002
ライナスは忘れ物を届けに西の城壁へと駆けていた。幸いにも通りは西側に近かった為、そこまで時間はかからなかった。
深呼吸をし、息を軽く整えてから声を上げる。
「すっ…すいません!店に忘れ物があったので届けに参りました!」
緊張で声が裏返ったものの何人かが振り向き…直後知った声がかけられた。
「ライナス!お前どうしてここに…!?」
「父さんこそ、どうしてここに…!?」
見るといつもの作業服姿ではなく軍服姿の父がいた。
「店に誰かの忘れ物があったから届けに…避難しなきゃ…でもその格好…どうして!?」
訳が分からない。服装を見る限り仕事では無いみたいだし、ましてや戦いだなんて…
「混乱させてしまってすまないな…。今まで黙っていて悪かったが、俺は退役軍人だ。」
父さんはそう言いながらバッジを手に取った。
「そしてこれは、この前完成したばかりの実験品だな!」
言いながらバズーカ砲に水晶をはめ込む。
「ライナス、ついでだから見て行け。その方が良くわかるだろうからな!」
砲を構えた直後、砲身へと魔力が集まっていくのを感じる。
「ダナス殿!部隊配置完了です!」「敵、射程圏内に入りました!」
次々と周囲の防衛軍の方達からの報告の声が聞こえ、遠くに黒塊が地を波打つのが見え始めた。
「よし!指示通りに動けよ!撃てぇ!」
父、ダナスの指示に従い攻撃が開始された。幾筋もの線が飛んでは黒塊へと突き刺さる。
父の持つ砲から球が放たれ、ゆるやかな放物線を描いて勢いよく飛んでいく。
それは龍のうち一体の頭上で炸裂したかと思うと、空間を抉った。苦痛の咆哮が聞こえる。
「やった!これなら…!!」
「油断はなりませんよ。…中佐殿、こちらはあなたの息子さんですか?」
防衛軍の方の内の1人が近づいてきた。
「どっちもその通りだが、その呼び方はやめろって…今では鍛冶屋のオヤジだよ。で、状況は?」
「はっ!相手は怨龍が7体で後続は見当たりません。…しかしやはり龍に進化しただけあって頑丈なものですね。」
見ると黒塊は蛇のように見え始め、先程と変わらぬ様子で近づいている。
「シュン、引き続き副官を頼む。」
「はっ!では観測を行います。それで息子さんの方は…」
「ライナス、お前はこれを持って避難しろ。」
言いながら砲を手渡された。
「砲身右の補助棒を奥に回すと連射重視に、手前に回すとさっきみたいな威力重視の弾が出る。左手で下のトリガーを握りこむとチャージ。補助棒を引くと発射だ。念のために持って行け。」
「で、でも!」
「いいから早く行け!最悪ここまで戦場になるぞ!」
言われるがままに、逃げ始める。
「でも」何だろう?
これが無いと攻撃できない?逃げないと危ない?その時のライナスには、続く言葉が分からなかった。




