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封戦機構《リミット・アリーナ》  作者: Y.M
第1シーズン

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11/25

「設計体接触」

《次段階:設計体接触予定》


 その表示が消えないまま、教室の空気だけが薄くなっていく。


 佐倉 恒一は机に手を置いたまま、呼吸を整えようとしていた。


(もう“戦闘”じゃない)


(完全に、こっちを見に来てる)


 そう思った瞬間だった。


 視界の中心が“沈む”。


 転送でも接続でもない。


 現実そのものが、下へ落ちる。


 気づけば、そこは第3層よりさらに奥だった。


 空間はない。時間もない。

 ただ、“意味だけがある場所”。


 そこに、設計体がいた。


 人の形はしていない。


 だが「人間のように認識しようとすると人間に見える」不安定な存在。


 視線というより、“定義そのもの”がそこに向いている。


《設計体:接続成功》


「……来たか」


 声は、直接脳に落ちる。


 佐倉は息を吐く。


「お前が……全部作ってるやつか」


 設計体はすぐに否定もしない。


 ただ、事実だけを返す。


《構造定義者の一部》


《完全設計ではない》


「一部?」


 佐倉はその言葉を繰り返す。


 設計体は淡々と続ける。


《リミット・アリーナは単一意志ではない》


《複数層による自己修正構造》


《観測・戦闘・設計・修正の循環》


 その瞬間、佐倉の中で何かが繋がる。


(第1層=戦闘)


(第2層=観測)


(第3層=設計)


(そしてその上に“さらに何か”がある)


 これは一つの世界じゃない。


 “仕組み”だ。


 佐倉は一歩踏み出す。


「じゃあ聞く」


「なんで俺をここまで上げた」


 設計体は一瞬だけ止まる。


《誤差検体》


《記録保持体》


《自己変異因子》


「……バグ扱いかよ」


 佐倉は吐き捨てるように言う。


 その言葉に対して、設計体は初めて“揺れた”。


《バグではない》


《進化候補》


「は?」


 空間に無数のルールが浮かび上がる。


 それはこれまで見てきたものとは違う。


 戦闘ルールでも観測ルールでもない。


 “更新前の設計案”。


《試案:人間適応進化プロトコル》


《条件:極限環境下での自己更新能力》


《目的:変化耐性の上限測定》


 佐倉は理解する。


(俺たちは戦ってたんじゃない)


(“進化させられてた”)


「じゃあ俺は何だ」


 声が少し震える。


「生き残り?」


「実験動物?」


 設計体はすぐには答えない。


 だが、その沈黙が答えだった。


《定義不能》


《現行構造外存在》


《第3層干渉による想定外生成》


 佐倉は笑いそうになる。


(またそれかよ)


(全部“想定外”で済ませるのか)


 そのときだった。


 設計体の周囲に“別の影”が現れる。


 さっきまでいなかった存在。


 より上位の“気配”。


《上位修正要求》


《接触プロトコル中断》


 設計体が初めて明確に反応する。


《干渉発生》


 空間が歪む。


 佐倉の存在が引き戻され始める。


「待て!」


 佐倉は叫ぶ。


「まだ聞くことが——」


 設計体は一瞬だけ“こちらを見る”。


 そして。


《君は既に問いの中にいる》


 視界が崩れる。


 教室。


 机。


 黒板。


 すべて元通り。


 だが、空気だけが変わっていた。


 まるで世界が一段階“浅く”なったような違和感。


《接触ログ保存》


《第3層干渉記録更新》


《上位存在反応検知》


 その下に、初めて見る表示。


《観測外階層:認識対象》


「……観測外?」


 その瞬間、窓の外に“何か”が一瞬映る。


 今までのどの層でもない。


 もっと上。


 もっと曖昧で、もっと確実な“存在”。


(まだ上があるのか……)

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