愛と寵姫たち
そして、リクはというと、寵姫のサクラがサレイを寵愛しているという噂をどう消すか、考えあぐねていた。
サレイが受けたことを公言はできない。サレイの世話を任せたのはリク自身。
さて、どうするか――。
このまま、噂が燻るのを待つか、それとも王自らそれはないと断言するか。
ともあれ、崩れた絆が、少しずつではあるが戻ってきていた。
リンドウにサレイはなつき、友人として認識するまで回復してきている。
リクのことは未だに怖がるけれど。それでも、会話をするようになった。
リクは、サレイをサクラに預けて本当に良かったと思っている。
あたしは、本当に寝ている間すらも、サレイと一緒に過ごしてた。
リリエルやリンドウが混じることがあったけれど、できるだけサレイのことを考えて行動していた。
「サクラ」
「どうしたの、サレイ?」
「リンドウに、告白した、ほんと?」
「え」
その涙を舐めとるサレイの舌が熱い。いつかのリクにされたときのように、寝台に押し倒されたけど、あたしは抵抗もせず、サレイを抱きしめていた。
涙が、止まらない。
自分の答えが分からなくて。
「やめた」
「サレイ?」
「女の子泣かすのは、よくないと、リリエル言ってた」
あたしの黒髪を撫でて、サレイはいつもの中性的な衣服を整えると、あたしの部屋を後にする。
「だめ、いっちゃだめ」
「どうして?」
「リクが、あなたのことを頼むって」
「私は、お荷物?」
「違う、そうじゃないの!サレイのことも大好きなの!でも、愛しているかって聞かれると分からないの。時間をください。答えを出せる、時間を。恋愛感情で愛しているか、分からないの。友達、家族の愛では愛しているわ」
「うん」
サレイは、綺麗に微笑んだ。
あたしには勿体ないくらいの。
同じ寝台で、サレイと寝ているんだけど、サレイは無防備でほんとに子供みたいだ。
丸くなって、寝息も立てずに寝ている。
あたしは、喉が渇いて、水を飲もうと、テーブルに置いてあった水差しからコップに、水を注いだ。
闇夜に輝く紫紺に、あたしは声を失った。
「だ、誰!?」
扉を開けたまま寝ていたんだった。サレイが眠いっていうから、そのまま二人で。
「し。大きな声出さんといて」
廊下にいたのは、リンドウだった。
「サファイアのネックレス、ちゃんとつけてくれてるんや」
嬉しそうに、リンドウは紫に光瞳を煌かせた。
「なんで、夜なのに目が光ってるの?」
「ああ、これ?なんか俺の一族の特徴なんやて。暗闇でももの見えるで。はっきりとな」
「猫みたい」
「よっと」
あたしは、リンドウに抱き上げられていた。
「ちょ、何処行くの?」
「まぁ、ついてきてみいな。眠れんからこっそりきたんや。ついておいで」
あたしは、こくりと頷いた。
あ、やべぇ。
いい雰囲気になってきたけど。
「ちょ、何処行くねん!」
「うううううんんこ!」
久しぶりに腹がモギュルって鳴った。この感触懐かしい。
もうシャナの世界にきてから半年くらい経っただろか。サレイの事件があってから、すっかり治まっていたかと思っていたんだけど。
リンドウは大笑いしていた。
そして、あたしは女子用のトイレできばった。しかしなかなかでない、
これでは、夜明けになってしまう。
なんとかほかほかのを出して、紙を見るが。
お約束の如く、ティッシュペーパーはない。
「あああ、紙がねえええ!」
リンドウに、男子トイレのティッシュペーパーを届けてもらうという恥をかいた。
いらぬ恥をかいた、この腹のせいで。
そして、リンドウと手を繋いであたしは歩き出した。
やっべ、手洗ってねぇよ。まぁ気づかれないかな?気づかれたらおしまいだわ。
そこは、屋上だった。
満点の星空に、あたしは声を失う。
大きな月が、あたしたちを見上げていた。
それから、その隣にあたしの生まれ故郷の地球が蒼く輝いている。
「今日はな、節電の日やねん。だから、城も城下町も、灯火が少ないやろ」
「ほんとだ………」
屋上から見える城下町。いつもは、夜でも明かりがどこかしこで灯っているのに、今日は不気味なくらいに真っ暗。
そのせいで、星がよく見えた。
あたしの知らない星座を、リンドウがいろいろ教えてくれる。あたしは、声もなくそれを見上げ続ける。
「首がいてぇ」
「ははは、ほんま面白い子やなぁ」
あたしは、リンドウの手をひいて、屋上に寝転がってみた。




