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何日かそれから経った。
サレイの看病を続けるあたしに、レンは今日の分の点滴を、サレイに与える。
目を覚まさず、水分しか受け付けない以上、このままでは餓死してしまうからと、高い点滴をサレイにしてくれたのだ。
「どうしてと、思っているだろう?」
「そうね」
「これを見てごらん」
レンが、ロケットペンダントをあけると、中には銀色の髪に蒼い瞳の、サレイの微笑む顔があった。
「亡き妻に。そっくりなんだ、彼は。彼を、閨でどうこうしようというつもりはないよ。そんなに威嚇しなくてもね」
「う」
あたしは、いつも精一杯威嚇していて、レンがサレイに近づくだけでうなり声をあげていた。
「着せ替え人形のように、傍に置いておこうと思ったけれど、わけありのようだ。サレイは、サイカ王国が誇る魔法士の名前。サクラは、リク陛下の寵姫の名前。違うかい?」
全て、見透かされていた。
あたしは黙って頷いた。
「大方、攫われて奴隷として売られたんだろう。買ったのが僕でよかったね」
「うん。ほんとに、ありがとう」
あたしは、今までの張り詰めていた空気が和らいだ気がして、泣き崩れた。
うっすらと、やっとサレイが目をあけた。
目覚めてくれた!
これで、帰れる。大丈夫、事情をちゃんと話せば、レンは納得してくれる。
10億とサレイにかかった治療費くらい、リクは出してくれるはずだ。
大丈夫。
「―――誰?」
あたしは、その言葉に打ちのめされた。
あたしを見ての、サレイの第一声がそれだった。
「僕はレン。君の夫だよ」
「ちょっと、サレイに変なこと吹き込まないでよ!」
「いいじゃないか。どうせ、リク陛下に保護を求めるのだろう?僕が払った代金を返金して。それまでの間くらい、僕の好きにサレイを扱ってもいいだろう。酷いことはしないよ」
「私は――サレイ。あなたは、レン。あなたは?」
「あたしは、サクラだよ」
サレイの心が粉々になって崩れてしまったというのなら。また、一から築きなおせばいいじゃない。
だって、そうすることしかできないんだもの。
あたしは、無力だ。
涙がたくさん零れて、どうしようもないくらい、止まらなかった。
サレイ、サレイ、サレイ。
リクよりリンドウより、今はサレイのことしか頭になくて。
サレイのことがどんなに好きだったのか、サレイが壊れて知ったんだ、あたし。
「おかえり」
ふわふわの、ドレスを翻して、レンを出迎えるサレイは、本当に貴婦人のようで。プラチナでできた髪飾りの、エメラルドがよく似合っていた。
薔薇の花を背負ってさ。
「私のほうが美しいい!」
とか、そんなこと叫んでたサレイが、懐かしい。
こんなに無垢で、無邪気になってしまって。
どこか、幼いところはあるな、とは思ってたの。
でも、本当に壊れちゃったんだね、サレイ。
サレイは、自分がレンの妻であることを信じているようで。
夜になると、自分からパジャマを脱いで、愛を求めようとする彼の姿を見るのが辛かった。
「そんなこと、求めてないよ、サレイ」
「でも、ライナス陛下はこうしないと、私をぶって――」
「大丈夫、誰も君を傷つける者はいないから」
あたしと一緒に、レンは生まれたてのサレイを支えてくれた。




