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そんな時、シアルー女王が妊娠していて、もう臨月だという話を、レンは耳にした。
何とか国王に頼み込み、レンはシアルー女王と対面した。
すでに、子は出産した後だった。
黒髪黒目で、明らかにレンとの間にできた子供だった。
「その子供をどうするんだ!」
「あら、決まっているわ。金の一族の子は、同じように羽化することがある。金をたくさんもった国に、高額で売りつけるのよ」
「母としての愛さえないというのかあ!」
「愛?わらわにもあったわ。でも、金より価値はないわ。こんな子供、わらわにとっても邪魔よ。殺そうか迷ってたけど、売れることが分かったから―――」
その瞬間、レンの身体は金色に輝いた。
金の髪、金の瞳、でも翼は黒かった。
金の堕天使になってしまったのだ。ラザー国王の思惑通り。シアルー女王に、お腹の中のレンの子は中絶せず産み、売るといいと吹聴したのもラザー国王だった。
憎い、憎い、憎い。
愛していると信じていた、この女がどうしようもない位に憎い。
殺したい。
殺したい。
八つ裂きにしたい。
そうレンが願った時、レンを包む金の光は、シアルー女王に向けて牙を放つ。
四肢さえも、胴体も分からないほど、金の光でズタズタにされていく、最愛の妻を、レンが冷たい瞳で見ていた。
ころころころ。
転がってきた、シアルー女王の、美しい頭部。
銀の髪に、蒼い目を見開き、血で唇も頬も染め上げて。
「ふふふ、手に入れた―――」
レンは半分狂っていた。
その背中には、ラザー王の持ち物に証である焼印が、黒々と痛く、白い肌を染めていた。
「シアルー。ずっと、一緒、だよ」
「どうして。愛していると、また言ってくれないのか。シアルー、シアルー」
「おぎゃあああああ!」
生まれて間もない赤ん坊の、泣き声。
シアルーとレンの間にできた、愛の結晶。
「シアルー。こんなにも愛しいのに、こんなにも憎い。シアルーの子供――」
シアルーの、まだ生暖かいその唇に唇を押し付ける。
血の味を、ペロリとレンは舐め取った。
シアルーの頭部を床に放り出して、レンは血まみれた姿で、その赤子を抱き上げた。
「名前もまだないのかな」
「おぎゃああああ」
シアルーの子。
そう思うだけで、黒い翼が散っていく。赤子の息の根を止めようと、醜い黒い光と金の光を織り交ぜて。
「だめだ。子供には、なんの罪もない、そうだろうレン」
それでも、シアルーの血を引いているのかと思うだけで、殺したくなる。
こんな細い首。
金の堕天使の力を使わずとも、レンが一捻りするだけで、息の根を止めるだろう。
「僕は不破レン。レン・ファウ・ラザー。ラザー王国の国王の持ち物になって、ラザーの名を与えられて。不破は、呼びにくいからとファウになってしまったよ」
赤子は、狂ったように泣き続けた。
「シアルー。愛していたのに」
つっと、レンの頬を暖かい涙が伝う。
「愛しているわ」
そう、少女時代に花が溢れんばかりの微笑を向けて、笑いかけてくれた少女は変わってしまった。
レンを道具扱いする、冷たい女王に。




