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まどろみの歌

あたしは、それからリンドウに理由を話して、なんとかリクを王妃の間から王の部屋に運んでもらって、王妃の部屋のベッドの側に来た。


いろいろとしたいことは山積みだけど、まずは落ち着かないと。


リンドウは、あたしの好きという言葉を受け止めてくれた。

あたしを、女の子として扱ってくれるようになった。

今までもそうだったけど、もう少し親密になれた気がする。


見送られて、部屋の前でおでこにキスをされて、あたしはタコのように真っ赤になって、ベッドに蹲ったのだった。


「かわいいなー。サクラは。ほなまた後でな」


「うん、また後で」


あたしは、それから気を取り直して、カカオを呼んで、王宮を散歩すると告げて、一人で散歩を始めた。


まだ、この世界にきて、この王宮をよく見ていない。あたしの存在はもうこの王宮中で知らない人はいないのか、すれ違う人がみんな恭しく礼をしてくるのには、なんとも言えない気分になったけど。


偉い人になった気がしなくもないけど。

黒を基本としたゴシックドレスを翻して、あたしは騎士が訓練しているという場所目指して駆け出した。


リンドウが指導している姿が見えて、あたしは手を振った。

リンドウも手を振り替えしてくれる。


カカオから、王宮の中なら一人で行動していいと許可を得ていると教えられて、あたしは喜んだ。


ずっと傍に誰かいたんじゃ、気詰まりしちゃうし。


キンカキンと、真剣で勝負を挑んでいる騎士たちの姿は精悍でかっこよかった。


でも、ずっとそんな訓練ばかりで、あたしは早くも飽きてしまった。元々飽き性なのかもしれない。


自室に戻って、カカオが運んできてくれた昼食をリリエルと一緒に食べた。

リリエルってば、食べる時も勉強に夢中みたいで、覗いてみたけど何が書かれてあるのかさっぱり分からない難しそうな本を読んでいた。


「あたし、この国の文字読めないかも」


「あら、そう?持ってきてあげる」


小さな足でパタパタ走るリリエルはかわいいことこの上ない。実の妹のすみれも、あれくらい可愛げがあったら良かったのにって思うくらい。


ほんと、フランス人形が動いてるみたいな精巧な美しさだ。


リリエルが幾つかもってきてくれた本は、なんとあたしにも読めた。


この国の言葉は、日本語で書かれているようだった。でも、実際は違うのだろう。

このシャナの世界に来た時、サレイに魔法をかけられた。


それは、言葉が分かるという魔法。


あっという間に終わって、そんな魔法をかけられたことすら忘れていたくらいだ。


この国だけで限定すれば、文字も読めるようになってるみたい。


リリエルは他の国の難しい本を読んでいるらしかった。

医学に関する専門分野の本だそうだ。

とてもじゃないが、7歳が読むには難しすぎるだろうに、彼女には理解できているのだろう。


なるほどと相槌を打ちながら、ページを捲っていく。


「私、医者になりたいのよ」


「王女なのに?」


「あら、王女でも医師の免許をとるのは自由だわ。お母様は医師でもあったのよ」


へぇ。あのトド王妃が。ブタ王妃でもいいか。

まぁ、凄い人だったんだろうなぁ。


昼食のデザートに出されたアップルパイまで平らげたあたしたち。


紅茶だと、カカオが、アールグレイの紅茶をいれてくれた。それを飲み干して、リリエルは本に夢中だった。


あたしは、のほほんと紅茶を飲みながら、リリエルがもってきてくれた、本に目を通していた。

結構面白いではないか。

日本の漫画みたいなやつだった。


夢中で読んでいくうちに、日が傾いて、リリエルはシャーライに迎えられて部屋に戻っていった。


そういえば、シャーライはリリエルの乳母だそうだけど、年齢は二十台前半に見える。リリエルが赤ちゃんの頃はお乳をあげていたんだろうから、何歳で子供産んだんだろうとか、そんなしょうもないが気になることを考えたりしていた。


「ねぇ、カカオ!」


「はい?」


「シャーライの子供っていくつ?」


「あら、姉さんに子供はいませんよ」


「え。でも、リリエルの乳母じゃないの?」


「ええ、そうです。でも、リリエル様はマリリアージュ様が亡くなられるまで、ご自分で全ての世話をしておりましたので。王族には珍しい例なのですけれどね。ですから、姉さんが雇われたのはリリエル様が4歳の時で、姉が18の時ですわ」

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