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「魔法士の長のシャムシール殿はいませんか」
あたしは、実行した。
魔法士の塔にやってきて、魔法士の長を呼び出す。好色そうな、脂ぎった老人だった。
あたしは、そのシャムシールに。
「サレイは、あなたのことを迷惑に思っているわ」
「そんなことはない。あれは私を好いておる」
「そんなこと、それこそないのよ!サレイに何かしてみなさい!あたしがリクに頼んで、あんたなんか処刑してやるんだから!」
「ひっ」
シャムシールは太った腹を抱えて、尻餅をつく。
あたしは、更につけ加える。
「サレイはあなたのような変態が大嫌いなの!」
「でも、あれの親は男娼と娼婦で」
「そんなこと関係ないわ!サレイはサレイよ!」
「寵姫殿は知らぬかもしれぬが、あれは色子となるべく両親から手解きを受けた天性の男娼だ」
「うっさいわね。まじで殺すわよ!」
あたしは、腰に差していた短剣を、シャムシールの首に当てた。
ちょうど、頚動脈あたりを。
シャムシールは今度こそ蒼くなって、無言で逃げ出したのだった。
シャナの世界にも四季はある。あたしがこの世界にやってきたのは、ちょうど夏。
3ヶ月経って、季節は移ろい秋になろうとしていた。
四季はあるといっても、この地方は夏でも涼しいので、あたしはいつもゴシックドレスを着ていたし、暑くてどうにもならないという日は珍しかった。
もっと南にいくと、年中夏のような気温ばかりの国もあるそうだ。
サイカ王国は、北方面に位置しているらしい。冬になるとけっこう雪が積もって、除雪作業などで騎士団は大忙しとなる。
「秋祭り、行こうかなぁ」
執務室から、休憩室にやってきて、あたしがいれたお茶を、香りを楽しみながら飲むリクは、窓から見える城下町を見下ろす。
「秋祭り!?」
あたしの胸が高鳴る。
なんだか、面白そうだ。
祭りなんだから、きっと派手でいろいろ店や屋台が出たりして。
花火もあがって、それで盆踊りを……って、それは日本の夏祭りやがな!
「リリエルを一度も城下町に連れて行ってやってないしな。サクラも王宮からたまには出たいだろう?」
あたしはこくこくと頷いた。
だってこの3ヶ月、ずっと王宮に籠りっぱなし。城下町に行きたいとリクに訴えても、今は騎士団が忙しいので護衛をつけれないからダメって言われた。
忙しい原因は、夏の周辺諸国の貴族王族を呼んでの、盛大な狩りのせいだった。
それも終わって、騎士団も大分落ち着いたらしい。リクも大きな仕事が、何事もなく終わってほっとしていた。
もしも、来賓中の者が、暗殺されるなどしたら、外交問題に発展しかねないから、警備は厳重を極めて、騎士団の半数が動員されたらしい。
あたしは狩りになんて興味ないし、弓も引けないし、小動物を殺すような真似はしたくないので、同行は拒否したし。
元々、女子供の出る場所ではないが、リリエルは王太子として立派に出席して、狐を射止めたそうだ。7歳にして、武の腕まで出し始めたリリエルに、10歳になればリクは本格的に、剣を教え込もうと考えている。
「行きたい、行きたい!」
あたしは飛び跳ねた。
秋祭りがどんなものであるかも分からないけど、とにかく行きたい。
「お忍びになるから、変装は必須だぞ。それでもいくか?」
「行く行く~~~!!」
「俺も行くで~!」
バタンと扉をあけて、リクの頭をはたいてから、リンドウは。
「護衛なら任せや。近衛騎士筆頭にして、王国騎士団長の俺の出番や~!」
「わーいわーい」
「リンドウ、リンドウ、私も行く!それからさっき飲んだの、あれ私が開発した育毛剤!」
ぱたたと走ってきたサレイは、息を切らしていた。サレイの部屋で、煙草を吸って一服していたリンドウは、サレイの前においてあるコーヒーを、勝手に飲んだ、つもりだった。
しかし、それはあろうことか、サレイが開発した育毛剤。
「へ?」
わさわさわさ~~~。
「いぎゃあああ!」
あたしは、悲鳴をあげて、リクを蹴り飛ばした。サレイにそんなことしたら、サレイの骨折れちゃいそうに華奢なんだもん。
わさわさわさと、部屋中に渦巻く金髪を、リクは剣で切り捨てた。
「ああ、それは切った者に感染というか、乗り移る育毛剤!」
どんな育毛剤開発しとんねんサレイ!
リンドウの金髪は大分軽くなって、ナイフをとりだして、肩甲骨あたりで彼は髪を器用に切りそろえたが、まだざんばら。
「サクラ、あとで髪ちゃんと揃えるから切るの手伝ってな」
「うん」
あたしは頷いた。
一方、リクは。
わさわさ。銀色の塊になっていた。
「しゃーない、俺が助けたるで、リク!」
ザシュ、シュバババ!
電光石火の神業。
リクの頭は……はげた。
「ぎゃははははは!!!」
サレイが、可憐になってきた最近では、あまり聞けなかった、弾けた笑い声を出して、笑い転げる。
「ぎひひひひうひょひょひょ!!」
床を叩いて、美しい顔を歪めて、これでもかというほどに豪快に笑い転げている。
「覚えていろよ、リンドウ!」
リクはまるで呪詛でもかけるようにリンドウを睨んでから、侍女に髪をなんとかしてもらうべく、休憩室から消えるのだった。




