第8話 【偽装】
仲間も3人に増え、私達がこの学院に入学して半年が経った。
私達のパーティーもこれまでで色々と成長してきた。
私は基本能力が平均で150を超え、成長とともに【鑑定】で「気力」という能力値が見えるようになった。
この「気力」については、精神力のようなもので、仲間達に能力を付与したりした際に出る副作用に大きく関わる事が判明した。
気力値が大きくなるほど、副作用の影響が少ないのだ。
そして新たに習得した加護としては、各属性の魔術を最上級まで習得できる加護、さらに剣術関係として、あらゆる剣技を習得できる【剣聖】や、どのような武器も軽々と扱える【剣豪】の加護を追加してみた。
エマは基本能力を平均100程度まで上げ、【剣聖】の加護を付与した。
基本能力については、同年代の学生達の中でも中間くらいの平均値を参考にしており、【剣聖】の加護で、あらゆる剣技を密かに習得してもらっている。
同じくラムダもミューも基本能力は学生達の平均値を参考にして100程度まで上げた。
ラムダは火属性初級のみの使い手ではあったが、新たに火・水・闇の最上級までの魔術適正を加護として付与したので、日々勉強をお願いした。
ミューは風・土・光属性の最上級までの魔術適正を加護として付与し、同じく研鑽に励んでもらっている。
まぁラムダとミューに関しては目立たないように2属性初級までの使用に留めてもらい、まさに「猫を被る」という状況ではあるが。
そして、1番の懸案事項であったのは…私が学院側から
「そろそろ加護の特性についてわかった事があれば報告するように」
と求められていた事である。
とりあえずやはり【創造】という名前でもあることから、やはり物作りに関するものにしておいた方が良いかと思い【設計】なる加護を制作し、それを【創造】の加護の効果として申告する事にした。
この【設計】は建物から工作物まで、脳裏に設計図を描き、手元に材料となる物を用意すれば一瞬で完成させる事ができるというものである。
とはいえ、あまり万能すぎると目立ってしまうので、魔力値に応じて作れる物の大きさを制限し、一度発動すればしばらくは発動できないというなんとも言えない加護としてあえて申告したのだ。もちろん嘘である。
しかし、この偽装工作が上手くいったのか、学院側からは
「能力的には錬金術の分野に近いので、錬金術の授業を積極的に専攻するように」
との指示を受けた。
そうして過ごす日々、全員密かに能力向上に励むとともに、とにかく成績上位になる事がないように過ごしていた。
その中で、私が体術と戦術の授業でよく見る1人の女子生徒で気になる子がいた。
その女の子は、私とエマと同じ人族の子で名前はカイと言った。
美しい銀髪をポニーテールにまとめ、どこか知的な黒い瞳、顔立ちはきっと美女なんだろうがあえて控えめに見せているようなメイク。
能力はそれこそ中の下くらい、大人しく目立たないが、どこか影のある何か秘密を抱えているような子であった。
カイに少し興味を持ち始めたのは、私達が4人で休日に街歩きを楽しんでいた時のことだった。
エマが私に尋ねてきた
「あれ?アルファ君、あの子同じ体術を専攻しているカイさんじゃないですかね?」
街の路地裏から薄汚れたマントで頭部までを隠して怪しげな建物の中に入って行く女性を見つけた。
その建物は繁華街から外れたスラム街に程近い場所にあり、学院の学生にとってとても用事があるような雰囲気の建物ではなかった。
「うーん、何か危ない事に関わってなければいいんだけどね…」
私としては、危ない事や面倒には首を突っ込みたくないので、心配をする事しかできないのである。
それ以来、私はカイの姿を目で追いかけてしまうこととなった。
その中で一つ疑念も生まれてきた。
彼女を監視?していると、どう見ても彼女は能力を隠しているように思えてしょうがないのだ。
そう、私達のようにあえて目立たないように、本当の姿を隠している気がするのだ。
そこで私はとある日の体術の授業でエマに一つお願いをした。
「エマ、体術の授業の組み手の時にカイに対して怪我をさせるくらいの気持ちで、本気で打ち込んでみてくれないか?」
と、その様子を観察する事とした。
エマはカイと組み手のペアを組み、初太刀からカイの顔面に向けて本気の正拳突きをお見舞いした…ところ、カイは一瞬目を見開きこれをギリギリでかわすや、エマの足元に回し蹴りをお見舞いしエマに尻餅をつかせた。
「は!…ごめんなさい!」
我に返ったかのようにエマに謝罪するカイ。
私はカイに近寄り
「やっぱり…能力を隠しているんだね。事情があるんだろうから詳しくは聞かないけど、試すような事をしてごめんよ」
カイは驚いた表情で私とエマの顔を見つめ
「授業後にお時間もらえますか?」
と耳打ちしてきた。
その日の夕刻、私とエマはカイと合流し、彼女からの話を聞いた。
「ごめんなさい。どうか私の事は黙っていてもらえますか?目立つわけにはいかないんです」
「言えない事は聞かないけど、話せる事があれば教えてくれないか?実は街の路地でも隠れるように行動する君を僕らは見てしまっているんだよ」
カイは、やはりというような表情で
「やっぱり見られてましたか…どうか本当に内密でお願いします」
「それは大丈夫だよ。実は僕らも実力を隠し目立たないように日々生活している同類だからね、ハハハ」
「そうだったんですね!…実は私の出身の村は暗殺や諜報を専門としたギルドの組織で構成された村なんです。その村で貯めたお金でこの学院に入学しましたが、日々の学費や生活費はこちらで自分で稼がないといけないので、諜報関係の仕事をして稼いでいたんです」
「でも、暗殺には手は染めていません!本当です!村から出た事で破門され、帰る所もなくここで自分で生きていくしかないんです」
カイの表情は同世代の私達よりもずっと大人びていて、それでいてどこか生きる事に必死なような悲壮感さえ漂っていた。
ここまで聞いてしまってはもう引けない、私もエマも同じ気持ちだったようで、2人で顔を見合わせた。




