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「ぶくぶくぶく。ぜはーぜは-!」


リクが復活した。リリエルってば、20秒くらい、スープにリクの顔沈めてたからな。そのまま窒息死したのかと思って放置してたんだけど。


ちっ、生きてやがったか。


寵姫とか煩わしいことが一気に消えてくれそうだったのになぁ。


まぁ、リクの整った銀髪碧眼のその顔に見惚れたのは事実だ。リンドウと同じくらいにかっこいい。サレイはあれは別次元だ。あれは美しいというべきだ。あの美貌は、それこそ女がもっていたら傾国、というべきものだろうか。


「まぁなんだ、金の一族とか黒い獣とか白い獣とか。そのうち話さなければならなくなった時に、もっと詳しく話そう。さて、給仕係り、フルーツもってこい!酒ももってこいー!どんちゃーんやろー!」


あほ丸出しで、リクは給仕が持ってきた高級そうなワインをたくさんのグラスに注いで、給仕係りにも近衛騎士や侍女にまで飲ませる始末。


「ちょ、リリエル!?」


見ると、リリエルまでワインを飲んでいた。


「未成年は飲酒禁止!」


「あら?この国は7歳で成人になるのよ」


「まじで!?はやすぎね!?」


早すぎるっつうの!子供すぎじゃんか!


「あははひっかかった。成人は18よ」


きゃらきゃら明るく笑うリリエル。

やべ、また鼻血…。


ブバッ!

やっぱ出た。それはリクに噴きかけておいた。


「鼻血垂れてるわよ、サクラ。せっかくの美貌が台無しだわ」


こっちにやってきて、絹のスカーフをとって、爪先立ちになっても届かない様子だったので、屈むとリリエルは鼻血をふき取ってくれた。


優しくていい子じゃのお。

わしのツボじゃあ。

こんな子を嫁にしたいのお。


なんかもう、晩年の極地みたいな心になった。


「黒き獣、白き獣目覚めるはシャナの夢」


リリエルが、ポツリと不思議な言葉を口にする。


「?」


「シャナの夢で語られているわ。全て」


「何かの小説?」


「そう。綴られ始めた物語」


あたしは、リリエルに勧められてワイングラスを手に取った。

それを優雅にまわしてから、ぐいっと一気飲み。無論腰に手を当ててだ。


そして、カーっと、すぐにアルコールの火照りが体を熱くする。


「無礼講じゃああ!」


向こうでは、リクが団扇を扇いで侍女たちを侍らしているではないか。


「ふん、何よ!」


まだテーブルにあったワインの入ったグラスを手に取り、また一気飲み。


「げふ~~。あ、やべぇうううううんんん」


最後まで言うのはやめておいた。

無論うんこだ。


あたしはダッシュで晩餐会の広場から抜け出してトイレにかけこんだ。


そしてティッシュペーパーを見るが。


ない。


「あああ、やっぱり紙がねええ!!」


侍女のカカオにティッシュペーパーをわざわざ離宮から届けてもらった。いつもは切らさないはずなのに、今日に限ってどこのトイレもティッシュペーパーが切れていたそうだ。


あたしは、手を洗って、スカーフで手をふいて外に出る。リンドウとぶつかりそうになった。


「はえ!?なんや、なんでおんの!?」


「それこっちの台詞!あなた、リクの近衛騎士筆頭なんでしょ!なんで晩餐会の会場の警備にこなかったの?」


「いや、めんどいから」


「そっかー」


とりあえず、納得する。確かにめんどくさそうだ。っておい、それでいいのか。お前の職務だろそれ!


「つかな、なんでこのトイレに」


「え?」


あたしは看板を見る。トイレのマークは地球と同じ。でも看板に書かれた人のマークは青だ。


つまりは男子トイレ。

そういえば、カカオが恥ずかしそうな顔をしていた。


あたし自身が入った時、騎士らしい人が立ちションしていたのも目撃した気がする。


「きやああああああああああ!!」


あたしは大声をあげて逃げ出した。

いやああああああああああ!!


あたしってば男子トイレに、よりによって騎士の人がいたのに、勢いよくトイレに篭って。


やっぱり紙がねーとか、カカオ紙運んできて~とか叫んでたんだ!


大声で!


ど恥ずかしい!!!


曲がり角の壁に顔をそのまま埋めたい気持ちになった。穴が開いたら入りたい、まさにその心境。


ってことは、あの声、リンドウにも聞かれてた!?


「リンドウ!!」


「ここおるで?」


金色に輝く髪が眩しかった。


「ぬわぁ!紙がねええとか、聞こえてた?」


「うん、ばっちりや!元気いいな!」


「ぬあああああああ」


ゴンゴンゴンゴン。頭突きを繰り返すと、ピシッと、壁に少し皹が入ったのでリンドウに止められた。


「止めとき。壁潰れるさかいに」


「ぬあああ!忘れて、さっきのことはぁ!!!」


あれ?

なんだろう、ふにゃふにゃしてきた。

目が回る。

リンドウの丹精な顔がグラリと揺らいでいく。


そのまま、真っ赤になって、あたしは倒れた。


「おい、どないした……酒くさー!」


リンドウに片手で軽々と腰に手を回されて支えられた。リンドウは、アルコールの匂いに柳眉を顰めながらも、サクラを、王妃の部屋へと運んでいくのであった。




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