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美しい音なのに、寂しくて悲しくて。


あたしは、泣いていた。


泣く事も忘れてしまったであろう、サレイの代わりに。


「何故、君が泣くんだい?」


「だって。そんなの酷すぎるよ。人の尊厳さえ踏みにじられて強姦され続けたんでしょ?」


「さぁ。それは知らない。覚えていないもの。でも、ライナス陛下は優しかったよ、多分。そうするように、私が変わったんだ。もともと、人と話すようなタイプではなかったし、もっと我の強い性格だった。媚を売って、酷いことしないでって、ねだったのだけは覚えてる」


「やっぱり、酷い」


あたしはポロポロ泣き続けた。

やべ、鼻水垂れてきた。


でも悲しいんだもの。


泣き続けてやるもん。


「私はね、愛が欲しかったんだ」


「愛?」


「そう。両親に愛されずに育ったから。半ば捨てられるように王宮に預けられた。両親からも虐待を受けていたよ。だから、きっと必死でライナス陛下に愛されるように愛されるようにして。少しだけ覚えてるなぁ。陛下の姿をみると、ぶたれるのが怖くていつも隅っこで震えて、自分から服を脱いでた」


白皙の美貌が曇って、それきりハープを弾くこともなく、ずっと地面を見つめていた。


あたしはサレイを抱きしめた。そして、その柔らかな金髪を指ですいて、耳元で囁いた。


「大変だったね。でも、もう大丈夫だから。ライナス陛下ってのはいなくなったんでしょう?リクもリンドウもあたしも、あなたを守るよ」


腕の中の細い肢体が、震えていた。


「バカ騒ぎして、それで楽しかったんだ。でも、夜がくるのが怖いんだ。消したはずの記憶を、夢で見るのが怖いんだ」


「じゃあ、あたしの部屋においで。一緒に寝よう?だったら、怖くないよ」


「本気で言ってるの?」


「本気だよ」


困ったような微笑を浮かべるサレイ。大分いつものサレイが戻ってきたようだ。


「ふははは、この美しい私を独り占めしようだと!?そんなこと、世界が許さんわ!」


いきなり立ち上がり、まだ涙を零してきょとんしているあたしに、指をつきつけて、もう片方の手は腰に当てている。


「ははは、どうだこの薔薇たち!私の美しさに霞んでしまうだろう!」


よく見ると、サレイは背中に前の時あったのと同じように花かごを背負って、薔薇を背負っていた。


文字通り、薔薇を背負ったサレイ。


確かに、サレイの美しさには薔薇の花も萎れてしまうだろうが。


「人が心配してやってんのに、何その態度!」


「はははは!しかし、私はちゃんと聞き届けたぞ!今日からサクラ、お前と寝てやろう。ありがたく拝みまくって、地面に頭をこすり付けるがよかろう!!」


「誰がそんなことするか!」


サレイは、でも急に黙ると、碧眼から涙を零して、居心地が悪くなったのか、ハープをもって走り去ってしまった。


あたしはその後を追おうとしたのだけど、何故かロープがあたしの前にはってあって、それに躓いて転げた。


「ふははは、サレイの華麗なる罠にかかったな!さらばだ!」


足音はどんどん遠く軽くなっていく。


サレイの言っていたことが、全部嘘のように思えたけど、あの悲しい音色も歌声も、涙も、きっと本当だと語りかけているのだろう。


あたしはリクやリンドウに聞くのは止めておこうと思った。


人の古傷に触りたくない。


サレイは、今前を向いて生きているんだから。

バカでも、さ。


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