003
ライナスは人気のない街をひた走っていた。
いつもと同じく、見慣れた道。けれどもどこか違う道に思える。
こんなにも広かっただろうか。こんなにも静かだっただろうか。こんなにも…。
人の居ない街は足音や呼吸を吸い込み、まるで音が消えたかのようだった。
ただ聞こえるのは自分の心音と、足音と、呼吸音のみ。
まるでこの街で自分ただ独りだけが生きているかのようだった。
首を振って、不吉な考えを打ち消す。今はただシェルターへと逃げるのみだから…。
自宅前を過ぎてしばらくが経ち、いつも以上に長く感じた鍛冶通りが終わり、中央地区西の小噴水広場が見えてきた。
「やっと…これで半分だ…!!」
安堵しつつ足並みを少し緩める。
すると突如左側から崩れるような物音が聞こえた。
「なっ…う、嘘だろ!?」
土埃と野蛮な嗤い声の向こうに、悪鬼達によって破壊された北方地区が横たわっていた。
襲撃は西の怨龍だけでは無かったのか?防衛軍がいたはずなのに?街が…無くなる?
ふと寒気と共に我に返ると、サーベルを手にした悪鬼が一体、こちらに向かってくる。
殺気と舐るような視線を感じる。
恐怖で息が上手くできない。頭がぐらぐらする。
そんな折、ふと手にした砲の存在を思い出した。
固まる体を動かし、トリガーと補助棒を思いっきり握りこむ。
砲弾が前へと飛んでいき…悪鬼の横をすり抜けていく。
目の前でサーベルが振り上げられた。
咄嗟に目をつぶった。斬撃音が奔る。
「…あれ?」
不思議と痛みは無い。恐る恐る目を開けた。
すると目の前には切り裂かれ、事切れた悪鬼と、男が立っていた。
見ると士官服らしき上等な服をまとっている。
「俺は中央軍の者だ。君は…民間人か?」
「は、はい…あ、ありがとうございます…」
「民間人はシェルターに急ぎなさい。お前らは急ぎ西の援護に迎え!」
「「はっ!!」」
背後から声がしたかと思うと、2人組が西へとすごい勢いで跳んで行った。
「北の悪鬼は殲滅する。君は安心してもう行きなさい。」
言われるがままに進もうとする。
「君のその銃…なかなかいい品だな。大事にしろよ。」
「あ、ありがとうございます…」
良くわからないが助かったようだ。
ライナスは震える足腰を奮い立たせ、シェルターへと進み始めた。




