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「嫌!」


伸ばした手をはたかれて、あたしは呆然として、それからサレイの頬を、気づけばぶっていた。


「痛い――」


「お願い、サレイ。帰ろう、帰ろう……ぶってごめん、いくらでも詰っていいし殴っても蹴ってもいいから。帰ろうよお」


そこに、騎士団の到着を知らせる法螺貝の笛の音。


「サイカ王国最強の騎士団のお出まし、か」


レンは、サレイを横抱きにして、玄関の扉を開ける。


「ようこそ、リク陛下」


「レン殿――サレイと、サクラを返してもらいたい」


「どうぞ。麻薬を打たれていましたが、中和剤で中毒症状は取り除きました」


「それはありがたい」


リクの顔に、やっと血の気が巡る。


「さぁ、サレイ、怖かっただろう。王宮に帰ろう」


「誰、あなた?」


「え?」


「ちょお、サレイ?俺リンドウやで?俺のことまで覚えてへんの!?」


割り込んできた形になるリンドウを見ても、サレイは首を横に振った。


「どうして――何をされた」


怒りの色を帯びて、剣を抜刀するリク。それを、あたしが止めた。


「違うの、違うの!レンは助けてくれたの、あたしたちを、奴隷から解放してくれたの。サレイは……あたしが見つけた時、もう男たちに強姦された後で」


ごくりと、その場にいた皆の喉が鳴った。


信じられないと。


サイカ王国にこの魔法士ありと歌われた、あのサレイが。


「クスリを打たれて、逃げることも魔法を唱えることもできなくて。あたしのことも、忘れてしまったの。レンにはよく懐いて。でも、あたしの名前さえ呼んでくれなくなった」


金きり声を出して泣き始めたあたしを、リンドウが抱き上げた。


「サレイ。行くで」


「嫌。行かない。王宮には、悪魔が、いるもの。私を犯す、悪魔が」


「ライナスは、父上はもう死んだ!!」


サレイの服を掴んだリクに、サレイは首を振って、レンの胸に顔を埋めた。


「怖い。あなた、怖い。あの悪魔と、同じ色を、してる」


「しゃーないやろ。ここまで依存してるんやから。レン殿すまないが、しばらくサイカ王宮で、サレイが正気を取り戻すまで――」


「断る」




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