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封戦機構《リミット・アリーナ》  作者: Y.M
第1シーズン

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12/25

「観測外階層」

窓の外に、一瞬だけ“それ”は見えた。


 形がない。

 距離もない。

 ただ、存在しているという事実だけが強制的に脳へ押し込まれる。


(今のは……何だ)


 佐倉 恒一は息を止めたまま動けない。


 目を離した瞬間、消えた。

 最初から存在していなかったかのように。


《観測外階層:認識対象》


 その表示だけが残る。


「観測外……」


 声に出した瞬間、頭が軽く痛む。


 この単語は“理解してはいけないもの”に近い。


 放課後。


 何も起きない。


 戦闘も接続もない。


 だが佐倉は分かっていた。


(もう、待ってる段階じゃない)


(次は“来る側”が変わる)


 その夜。


 家の天井を見ながら横になっていると、視界の端が揺れた。


《再同期開始》


「……またか」


 今度は抵抗する間もない。


 意識が“上に引っ張られる”。


 気づくと、そこは空間ではなかった。


 空間の“外側”。


 距離も時間も成立していない領域。


 そこに、複数の“存在”があった。


 設計体よりもさらに曖昧な輪郭。


 観測者よりもさらに静かな圧。


 そして、その中心に——


 “何もない中心”。


《観測外階層接続:成功》


 声が響く。


 しかしそれは音ではない。


 意味そのものが直接流れ込む。


《記録保持体:再評価対象》


《第3層・第2層・第1層:統合観測中》


 佐倉は理解する前に理解してしまう。


(全部見られてる)


(戦闘も、観測も、設計も)


(その“さらに上”から)


「お前らは何だ」


 問いかける。


 だが返答は少し遅い。


《我々は“結果観測層”》


「結果……?」


《全階層の出力を確認する層》


《変化の最終形を確認するための存在》


 佐倉の中で、何かが崩れる。


(戦闘のためじゃない)


(観測のためでもない)


(設計のためでもない)


(“結果を見るためだけ”の上位か)


 そのとき、別の映像が流れ込む。


 無数の世界。


 無数の戦闘機構。


 無数のリミット。


 そして、同じように“消えた存在たち”。


《多世界同時観測結果》


《成功例:極少数》


《大半:非保持》


 佐倉は歯を食いしばる。


「つまり……これは全部同じことの繰り返しか?」


《概ね正しい》


 沈黙。


 その重さだけが異常だった。


 佐倉は一歩踏み出す。


「じゃあ聞く」


「俺はどっちだ」


 空間が止まる。


 初めて“即答されない”。


《判定保留》


《観測継続対象》


「保留……?」


 その瞬間、空間の“外側”に揺れが走る。


 今まで見えなかった何かが、こちらを“見返している”。


《異常干渉発生》


《観測外階層にノイズ》


 上位存在たちが一斉に揺れる。


 まるで“予想していないもの”が入り込んだように。


 佐倉はそこで気づく。


(俺だけじゃない)


(この構造に“穴”がある)


(最初から完璧じゃない)


 その瞬間。


 視界が引き戻される。


 教室。


 椅子。


 黒板。


 何も変わっていない。


 だが、机の上にだけ違うものがあった。


 一枚の紙。


 そこには一行だけ書かれている。


《観測外干渉体:接触開始》


 そしてその下に。


《“第0層”起動準備》


「……第0層?」


 声に出した瞬間、窓の外が完全に“消えた”。

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