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短い……。

私の怒鳴り声を聞き付けて、洗い場との仕切り扉の向こうにバタバタと人の足音が。


「どうしました、ミャコ!?」


この声は、リックさんか。焦っているのか私の呼び名がおかしいぞ。

……っていうか、ちょっと待て!


「開けちゃダメ!」

「しかし!」

「ダメったらダメ!開けたら痴漢って叫ぶよ!!」

「痴漢!?」


お風呂場だよ?裸だよ?

何で知りあって間もない男の目に、あられもない姿を晒さないとなんないのさ!?カンベンして!

つーか、そもそもの元凶が、私と同じ湯船の中で面白そうな顔をしているのってどうなのよ?


「君もとっとと出て行きなさいよ」

「いやだ」


即答かよ!


「何ゆえ!?」

「まだ身体を洗っていないじゃないか」


ああ、まあ、せっかくお風呂に来たのにそれはそうか。……じゃ、なくて!

そもそも人が入っているのに乱入してくるのがおかしいって気付けよ!!

私は君にも裸体を晒す気は、全くないぞ!


「……ミァコ。なにやらフェリクス様の声がするような気がするのですが?」


やっと気が付いたのか、リックさん。ちょっと鈍くない?


「いますよ~。ノゾキ通り越して痴漢のエロガキ様が、約一名」

「エロガキ……」

「……それは、申し訳ありません」


不満そうなおぼっちゃまなんぞ知ったことか。

リックさん、謝るのはいいけど、早くこの状況何とかして!

洗い場にはぼっちゃん、脱衣場にはリックさんじゃ身動きが取れないのよ!私は裸を披露して歩く趣味は無いんだから!


「すぐに侍女を呼びますので、もうしばらくお待ちください」


うん、そうして。

それにしても、湯船の中で怒鳴って興奮したせいか、ちょっと気持ち悪くなってきたような。

ああ、まずい。

これって、湯あたりしかけてるんじゃない?

あったかいお湯の中に居るのに、背筋に冷たいものが走ってる気がする。なんか、目の前が揺れているような……。


「おい?」


ああ、ぼっちゃんの声が遠くに聞こえる。

これは、まずい。とってもまずい。

頭を水で冷やさねば。

水。

水はどこ?

てか、このお風呂場、水ってあったっけ?


ああ、もうなにがなにやらわかんない。


ぐらぐらと揺れる視界が薄暗く狭まっていく。

背筋を走る悪寒をどうする事もできず、私の意識はそこで途切れた。


おまけ

***


「リック、リック!!大変だ、ミャーコが!」


侍女を呼びに行こうとした足が、フェリクス様の叫び声でぴたりと止まる。

ミアコには開けるなと言われたが、緊急事態を訴える声に開けない訳にもいかない。

苦情は後で聞かせて貰おうと浴室に飛び込むと、そこには湯の中に沈んだミアコと、引っ張り出そうとするフェリクス様が。

……フェリクス様。何で裸なんですか。それではエロg……こほん、痴漢と罵られても文句は言えませんよ。――ではなくて!

沈んだミアコは意識がないようでぐったりしていた。

まだ幼いフェリクス様の力では、浴槽から引っ張り出す事は難しかったのだろう。

意識の無い人の身体は思った以上に重い。

焦っているフェリクス様の顔が、半分泣きそうになっている。

とにかくこのままでは危ない。

沈んだミアコの身体を浴槽から引き上げると、湯に浸かっていたというのに、目を閉じた顔が妙に青白い。

そういえば、ずいぶん長い時間湯を使っていた。おそらくはそのせいで湯あたりしたのだろう。

抱え上げた裸体に視線が落ちる。

……いや、別に、邪な意味はないから!ちょっと、目が行ってしまっただけで!


それにしても……。


慌てて視線をそらすと、フェリクス様が見上げていた。


「小さいよな?」


ああ、うん、そうですね……って、フェリクス様。

それは口に出して言っていい事ではありません。


多分、絶対。


***

リックのスケベー。

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