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「やだよ。私は、やだよ。エルニカだっけ。興味ないもの!私はサクラがいい!」
がしっと、後ろからあたしに抱きついてくる、頬を膨らませた幼いサレイの行動に、あたしは苦笑する。
「そなら俺も言わせてもらうわ。サクラがええ」
サレイに何故か後ろから抱きつくリンドウ。
あたしは子供をたくさん乗せたサルの母親か何かかいな!
ムキー!ムキムキムキ、ウホウホ。
やべぇ、違う境地にいってしまいそうだ。
「では私もサクラがいいと言いたいところだが。寵姫として本当は三人献上するつもりなのだろう」
「お察しの通りで。リンドウ様、サレイ様の婚約者にかなわぬ場合は、そのままリク王陛下の寵姫として献上すると、我がラザ国の陛下のお言葉にございまする」
「許そう」
「どうして!」
「サクラは黙っていなさい」
ぴしゃりと、冷たいリクの声。
そこに、リンドウが助け舟を出してくれる。
「一度、寵姫に献上された者はな。元の国に帰っても冷たい仕打ちしか待ってへん。
結婚もできへんやろうし。また違うどっかの国に寵姫として献上されるだけや。嫁いでくる場合の寵姫と訳が違うからな。献上するってことは、つまりは奴隷みたいなもんや………」
三人の、褐色の肌をした寵姫たちは、精一杯扇情的に、リンドウとサレイと婚約を結ぶことができなかったのだから、リクの関心を引こうとする。
あたしの目から、涙が気がつかないうちに零れた。
そんな世界、あるのは分かっていたけど、現実につきつけられると、この寵姫たちは、リクの愛を得られなければ、またどこかの国に奴隷のように献上されて、その王のや王族の愛を得ようと必死になるのだろう。
舞もきっと、そのために幼い頃から仕込まれたのかもしれない。
「サクラ寵姫――」
サリーが踊りながらあたしの目の前にやってくる。そして、ふわふわと舞に使っていた絹で、ゆっくりあたしの頬をぬぐっていく。
「――サクラ」
リンドウとサレイが、ケンカするのかと止めようとするが、それは本当に布が頬を掠めたような感触で痛くもなかった。涙を、大切な絹で拭ってくれたサリーは微笑んだ。
この子は聡いんだ。
そう思った。
リクの一番の寵姫であるあたしを、公然の場面でどう扱えばいいのか分かっているのだと。
「私たちは、自分たちが不幸だとは思いません。私は先代王の7番目の王子の12番目の娘でした。そんな遠い王族の血などないも同然。認知はされましたが、暮らしは貧乏で貧乏で。母と生きていくのでやっとでした」
「うん」
「同じように、シータもエルニカも没落貴族出身で、その生活は貧しいの一言につきました。そんな私たちを、ラザ王国の国王が救ってくれたのです」
「寵姫になって、良かったと思うの?」
「ええ。人並みの生活すらできなかった私達。その日の食べ物にすら困っていました。身を売るしかない――そんな時に、寵姫の話が舞い込んできて。まだ私たちは幼かったけれど、皆頷いてその話に乗りました」
「そう。あなたたちの意思であるのなら、あたしがどうこういう権利ないもの」
「ありがとう。涙を流してくれて。でも決して不幸ではありません。母や兄弟姉妹に楽な暮らしをできるようになりましたし、学校にも通えるようになった。文字の書き読みもできなかったあたしたちを、国王陛下は愛娘のように可愛がってくださりました。最高の教育を施してくださり、美味しいものも食べれたし着飾れたし、娯楽だってたくさんありました」
シャンシャンシャン。
また舞いだす三人。
「あたしたちは、恩返しをしなくてはいけません。そのために、寵姫として育てられてきたのですから。どの国のどこ方に献上されても、その方を愛し、その方に愛されるように、頑張るのが私たちの恩返しなのです」
あたしは、立ち上がって空を見上げた。




