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気持ち悪い。


そう思い浮かべた途端、目が醒めたと気付いた。

目が醒めたってことは、つまりそれまでは意識がなかったってことで、寝ていたか気絶していたか……。気絶って、入職したての頃、朝礼でぶっ倒れて以来だな―。

と言うか、ちょっと待て。

私、さっきまでお風呂入ってなかったか!?

がばっと身体を起こそうとして、それが無謀な行為だったことに動いてから気付いた。

おおぅ、気持ち悪い。目が回る。

そういや湯あたりしたんだっけ。

起こした身体を、再びばったりと倒れさせ目を瞑る。

湯あたりって不思議だわー。お湯で温まった筈なのに身体が冷えて感じるもん。不可解で不愉快。冷や汗でシーツが濡れて更に不快……ん?シーツ?

目を閉じたままさわさわと周囲を探ると、手触りのいい感触が。そういえば寝ている場所が硬い床じゃない。適度な沈み心地や硬さから察するにベッドのような……ってことはお風呂場のタイルや脱衣所の床じゃないってことで。

え、いつのまに?

疑問に思っても身体が不調なので動く事も出来ず、うーうー唸っていると額に冷たいものが触れた。


「大丈夫ですか?」


大丈夫じゃない。そう答えたいけど、口を開いたらきっと吐く。絶対吐く。ほんとは吐いた方が楽になるって判ってるけど、ベッドの上で吐くのは嫌だ。トイレ行きたい。

声の主はうーうー唸ってたぶん蒼い顔をしている私を見て何かを察したらしい。


「吐きそうなら吐いてしまいなさい」


いーやーだー!

吐くならトイレ!そこは譲れない。

嫁入り前の娘が人様の前でゲロゲロ吐けるか―――!!


それを言葉には出来ず、ただ首を横に振ると、ふぅ、と軽く息を吐く音が聞こえた。くそぅ。溜息吐かれた。呆れる前にオトメゴコロを察しやがれ!


「仕方ありませんね。少し我慢して下さいね?」


そう聞こえたすぐに身体が揺れた。というか、持ち上げられたな、これは。力持ちだなー。おまけに揺すられたら気持の悪さが悪化すると知っているのか、歩いているような気はするのに私の身体はほとんど揺れない。何気にすごくないか?

目を硬く瞑っているので、どこからどこへ運ばれてるのか全くわからないのが不安だけどね!

少し、と言われた言葉はそのままの意味だったようで、ほどなく私は床に下ろされた。


「後は任せてもいいかな?落ち着いたら声をかけて」

「はい」


あれ?

声が二人分?


「ミアコ。ここは御手洗いですから我慢しなくてもいいですよ」


おお。おトイレ?

ふらふらと伸ばした指先に硬いものが触れて、それを便器だと認識した途端吐き気がMAX。縋りつくように両手で身体を支えると、我慢なんてどこかに吹っ飛んだ。


はあ、すっきり。そしてぐったり。


酔っ払った時もそうだけど、気持ち悪い時って吐くと楽になるんだよね。不思議だわ。

でも疲れる。

お風呂に入った筈なのに、冷や汗で身体がべたつくし、口の中は気持ち悪いし。ああ、もう一回お風呂に行きたい。

そう思ってたら、冷たいタオルを顔に当てられた。

おわ、びっくり。


「落ち着かれましたか?」

「……ぁ、はぃ……」


おお!?声がまともに出ない……って、吐いた直後だ。当たり前か。に、しても、なんてか弱い声だよ。私の声とは思えん。

つか、誰?とか思って見上げると(まだ便器に懐いたまま座り込んでいるので)マリエルと一緒にいたメイドさんでした。


「先ずはこちらで口を漱ぎましょうか」


差し出されたグラスを受け取ろうとしたら指に力が入らない。なんてこった。

ふるふる震える自分の指先に驚いていたら、メイドさんは察した様子で私の口にグラスをあてがってくれた。

ただのお水かと思ってたらなんか爽やかな香りと後味……なんだろ、これ。二度、三度とうがいしたら口の中はさっぱりして気分もだいぶマシになった。


「これ、飲んでもいい?」

「どうぞ」


残ったお水をごくごく飲むとグラスの中はすぐ空になってしまった。物足りないと思ってたらメイドさんが注ぎ足してくれて更にごくごく……。ぷはっ。生き返る―。

結局グラスになみなみと二杯程飲んで満足しました。

で、落ち着いたら周囲を見渡す余裕も出来たわけで。

今いるところは御手洗い。それはわかる。なんせ私が懐いているのは便器様だ。

だが、しかし。

何故に私は素っ裸にシーツ羽織っているだけなんでしょうか?

そして、メイドさんがここにいるのはなんとなく理解できるんだけど、もう一人いたよね?

私をここまで運んでくれた人。

アレって……。


もしかしなくてもリックさん?

え。なに。この裸に近いカッコで運ばれたの、私?

つか、見た?見られた?


……。

…………。


よし。今回は緊急事態ってことで、ノーカウント!

無かった事にしよう。うん。

内心で折り合いを付けたばかりだと言うのに。


「リック様。落ち着かれたようです。お願いします」

「はいはい、って、うわ!?」

「何で当然のように入ってくんのよ、ばかぁ!?」


シーツ羽織っているとはいえ、下はマッパだよ!?

思わず手にしたグラスを投げ付けてしまったのは、反射としか言いようがない。投げてから「しまった」と慌てたけど、びっくりした割には危なげなく受け止めていたから問題はないだろう。……たぶん。

にしても、リックさんってば反射神経いいんだね。



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