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「サレイ、おいで」
「サレイ!?」
ふらふらと、パジャマ姿から中性的な衣服に着替えてやってきたサレイは、目の焦点があっていない。
桜の花弁に手を伸ばして、無垢な微笑みを向ける。
「これから話すことは、全て本当のお話」
「何を、話すというの!」
「僕の人生のお話さ。それを聞いて、君も決めるといい。自分の選択肢を」
あたしは、サレイを抱きしめて、そのまま、桜色の床に座った。
サァァァと、風が吹くたびに夜桜が花弁を散らす。
「それはそれは、遠い昔―――でも、まだ500年も経っていない、昔のお話――」
レンは、ゆっくりと、話し始めた。
サレイは正気に気づいたようで、レンに向かって手を伸ばす。
「レン、レン!会いにきてくれたの?」
「うん、そうだよ、サレイ。後で、いろいろ話そうね」
「うん」
遠い遠い、でも案外そう遠くはない、470年ほど前、サイカ王国に初めて、エデンからの使者、金の一族がやってきた。
当時はまだ13歳で幼く、同じサイカ王国の王女は15歳で、二人は出会ってすぐに恋に落ちた。
本当なら、許されるはずのない恋であったが、金の一族ならと王は許可を与え、彼らは婚約をして、金の一族の子が18の成人を迎えたとき、その王女と結婚した。
王女の名前は、シアルー・サイカ・フワ。
不破蓮という少年と結婚して、一番最後の名前が変わった。
金の一族の少年の名は、レンと呼ばれて皆、彼が金の天使に羽化することを願った。
二人は、特にレンは王族に迎えられて、華やかな生活を送っていた。
満ち足りて、幸せな毎日を。
そして、シアルー王女が26、金の一族の子であるレンが24の時、サイカ王国の王が病気で死去した。
王にはシアルーしか子はおらず、シアルーは王太子であった。
シアルーはすぐに女王として即位した。
元々、たくさんあった諸国を一つに纏めたばかりのサイカ王国はよく内乱が起きて、治安状態が悪かった。
シアルーの統治の代になり、それはとりかえしがつかないほどにまでなっていた。
そして、シアルー女王は、サイカ王国騎士団を設立し、たくさんの兵士を募り、国の内定に全力を注いだ。
そんな時、海を面したトゥージャ王国が、サイカ王国を侵略した。
ますます厳しくなっていく戦況の中、シアルー女王はことある毎に、夫であるレンに、役立たず、能無しと罵り、金の天使に羽化しない夫をバカにした。
それでも、愛されているのだと、レンは信じていた。
レンは、冷たくなっていくシアルー女王をずっと愛していたのだから。
そして、トゥージャ王国を追い払うのに、神の峰をこえた隣国のさらに隣にあるラザー王国が力をかしてくれた。
数万の兵を率いて、トゥージャの兵を蹴散らして。
ラザー王国の国王は、その恩賞に、あろうことか、シアルー女王の夫であるレンを望んだ。
シアルー女王は。
4千億リラを、代償として支払うというその言葉に。
歓喜すらして、レンをラザー王国に売ったのだ。
「こんな使えない金の一族など、いらぬ。これだけの金があれば軍事を強化できるし、わらわももっと贅沢ができる」
その時のシアルー女王の言葉を、レンは一生忘れないと言った。
ラザー王国の国王は、好色で、レンさえもその毒牙にかけた。レンは、華奢でそれなりに美しかった。
ラザー国王の目的は一つ。レンを金の堕天使化させ、奉りあげて邪魔者を殺させようとすること。
レンは拷問さえも受けた。毎日が地獄だった。




