1
「おー、よく見えるやん」
リンドウも感嘆の声をあげた。
「あれが、恋人座。ほら、二人の人間が手を繋いでいるように見えるやろ?」
「ほんとだー」
手を繋ぎ合っているような星座を目にすると、目頭が熱くなってきた。
そうだ、あたしが好きなのは。愛しているのは。
「そのネックレスな、本当は俺とお揃いにしたかってん。でもな、サレイがああやろ。サレイの瞳と同じサファイア選んでん。ほんとはアメジストにしたかったんや」
アメジストのネックレスを渡されて、あたしはそれを首にかけた。
間近で聞こえる、リンドウの声。
あたしは目を瞑った。
唇が重なる。
「あ、あ」
服の中に手が入ってくるのを、遠くのように感じた。
でも、そこで終わり。
「拒否、せえへんの?」
「だって、あなたが好きだから。初めてあった時から、ぬるぎゅ!って腹にきました!」
「どんな口説き文句やねん」
リンドウはけらけらと笑った。
あたしも笑った。
「サクラ、リクの寵姫やもん。手出されへんわ」
「じゃあ、寵姫やめる!」
あたしは断言した。
「ほんまかいな?でもリクが怒るで?あれでもサクラに惚れとるさかいに」
「それでも。リクもこともサレイのことも好きだけど、でもリンドウが一番好きかもしれない。全員を手に入れようなんて思わないわ」
「サクラは欲のない子やな」
頭を撫でられた。
「歴代の王妃には、王という夫がいながら何人も愛人をもったような女もおってんで」
「あたしは、でもそんな器用なこときっとできない。誰かを傷つける。だから、選ぶなら一人だよ」
「そか」
新しい絆が、また生まれた気がした。
それは、リンドウとあたしだけの秘密。
秘密の、秘密。
あたしが、シャナの世界に来て半年近くが過ぎようとしていた。
リクの寵姫の座はそのまま。リクも好きだし、未だに一緒に眠るサレイも好きだし、リンドウも好きだ。
未だに、あたしは探している。あたしの愛の答えを。その人の側にいるたびに、ああこの人が好きなんだなって思う、この優柔不断が恨めしいわ。
「昼食を中庭でとろうと思うんだ」
リクが、リリエルを連れてそう誘ってきた。あたしは嬉しくて、すぐに返事をした。
「サレイもリンドウも、もちろん一緒だよね?」
「当たり前だ」
次の日、中庭で昼食を食べるという、ピクニックに行くみたいな気分で外に出たあたし。
でも唖然とした。
シャンシャンシャン。
踊る踊り子の見事な演舞と、それに合わせられる鈴の音。
ハープがポロロロンと、音を奏でる優雅さ。たくさんの楽士が音色を奏でる音。
侍女、近衛騎士まで引き連れての、宴だ、それは。
こんなの聞いてないよ。
少人数で、ささやかに楽しくやるんじゃなかったの?
ちょっと恨めしい目でリクを見ると、踊る踊り子をずっと見ていた。
シャンシャンシャン。
チリリリン。
ポロロロン。
いろんな音が混ざって。
でもちゃんと調和が取れていて。踊る踊り子はこれまた際どいすけすけの服を着て、流し目のような色っぽい視線を、リクに送り続けている。
そんなことで、ムカってくるほど、あたしは器の小さい人間ではない。
ムカアアアア。
ムカデ。違う違う。
あたしが怒っているのは、なんでこんな大きな宴にしたかってことで。




