表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/69

2

そんな時、シアルー女王が妊娠していて、もう臨月だという話を、レンは耳にした。


何とか国王に頼み込み、レンはシアルー女王と対面した。


すでに、子は出産した後だった。


黒髪黒目で、明らかにレンとの間にできた子供だった。


「その子供をどうするんだ!」


「あら、決まっているわ。金の一族の子は、同じように羽化することがある。金をたくさんもった国に、高額で売りつけるのよ」


「母としての愛さえないというのかあ!」


「愛?わらわにもあったわ。でも、金より価値はないわ。こんな子供、わらわにとっても邪魔よ。殺そうか迷ってたけど、売れることが分かったから―――」


その瞬間、レンの身体は金色に輝いた。


金の髪、金の瞳、でも翼は黒かった。


金の堕天使になってしまったのだ。ラザー国王の思惑通り。シアルー女王に、お腹の中のレンの子は中絶せず産み、売るといいと吹聴したのもラザー国王だった。



憎い、憎い、憎い。


愛していると信じていた、この女がどうしようもない位に憎い。


殺したい。


殺したい。


八つ裂きにしたい。


そうレンが願った時、レンを包む金の光は、シアルー女王に向けて牙を放つ。


四肢さえも、胴体も分からないほど、金の光でズタズタにされていく、最愛の妻を、レンが冷たい瞳で見ていた。


ころころころ。


転がってきた、シアルー女王の、美しい頭部。


銀の髪に、蒼い目を見開き、血で唇も頬も染め上げて。



「ふふふ、手に入れた―――」


レンは半分狂っていた。


その背中には、ラザー王の持ち物に証である焼印が、黒々と痛く、白い肌を染めていた。


「シアルー。ずっと、一緒、だよ」


「どうして。愛していると、また言ってくれないのか。シアルー、シアルー」


「おぎゃあああああ!」


生まれて間もない赤ん坊の、泣き声。


シアルーとレンの間にできた、愛の結晶。


「シアルー。こんなにも愛しいのに、こんなにも憎い。シアルーの子供――」


シアルーの、まだ生暖かいその唇に唇を押し付ける。


血の味を、ペロリとレンは舐め取った。


シアルーの頭部を床に放り出して、レンは血まみれた姿で、その赤子を抱き上げた。


「名前もまだないのかな」


「おぎゃああああ」


シアルーの子。


そう思うだけで、黒い翼が散っていく。赤子の息の根を止めようと、醜い黒い光と金の光を織り交ぜて。


「だめだ。子供には、なんの罪もない、そうだろうレン」


それでも、シアルーの血を引いているのかと思うだけで、殺したくなる。


こんな細い首。


金の堕天使の力を使わずとも、レンが一捻りするだけで、息の根を止めるだろう。


「僕は不破レン。レン・ファウ・ラザー。ラザー王国の国王の持ち物になって、ラザーの名を与えられて。不破は、呼びにくいからとファウになってしまったよ」


赤子は、狂ったように泣き続けた。


「シアルー。愛していたのに」


つっと、レンの頬を暖かい涙が伝う。


「愛しているわ」


そう、少女時代に花が溢れんばかりの微笑を向けて、笑いかけてくれた少女は変わってしまった。


レンを道具扱いする、冷たい女王に。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ