2
なんとか急所の痛みも引いて、リクは会議室の扉を開けた。
重臣たちを初め、騎士たちも席についている。
リクが中心の席に座ると、その隣にサレイが座った。
「はじめたまえ、はっはっはは」
まるで、自分が王様になったようなサレイには、騎士の剣が鞘ごと頭にめりこんだ。その剣を投げたのは、リンドウ。
予備の剣を投げたのだ。間違っても、銀の王家の紋章が刻まれた、王から承った騎士の剣などでそんな馬鹿な真似はしない。
近衛騎士筆頭。
リクが一番信頼している部下の一人であり、騎士であり、そして友人である。
リンドウは騎士団の長を務める腕前。騎士団と魔法士団はなにかと諍いをおこして、もめあっているが。
まぁ、仲が悪いといっても、お互いに悪戯をして、その悪戯をし返す程度なので、王が悩むほどのことでもない。
「会議を始める――」
涼やかなリクの声。見ると、リリエルも出席していた。
後々のためだ。
早いうちから、こうしたことに慣れされたほうがよいとのリクの考えからによるもの。家臣たちは、早すぎるというが、いつリクが戦争や病気で死去するか分からないのが現状。
第一王位継承者のリリエルがしっかりしなくてはいけない。無論、リリエルが幼くして王位についた場合、補佐と後継人としてリンドウやサレイたちをつけることになるだろうが。
「今回は、軍備にことについて会議を行う。何か異論がある者は挙手せよ」
誰も無言で、王の言葉の続きを待つ。
「では、まずは軍備の強化について」
ざわざわと、それぞれの人が意見を交わし、それをリクが王としての立場で聞き、宰相や大臣は自分たちの立場で傍聴する。
「強化については、王はいくら投資を限度となされるか?」
「200億リラ」
ざわり。
一斉にどよめきがおこる。
今までこれほど軍備に金をつぎ込んだためしがない。確かに、戦争がおこればもっと多くの金が動くが。
「それは多すぎでは?」
騎士の一人の発言。
「あくまで、限度額を言っている。従来ならば50億リラ程度だろう。それ以上の金は、傭兵を雇う金額の例だ」
「傭兵はすでに多くいます。この国で抱えるにはもう多いのでは?」
「戦争が起きれば、もっと多くを雇わねばなるまい。なるべく民を戦役に科せたくないのだ」
「それは分かりますが、どこの国でも民が兵士となるのが規則」
「そのような規則、誰が決めたのだ」
「いえ、これは比喩で――」
聞き返されたのは、宰相であった。焦っているのが手に取るように分かる。
「民は国の宝。それを忘れるな、宰相よ」
「は、肝に銘じておきまする」
「では次の課題に」
ペラリと、皆が紙を捲り文章に目を通す。
「シャリール帝国の、援軍要請にはどのように対応すればよいでしょうか。もうずっと援軍要請を送ってきておりますが」
「無視し続けろ。あんな遠国に援軍を送ってなんの得がある。条約を結んだとはいえ、あくまで不可侵条約のみだ。攻められれば助けるなどという同盟を結んだ覚えはないわ」
リクは冷たい声で一喝する。
「では、使者の方には明日にも国内を発ってもらいましょう」
「そうしろ」
いつもの阿呆なリクはそこにはいない。一人の王がそこに冠していた。
「騎士団の拡大についてですが――」
「従来通りに。枠は近衛は200名まで。精鋭は500。騎士全体は5000までだ。現在は4700名と少しだったか?」
「は。あと250名は増やせます」
「士官学校の成績のよい者から選抜しろ。念のため、模範試合も行わせろ。私も立ち会う」
「は」
そんなに大きくもないサイカ王国の騎士団は人数が多いと他国でも有名だ。騎士とは国が雇う、国内の傭兵ようなもの。
金銭や恩賞を払うかわりに、忠誠を近い、王や国の護衛に当たる。
常に一定の給料を与えるので、王国側にとっては戦役のない時でも給料を与えなければならない痛手があるが、戦役になると王と一緒に先陣を飾る、無敗を誇る騎士団である。




