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へーっと、関心した。
ほんとに賢母だ。
王妃なのに、自分の娘の世話を、下の世話まで全てこなしたのだろう。
病弱であったと聞いていたから、余計に凄いなぁと思った。
夕方の夕食まではもう少し時間がありそうだ。
あたしは、また王宮を探検するために、部屋を抜け出した。無論、カカオにちゃんと告げてから。
あたしは、花が綺麗に咲く中庭に来ていた。とっても甘いいい香りがして、あたしは綺麗に整えられた薔薇を一つ摘み取ってみた。
いけなかったかな?
でも、一つくらいいいよね?
「あんれま、寵姫様でねぇか」
田舎丸出しの言語で、庭師らしい男性が、あたしが仕出かしたこと全てを見ていたらしかった。
あたしは手を合わせて謝った。
「ご免なさい!お花、一つ摘み取ってしまいました!」
「いんやいんや。いくらでも摘み取って下さって構いません。この庭は、王族の方たちにあるべきもの。リク王陛下の寵愛を一身に受けるサクラ姫様のものでもありますだわい」
なんだか恥ずかしい台詞をきっぱりといわれて、でもなんだか嬉しくなって、薔薇を髪に飾るとそのまま中庭を歩き続けた。
ポロン、ポロン。
甘い花の匂いが霞のように中庭を覆う中、何処からか綺麗な音色が聞こえてきた。
ポロロロン。
それでいて、何処かさびしい音。
あたしは、がさがさと整えられた庭を、わざわざ木を掻き分けて、必死でその音色が届いてくる元を探した。
心に、何か訴えかけてくるような、そんな音色の音に惹かれて。
サァァァと、噴水の音と匂いがした。
音の正体はすぐに分かった。噴水の近くに座って、誰かがハープを弾いていたのだ。
一瞬、誰だか分からなかった。装飾品を身につけ、楽士のような格好をした美しい女性。のように見えた。
でも、その人はあたしがよく見知っている人。
サレイだった。
「サレイ?」
サレイが顔をあげる。少しまどろむような眠たそうな目で、あたしを見てくる。
「魚が釣れた~。いやこれはタコか」
「誰がタコじゃあ!」
でも、ほんとにタコのように顔を真っ赤にして、でもあたしは静かにサレイの横に座った。
ポロンポロンと。
綺麗で細く長く整えられた爪が、ハープの弦をつまはじく。
その度に、綺麗な音が流れた。
サレイはいつもの魔法士の服装から私服に着替えていた。いつもの魔法士の服装も、他の人と違って思い切り私服だったけど、こんな楽士のような格好をされると、一瞬誰だか分からなくなる。
絶世の美貌はそのままで、音が霞むようにサレイを包み込む。
あたしは、ベンチの上で膝を抱えた。
すると、サレイがまだ声変わりもしてないらしい美しいボーイソプラノで歌いだした。
あ、この歌知ってる。
アヴェ・マリア。
あたしは、その歌声とハープの音色を聞いているうちに、いつの間にかうとうとしはじめてしまった。
まるで、眠りに誘うようなそんな音だから。
優しくて、でも悲しくて寂しい音。
「私はね」
サレイが、ハープの弦を止めて、後ろの噴水を見た。
「これは亡き先代王であられるライナス陛下から、習うように強制されたのだよ」
「へぇ。才能があったから?」
「違うよ」
ポロンと、ハープの音が零れた。
「ライナス陛下に幼い頃から性的虐待を受けていて。リクやリンドウが気づくまで、それは続いて。少しでもライナス陛下の、私を弄ぶ心を和らげようと、必死で習得したんだよ」
あたしは言葉を失った。
嘘でしょ。
サレイ?
ねえ。
「私はね」
まるで独り言のように続ける。
「後宮に本当はいれられるところだったんだ。寵姫の男として。でもライナス陛下の正妃がそれを許さなくて。私は魔法士だったのに、何故。今でも分からない。ただ、この美しさが全ての引き金だった」
ポロン。また音が零れた。
「リクとリンドウが、私がどのように扱われているのかに気づいたのは、正妃陛下が気づいた時と同じくらいだった。あの頃の私は壊れていた。今でも多分、何処か壊れているんだ。ライナス陛下に弄ばれていた頃の記憶はほとんどないもの。ただ、そうされていたとリクとリンドウから話を聞いて、他人のようにそれを受け止めた」
また、サレイはアヴェ・マリアの旋律をなぞり出す。




