004
ライナスがシェルターへと駆けだした時の、東戦線の様子です。
「行ったか…」
ダナスは呟くと、西の怨龍の集団へと視線を向けた。
「シュン、戦況に動きはあるか?」
「全戦線依然として変化なし。西、怨龍には同士討ちの動きはありませんっ。」
「そうか…」
やはり…今回の襲撃はおかしい。怨龍は、その凶暴性から群れることはほぼない。
しかも今回は退役軍人も召集されるほど大規模な、統率のとれた攻勢が行われている。
「まさか東西南北の全方位から、包囲攻撃をされるとはな…」
「方位と包囲をかけたダジャレですか?余裕ですね。攻撃部隊、所定の位置に到達です。」
「くそっ、違うっての…総員、気配を隠しつつ攻撃用意!気取られるなよ!」
直接怨龍の咆哮を喰らえば大抵の生物は正気を失うため、正面から殴り合うのは得策ではない。
そこで、先ほど地雷化した魔力水晶と遠距離魔法攻撃の十字砲火で数を減らしていく作戦だ。
「3…2…1…敵、射程圏内入りました!」
「よし!攻撃を開始しろ!」
魔弾放射の開始に合わせて術式を起動させると魔力水晶が炸裂し、空間を大きく抉った。
強大なエネルギーに埋もれて怨龍の姿が見えなくなる。
術の起動に安堵したのも束の間、嫌な気配がした。
「…!!全員、伏せろ!」
禍々しいエネルギーが視認できる。
次の瞬間、怨龍の咆哮が放たれた。
幾本もの黒い波動が、空間を薙ぎ払っていく。
「くそっ、あれでもまだ倒れないのか!?被害状況!」
試作バズーカ砲の3倍には匹敵する威力を与えられる筈だが…さすがは龍といったところか。
「ディーン、ノルン、二名が被弾!生存は確認できますが…応答がありません…」
「ザザ…こちら火軍北方部隊!死鬼を含む、悪鬼の大軍勢が侵攻中!数はおよそ800と見られます!支給、支援をお願いします!」
次々と絶望的な報告が入る。南と東は現状で既に手いっぱいだとの連絡を受けている。
圧倒的に戦力が足りていない。止まりそうな手と頭を必死で動かす。
考えろ…!なんとしてでも考えろ…っ!何か手立ては…!
「「お待たせいたしました。中央軍の者です。」」
2つの声が重なって聞こえた。
と、見る間に声の主は影となって素早く跳び上がる。
「中央都市の防衛軍か…!!」
ここから中央都市まではかなりの距離がある筈だが、このタイミングでの援軍は素直にありがたい。
影となった2人は互いに交差しながら怨龍を手玉に取り、幾筋もの斬撃を加える。
「医療班、ディーンとノルンの救助を行え!後の者は援護射撃を始めろぉ!」
人類側も怨龍に負けじと雄叫びを上げ、様々な攻撃が雨霰と降り注ぐ。
いつしか怨龍の叫びは咆哮から断末魔へと変わり、その数を減らしていった。
「敵影、反応なし…西側拠点、敵進行を食いとめました!」
報告と同時に、歓声が上がる。
「みな良くやった!被害状況は?」
「ディーンとノルンが意識が戻らない他は…全員無事です…」
「そうか…他の戦線はどうだ?」
「南と東の戦線は当街から2Km地点にて交戦、いずれもそれを退けたようです。北方に関しては中央から…」
「その件に関しては、俺から説明をさせて頂きます。」
突然聞き知らぬ声がかけられた。




