王の時間、王の側近の時間
「あー。酔った」
うぃー。
あー、心地いいな、リンドウの膝枕。
冷たいタオルを頭に乗せられて、あたしはリンドウの肩甲骨くらいまで伸ばされて、後ろで一つにまとめられていた金髪を弄った。
「うぃっく」
王妃の部屋を、あたしは与えられていたのだ。
リンドウは、甲斐甲斐しくあたしの面倒を見てくれた。酔ったあたしの衣服はそのままに、腰の苦しいコルセットだけ緩めてくれて。
自分用のタオルを持ってきて、水で絞ってそれをあたしの額に乗せて、膝枕をソファーの上でしてくれた。
こんな場面、リクに見られたらどうしよう。
リンドウが降格とかそんなこと、ならないよね?
すでに、あたしの存在はリクの寵姫ということになっているらしく、リンドウの扱いも何処か恭しいものだ。
でも、凄く馴染み易い。関西弁を話すせいかなぁ?
金髪を結んでいたリボンをとると、パラリと、あたしの視界に金色が溢れた。
「とらんといてな。くくりなおすのめんどいんやから」
「ういー。あひひひひ」
「だめやな、こりゃ」
リンドウの声が遠くなっていく。
あたしは、泥に沈むように、その眠気に誘われて底へ底へと沈んでいった。
「サクラは?」
「寝とるよ」
ざるのリクは、去っていったサクラを心配して、王妃の間までやって来ていた。
「かわいい子やな。素直で、まっすぐや」
結われた黒髪を、リクの手がすいていく。
「確かに。かわいいというか美人だ。暴力に訴えるのだけはいかんともしがたいが」
リクも、リンドウの言葉に半分頷いた。
サクラは真っ直ぐで、それで素直で。元気いっぱいで。
まだ出会ったばかりなのに、心に触れてくる。心に直接その存在が触れてくるのだ。
こんな存在も珍しいと、二人は思う。
「お前と出会った頃を思い出す」
リクは、リンドウの横に座った。ソファーは長くて、サクラが寝てもまだ余裕で人が座れる。
リンドウがリクと出会ったのは、士官学校でのことだ。まだ14歳だった、お互い。
リクは王太子として育てられながらも、士官学校に通っていた。そこで、サレイとも出会った。サレイは魔法学校とかけもちをしていたが。
その頃から、悪ガキ3人組として有名になった。王宮中で悪戯をして、よく先代王に怒られたものだ。
すーすーと、寝息を立てているサクラの華奢な身体を受け取って、リクは王妃のベッドであった、その天蓋つぎのベッドに寝かせた。
亡きマリリアージュは、かわいいものを好み、煌びやかな部屋よりもその向こう側に自分だけの空間を築いて、かわいいものをコレクションして、よくリクやリンドウ、サレイに見せて微笑んでいたものだ。
ブタ女と陰口をよく叩かれていたけれど、決して気にしなかった。あれは良き王妃であったと、王宮にいる家臣誰もが思っている。
「この子に、求めるんか?マリリアージュ姫のように、愛してくれと」
リンドウは、紫色の瞳でリクを射抜く。
リクは首を横に振った。
「今は、まだ分からない。愛しいと、思い始めたのかも分からない」
「そやな。出会ったばっかやもんな」
リンドウは、苦笑いした。そして、懐から煙草を取り出すと、ジッポがないのに気づいて、舌打ちする。
「ほら」
リクが、ジッポを出して火を点す。
それに、煙草を咥えたまま、近づいて、煙草に煙が立ち上がる。
リンドウは、ひらひらと手を振って、王妃の部屋を出て行く。
「煙草くさなったらあかんやろ。バルコニーでもいくさかいに」
「ああ。9時から定期会議だ。軍備のことについてだ。遅れるなよ」
「わかっとるよ」




