6
「嫌!」
伸ばした手をはたかれて、あたしは呆然として、それからサレイの頬を、気づけばぶっていた。
「痛い――」
「お願い、サレイ。帰ろう、帰ろう……ぶってごめん、いくらでも詰っていいし殴っても蹴ってもいいから。帰ろうよお」
そこに、騎士団の到着を知らせる法螺貝の笛の音。
「サイカ王国最強の騎士団のお出まし、か」
レンは、サレイを横抱きにして、玄関の扉を開ける。
「ようこそ、リク陛下」
「レン殿――サレイと、サクラを返してもらいたい」
「どうぞ。麻薬を打たれていましたが、中和剤で中毒症状は取り除きました」
「それはありがたい」
リクの顔に、やっと血の気が巡る。
「さぁ、サレイ、怖かっただろう。王宮に帰ろう」
「誰、あなた?」
「え?」
「ちょお、サレイ?俺リンドウやで?俺のことまで覚えてへんの!?」
割り込んできた形になるリンドウを見ても、サレイは首を横に振った。
「どうして――何をされた」
怒りの色を帯びて、剣を抜刀するリク。それを、あたしが止めた。
「違うの、違うの!レンは助けてくれたの、あたしたちを、奴隷から解放してくれたの。サレイは……あたしが見つけた時、もう男たちに強姦された後で」
ごくりと、その場にいた皆の喉が鳴った。
信じられないと。
サイカ王国にこの魔法士ありと歌われた、あのサレイが。
「クスリを打たれて、逃げることも魔法を唱えることもできなくて。あたしのことも、忘れてしまったの。レンにはよく懐いて。でも、あたしの名前さえ呼んでくれなくなった」
金きり声を出して泣き始めたあたしを、リンドウが抱き上げた。
「サレイ。行くで」
「嫌。行かない。王宮には、悪魔が、いるもの。私を犯す、悪魔が」
「ライナスは、父上はもう死んだ!!」
サレイの服を掴んだリクに、サレイは首を振って、レンの胸に顔を埋めた。
「怖い。あなた、怖い。あの悪魔と、同じ色を、してる」
「しゃーないやろ。ここまで依存してるんやから。レン殿すまないが、しばらくサイカ王宮で、サレイが正気を取り戻すまで――」
「断る」




