだろうことも。
金の一族は羽化しない場合があるというが、それは間違いだ。
どちらかに羽化して、その羽化と身体が同調せずに死ぬのだ。
金の一族は絶対に羽化する。
だから、エデンから召還され続ける。
僕が生きてきた500年の間に、二人の同胞が、金の天使に羽化しようとして、同調できず、自分の力に引き裂かれて死んでいった。
また、同胞がやってきた。
いっそのこと、このシャナの世界を壊してやろうか。
無責任に、地球から少年少女限定で召還し、そして好き買ってに人の運命を弄ぶこの世界を。
そう、何度思ったことだろうか。
この世界には、5千年前に金の天使に羽化して、隠れるように生きている少年がいることを知った。
僕はその子と何度か会って、お茶をした。
その子は、待っているんだ。
この世界をが変わることを。
その子は、本当の意味でこの世界の神といえるだろう。世界の調整者。
シャナの世界を夢見る、神。
僕はそんな神にはなれない。
だから、人として、偽りの人生を送り続ける。
いつか、サレイに出会い、愛しているのだと告げるまで。




