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この世界には、浄化の精霊というものも存在して、それに頼めば身体も清潔にしてもらえるけれど、さっぱり感がないし、やっぱりお風呂はこの世界でも必要不可欠なものらしい。
誰もが魔法を使えるわけじゃないし、まして精霊を使役するなど、高度な技になると相当の腕がいるらしい。
魔法学校を卒業したくらいではないと、精霊と契約し、その力を使役できないらしい。
最も、生まれたままの才能で魔法を操る子もいるらしいけど。
お風呂は4つに別れていて、少し温度の高いお風呂と、水風呂、それに薔薇風呂、一番広いが普通の湯の風呂。
あたしは薔薇風呂が気に入って、それに浸かった。
とってもいい匂いがして、骨まで溶けちゃいそう。
ふわふわ浮いた薔薇の花弁が肌に張り付くけど、それも気にならないくらいきもちいい。
「サクラ?いるの?」
「あれ、リリエル?」
入ってきた幼いその声に、私は極楽モードをいったん止めた。
「こんな時間にお風呂?」
「そうよ。昨日、湯浴みをせずに寝てしまったの。だから、朝にね」
「そっか。あれ、シャーライも一緒なの?」
腕をまくって裸足で入ってきたシャーライに、あたしは首を傾げた。
「何を言っているの?身体と頭を洗ってもらうのよ。王族や貴族なら当たり前のことよ。貴族は召使にやらせるのですって。あたしはシャーライがいいわ」
裸でまずは水風呂に浸かった幼いお姫様は、その真っ白なシルクのような裸体を惜しげもなく晒す。
「まぁ、7歳だしねー」
「何よそれ。成人しても、王族や貴族は人に身体や髪を洗ってもらうし、着替えをさせてもらうのよ?」
「えー。それ甘えすぎじゃない?」
あたしは、ぶくぶくと薔薇風呂の中で泡を立てた。
「そうかしら?需要と供給よ。市井の民や、奴隷の仕事はここ数百年の魔法精霊文化の向上で大分減ってしまったわ。なんでも自動化されていって―――昔は洗濯に何十人もの奴隷が駆り出されものよ。今は洗濯するのと、干して取り込んでたたむだけ」
「奴隷なんているの!?」
「当たり前じゃない!知らなかったの!?」
あたしの大声に、逆にリリエルが驚いている。リリエルの肌を洗うために、石鹸を柔らかそうなタオルで泡を立てていたシャーライまで吃驚して、口を開けていた。
「奴隷がいないの?あなたの世界では」
「いたよ。でももう何百年か昔のお話。もう私がいた世界には、奴隷はいない。確かに身売りとかで、まだ人身売買は完全に止まったわけじゃないけど、でも世界中で禁止されているのよ。人の売り買いは」
「信じられない。そんな世界、考えたこともないわ」
確かに、奴隷が当たり前に存在している世界からみれば、奴隷がいない世界など想像できないだろう。
「一度行ってみたいわ、あなたの故郷に」
水風呂から上がったリリエルを、シャーライが隅々まで洗っていく。そして、綺麗な銀の髪をシャンプーで洗い、湯で流すと、リリエルは少し温度の高いお湯に入ったあと、広い普通の風呂に入って泳ぎだした。
ここらへん、まだまだ子供なんだなぁって、あたしはほっとした。
シャーライは、リリエルの世話を終えたけれど、まだ入浴からあがってからの仕事が待っているので、風呂から消えてしまった。
「私も、サクラのようになりたかったわ」
「?どういうこと?」
あたしはわけが分からなくて、薔薇風呂に入ってきたリリエルを見た。
「あなたは自由気まま。お父様の寵姫ということになっているけれど、護衛があれば町に出るのも自由でしょうね。私はこの王国の第一王女、王太子ですもの」
「町に出れないの?」
「何百人も騎士を連れて、町に遊びに出て行って何が楽しいの?」
「そっか。お姫様も大変だなぁ」
「それなのに、お父様はお忍びで城下町やら他の町に遊びに出たり。不公平だわ」
ぷんぷんと怒るリリエルは、凄いかわいかった。
ハァハァハァ。
やべぇ、また変態が目覚めだした。
薔薇風呂を、鼻血で真っ赤に染め上げたあたし。
「きゃあああ、シャーライ、シャーライ、来て頂戴、サクラが溺れちゃう!!」
あたしは、鼻血と一緒に湯あたりして、薔薇風呂の中にぶくぶくと沈んでいく。




