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不思議な存在だと、リクは腕の中の少女を見つめる。


黒髪黒目。


この世界では、とても珍しくて、そして金の一族に多い色である。


黒という色、それは異世界、エデンからの使徒という証のような色である。黒髪や黒目をもつ民もいるが、その絶対数が少ない上に、東の小さな島国に住んでいて、しかも鎖国をしている。


まぁ、黒は高貴なる色として好まれ、髪を黒に染めたり、カラーコンタクトで黒い瞳にしたりする者もいるが。


サクラの髪には少し茶色が混じっている。だが、人目を引くのは確かだ。


黒髪黒目だからといって、すぐに攫うようなことは遥か昔のこと。金の一族の存在が最高潮に達していた時期だ。どこの国も金の一族を手に入れようと躍起になっていた。


東の島国に黒髪黒目の人間がいると分かってから、その国が鎖国するまでの間、大陸に流れ込んだその島国の人間の血が入り混じった国でも、時折黒髪だったり、黒目の子が生まれることもある。


そんなこともあり、黒をもつ人間が誘拐されるようなことはほとんどなくなったが、それでも自然に黒を帯びた人間が、奴隷市場などに出されると、目が飛び出るような値段がつく。


守らなければ、ならない。

この国の威信にかけても。


このサクラという少女を。やがて正妃、王妃に迎えるしかないかと、リクは眠り続けるサクラの頬に、唇を寄せる。


甘い、ワインの香りがした。


27歳になり、子供を一人もった大の大人が、十代半ばの少女の存在に心を動かされ始めていた。


カッ。


その時、サクラは目をあけて、そして。


「ウルトラキック!」


メキャ!

リクの股間を蹴り上げた。


「にょおお!にょおおおおおお!!!」


リクは言葉にならない言葉を発して、床でのたうちまわった。


「あにゃあああ、ぬよおおおお!!」


この衝撃。

金時さんにくるこの痛み!

男なら耐えれない、これは。


この痛みは、かつて暗殺未遂に出会い、腹を刺されたことがあるが、その衝撃を遥かに凌いでいる。


「もきゅううううううう!!」


クネクネした足取りで、リクは王妃の間を後にした。


「何してるんだ、リク。ダンスの練習か?」


ちょうど、会議に出席しようと移動していたサレイとすれ違いそうになった。


サレイは、絶世の美貌を曇らせるどころか、快晴にしてリクの面白い行動を観察している。


「いやな、金時にな…蹴りが」


「ふ、美しいこの私に目が眩んで、そのような振る舞いを行っても無駄だぞ!私は私しか愛さない!!!」


断言するサレイ。

誰もそんなこと聞いてないっての。


サレイは、士官学校、サレイの場合は10歳の頃からリクと同期であるので、現在サレイは23だ。

童顔のため、まだ十代に見えるが。


リンドウとリクとは4歳違い。重臣の前では、リク陛下と呼んでいるが、リンドウだけだったり、リクと二人だけの時は普通に愛称のリクと呼ぶ。


名前がリクだけに、愛称もそのまんまだ。


「ふっ。この美しさ、もはや罪……」


サレイは、胸ポケットに入れていた白薔薇を口に咥えて、ポーズをとった。


ナルシストもここまでくると、救いようがないかもしれないと、リクは心の中で違うことに悲鳴をあげた。


いてえええ。

急所が!

金玉が!!!



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