奴隷市場
「サレイー!」
「サレイ!」
「サレイ!!」
「サーレーイーー!!」
みんなで、呼びまわるが、サレイの姿は何処にもない。
あたしたちは、ばらばらでサレイを探すことに決めた。
それが愚かだった。
まさか、あたしまで、捕まる羽目になるなんて。
もう、人気とかそんなこと気にしてる状況じゃない。サレイがもし、酷い目にあったらと思うと、血の気が引いていくのが分かった。
あの美貌だ。男からも、絶対に欲望の的にされる。しかも、サレイは色気と艶を持っていて、媚態めいた仕草を無意識のうちにする。あれは、女のあたしから見ても、そっちの意味で誘っているとしか見えない時がある。
ああ、サレイ!
あたしが、ちゃんと手を繋いでおけば!
ちゃんと隣にいれば!
あたしはフードがついたマントを脱ぎ捨てて、軽装になると、城下町をサレイの名を叫んで探し回った。
リクとリンドウとリリエルもだ。ただし、リリエルは万が一のことがあるので、リクがついている。
リリエルは幼いし、まだ7歳のしかも王太子の地位にいる少女。
そんなお姫様が、自分の身を守る手段なんて持っているはずがないし、懐剣さえリクはまだリリエルに与えていない。
危ないからと。
リンドウとリクは、それぞれ腕が立つ。
リクとて、伊達に王ではない。武を鍛えられて育ったはずだ。
剣を腰に帯剣してきていたし、あたしも短剣を腰に差している。
自分の身くらい、自分で守れるとあたしは思っていた。
そう、少しくらい絡まれたのあれば、あたしは足が速い。逃げ切ればいいのだ。
暗闇の中、あたしの黒髪と黒目は闇に同化してしまいそうで。
ぽっぽっと灯っていく、魔法士たちが街灯に点す明かりを受けて、あたしは明るくなっていく街灯とは反対の方向に走っていた。
リクとリリエルと落ち合い、二人は、サレイがもう王宮に帰っていないかどうかを確認するために、一度帰還すると告げてきた。これで、サレイを探すのはあたしとリンドウだけ。
「サレイ!」
「―――っ」
暗闇で、揉めるような音がして、あたしははっとなって様子を伺う。
「どうする?これ以上傷ものにしたら商品価値が下がるぜ?」
「でもこの顔、この体。犯してくださいっていってるようなものだろう」
「ぎゃはははは」
下劣な笑い声。
あたしは唇を噛んだ。出るべきか、出ないべきか。
でも、サレイでなくても、誰かが犯されそうになっているんだ。強姦のシーンを目の当たりにして、放ってなんておけるものか!
あたしは、腰に下げていた短剣を抜き放って、茂みから飛び出した。
「そこまでよ!」
「んだぁ?」
見ると、人数が多すぎた。10人はいるだろうか。
これはまずいと思ったが、もう遅い。
襲われている人をまずは、なんとか助けなければ!
あたしは、男達を掻き分けて、地面に倒れて泥だらけになった金の髪の女性を助けようとした。
つもりだった。
上半身の服をはだけられて、いくつもの痣を残し、頬をはたかされたのか、唇から血を流し、放心したように星が瞬く空を見上げている被害者は、あたしが捜し求めていたサレイだった。




