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あたしの、サイカ王国での寵姫としての座はますます揺らがないものとなり、リクとの正式な結婚が強く民の間から望まれるようになった。
あたしの名を、近隣諸国にまで轟かせた事件から半年。
もう大分サイカは復興のめどがついている。元々他の国よりも魔法士をたくさん育成することに心がけていたせいもあってか、結界をはったことで死者は5千人ほどですんだ。
隣国からの避難民まで、サイカ王国は受け入れている。
その隣国はラザ王国とは反対に位置する、ムレア帝国。
未だに避難民たちに十分な物資がいきわたらず、餓死する者も日に日に多くなっている現状に、同盟を結んでいる各国は揃って物資や食料、水を提供したが、生命ラインともいうべき街道から橋が壊れたままで、なかなか帝都まで物資や食料、水を運ぶことができないでいる。
その中、ムレア帝国では治安の悪化からクーデターが起こり、今の皇帝から、宰相であった男に帝位が渡ったという。
ムレア帝国には、救援物資を送り、避難民だけを受け入れるだけで、リクは人を送ろうとしない。
「どうしてよ!」
「今は慎重にならざるを得ない。ムレア帝国ではクーデターまで起きたのだ。治安の悪さは酷すぎる。むざむざ自国の騎士や兵士を死なせるわけにはいかん」
「確かに、それはそうだけど」
「それに、ボランティアとして名乗りをあげてサイカ王国からも自分からムレア帝国に入り、復旧に力をかす団体もたくさんいる。兵や騎士団に命じる必要はないのだ。ムレア帝国とは過去に戦をしたことがある。こちらが騎士団や兵を救助に向けた時に、襲われないとも断言できないし、海を隔てたトゥージャ王国が虎視眈々と、いつもこの国を狙っている。同盟を結んでいるが」
「――……ごめん、なさい。どなったりして」
「構わない。それにトゥージャ王国とて津波の被害からまだ完全に立ち直ってはいまい。さて、民がお前を王妃に娶れと煩いのだが、この件はどうする?」
「無視する!あたしは自由な蝶~オーホホホ」
華麗に羽ばたいて去っていくあたしを、リクは溜息をついて見送るのだった。
「ぶ~~~~ん」
羽ばたくあたし。手をばっさばっさ。
でも台詞がこれじゃ、ハエじゃないか。まぁいいか。
あたしは後宮にそのまま駆け込んだ。サリーを筆頭とした寵姫たちと、リクは時間を共にするが、王妃として娶ろうとする動きはないし、夜の閨の相手を命じることもない。
一緒に夜を過ごしていたかと思うと、寝れないからと、一晩中チェスやら将棋を打っていたり。
リクってば、あたしのことなんて諦めて、さっさと寵姫の誰かと結婚しちゃえばいいのに。
って思ったりするけど、それも実は嫌なんだよなぁ。嫉妬深くはないけど、あたし、リクもそれなりに好きだから。
まぁ、実際誰か結婚相手が決まったら、涙と鼻水いっぱい流して、精一杯祝ってやろうではないか。
「ぶ~~ん。うお。ごりゅううって」
ハエの真似をしていたせいか。あたしは腹がメタァとなって、サリーの部屋に遊びにきていたんだけど、トイレにかけこんだ。
「ぬああああ、紙がねぇ!サリー、紙ちょうだい!」
「ごめんなさい、今はこれしか」
さっと、下から出されたのは鑢紙。
「おおおおおお」
とりあえず、紙に祈った。
ザリュ。
あ。
すげぇ。
「無理だ。はぁはぁ」
あたしは、ぽけっとから、10万リラという高額の紙幣を取り出して、それでふいた。
流れていくあたしのお小遣い。
あああああ!
うわあああああんん!!
今週の小遣いが!せっかく、お忍びで城下町にいって食い歩いて、劇場とかに入って芝居でも見ようと思ってたのに。
あたしは、とにかく食う量が凄いからさ。
お金もけっこうかかるんだわ。
気に入った服とかあったらそのまま買っちゃうし。
毎週10万リラを小遣いとしてもらっていて。十分なんだけど、足りないと感じてしまうことがあるのは、無駄遣いを覚えた悲しい性でねぇ。
「ココアで、よろしかったかしら?」
サリーは、いい子に見えてかなり腹黒い。さっきの鑢紙もわざとだろう。
トイレから出ると、そこにティッシュペーパーあったし!
「うん、ココアでいいよ」
そして、あたしはサリーと自分の分のコップをかえてそれを飲んだ。
サリーは蒼い顔をしている。
多分何かいれたんだろうなぁ。
そんなことでへこたれるあたしじゃない!堂々と遊びにまでくるよ!
すごいねあたし。
っていうか、そうしないと王宮までやってきて、あたしに嫌がらせするからさ。




