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サレイは大分人に慣れてきて、楽士に混ざって自慢のハープを奏で、透明な声でアヴェ・マリアを歌いだした。
王宮に勤めている貴族たちも出席している。皆サレイの美しさを素直に賞賛し、その歌声に耳を澄ませる。
綺麗なボーイソプラノ。声変わりをしていないサレイは、平気で女性のソプラノまでの音から男性のテノールまで幅広い音域を出す。
魔法士じゃなかったら、きっとオペラの歌手か楽士でもしたいなんじゃないかなぁってくらいに上手い。
リンドウは、近衛騎士筆頭であるが、リクの友人として酒を交わしている。サレイはお酒は飲まないみたいで、渡されたのを地面に捨てて、グラスをもってきた貴族につき返している。
つき返された貴族は、ぽかんとした顔で。その顔には、好色そうな顔が最初浮かんでいた。サレイを酔わせてどうこうしようという魂胆が丸見えで。
サレイも分かっていたのか、酒を飲むことはなかった。昔はリンドウと一緒に城下町に抜け出して、週一回は飲み明かして酷い二日酔いを抱えて昼から出勤するのが当たり前だったそうだけど。
「リンドウ」
名を呼ぶと、リンドウはあたしの隣に座った。
あたしは、リリエルが楽士の音色に酔ったみたいに眠ってしまったので、リリエルに膝枕をしてあげながら、サレイの名を呼ぶ。
「サレイ。サレイはあなたたちみたいな下心がある人が嫌いなの」
サレイを取り囲む、貴族の子弟たちに冷たい声を浴びせてやった。貴族の子弟たちは、そそくさと逃げていく。
身分でいえば、リクの寵姫のままであるあたしのほうが上なんだ。
サレイは、侍女からもらったワインをグラスごと呷ってから、リンドウの隣に座った。
本当は、リクの名前も呼びたかったけど。でも、リクは貴族や重臣たちに囲まれ、世辞話をしていた。
ええい、かまうもんか。
「リク、こっちきちゃいなよ。どうせ、楽しくないんでしょ」
「参ったな。そなたにはかなわぬ」
席を立って、楽士たちを引き連れて、サレイの隣に座った。
なんか、これってあたしが逆ハーレムしてる気分。悪くはないけど、優越に浸るような馬鹿でもない。
シャンシャンシャン。
シャンシャンシャン。
優雅に廻る踊り子の、ナイスバディな肢体を見る。その顔は、サレイに匹敵するかしないかってくらいに美人。
まだ20代前半だろう。褐色の肌が艶かしくて。
あたしが男だったら、げっへっへって……いかん、彼女の踊りあたしのツボだ。
あたしは、ブバッと、緑の地面に鼻血を零して、リンドウから当たり前のようにスカーフを受け取って、それをふきとった。
その耳に信じられられない言葉が舞い込んでくる。
「こっちで踊っているのがサリー。向こうがシータ。で、一番手前のがエルニカ。サリーは、ラザ国の王族の血を引く姫君だ。シータもエルニカも貴族出身。サリーは私の寵姫に、シータとエルニカはリンドウとサレイの婚約者として」
あたしは一言。
「お断りします」
「だそうだ、ラザの使者よ。私はサクラを寵愛している故に。それにリンドウとサレイに婚約者としてなど、急すぎる。互いに話をつけていないではないか」
「しかし恐れながらに。このサイカ王国の執務をとりしきるのは、リンドウ様とサレイ様が筆頭。シータ様もエルニカ様も、結婚相手とて申し分のない美と知識、血筋を揃えていらっしゃいます」




