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オメガ建国記  作者: 九十九(つくも)
第一章 学院学生編
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第6話 【光魔】

 エマの体調もすっかり回復し、平穏な日々が続く中、私の学生生活はこれといって大きな波乱もなく過ぎていた。


 強いて言えば、午後から受講している魔術の授業で、私にしきりに突っかかってくる女子生徒をあしらうことに少々疲労を感じていることくらいだろうか。


「ちょっとアルファ、あんたまだ午前中は剣術と体術の授業に出てるらしいわね!余裕でいいですわね特待生様は!」


 顔を合わせるやいなや、開口一番に飛んでくるのが毎回これである。


 彼女の名前はラムダ。

 ハイエス共和国出身の、魔人族の貴族令嬢である。

 貴族令嬢といっても、準男爵という最下位貴族の兄二人姉三人の六番目の子供らしく、兄弟の中で唯一加護を授からなかったため、半ば家から追い出されるような状況で入学してきたらしい。


 見た目は息を呑むほど妖艶で美しく、魔人族特有の艶やかな長い黒髪と赤い瞳、健康的な浅褐色の肌とエルフ族のような少し長い耳は、見る者を惹きつけるには十分すぎる魅力を持っている。


 あの喧しい性格さえなければ、の話だが。


「ちょっとラムダちゃん、喧嘩しちゃ駄目ですよ…」


 そんなラムダの背後にいつも引っ付いているのがミューだ。


 プラディア王国出身のエルフ族で、守ってあげたくなるようなおっとり系の女の子である。

 ミューの実家はそれなりの規模の商会らしいが、プラディア王国の学校は身分制度が厳しく、貴族出身もしくは加護持ちでない者は国外の学校に行かせるのが慣例となっているらしい。


 そして何より、エルフ族の女の子は総じて美しい。

 誰をどう見ても、圧倒的に美しい。


 そう、ミューは私の中でもド真ん中に突き刺さるほどの、美しい長い金髪に透き通るような緑の瞳、抜けるように白い肌に男心を迷わす長い耳と、全てが完璧で素晴らしいのである。


 隣にラムダが一緒にさえいなければ最高なのだが。

 そんな正反対の性格の二人がいつも一緒にいるのは、お互いの凹凸が上手く噛み合ってぶつからないからなのかもしれない。


「ラムダ、ミュー、今日も午後からよろしくな。僕は剣術・体術も併せて勉強したいんだよ」


 毎日のこの不毛なやりとりにいささか疲れを感じながらも、美女である事には間違いない二人の横に私は腰掛けた。


「ホントあんたって余裕よね!魔力はあっても魔法全く使えないくせに魔術の授業全部受けるわけでもなく、ホントその余裕羨ましいわ!」


 ラムダのいつもの口撃はワンパターンであるが、私が魔法を全く使えないのは事実であり、先週までは少し対策を考えないといけないとは思っていた。


 この世界の魔法体系では、魔法系の加護持ちは、その属性に応じて上級もしくは最上級魔法までの習得が約束されているらしい。


 しかし加護なしの者は、自らの血の滲むような研鑽によって、初級からコツコツと会得していくしかないのだ。


 また、加護由来の魔術は魔力を消費せずに使用できるが、加護のない者が魔術を使うと自らの魔力を消費するため、その使用回数には明確な限りがある。


 もっとも、私は当初魔力そのものがなかったため、初級魔法すら覚える事も不可能だったのだが、ひとまずそこは解決したので安心していたのだ。


「ミュー、今日の授業は火属性初級か?」


「はいアルファさん、ラムダちゃんは火属性初級はもう覚えたんですけど私は少し苦手で…そろそろ諦めようかとも思っているんです…」


 ラムダはさすが魔人族と言うべきか、加護なしでもあっという間に火属性初級を覚えたらしいが、それ以外の属性には苦しんでいるようだ。


 対してミューは、回復系の光属性初級や風属性初級を覚えているらしく、着々と成長している。



 私も入学からのこの一ヶ月、エマの育成に付きっきりだったため、魔術に関しては全くのノータッチだった。


 そこで考えたのが【全属性初級】という加護である。

 いきなり中級以上の加護を作成しても、魔力操作が追いついていなければ発動できないし、そもそも初級あっての中級なので、ここは地道に初級から固めるという事である。


「ラムダ、ミュー、見てろよ、今日からの僕は少し違うぞ」


「はいはい、特待生様はどうぞご自由に」


 相変わらずラムダは可愛げがない。

 いや、容姿だけは最高に可愛いのだが。


 授業が始まると、学生達は各々に火属性初級の魔法を操り始めた。


 この魔術専攻の学生達を【鑑定】の加護で確認したところ、大部分が加護持ちである事も分かってきた。

 やはり魔術は剣術と違って、生来の潜在能力に頼るところが大きいのかもしれない。


 それ故に、加護持ちの優秀な魔術士はすでに将来を嘱望されており、私のような特待生が囲い込んでしまうと後々面倒な政治的トラブルになる可能性もあるため、なるべく能力的に目立たない子がベストなのである。


 そうなると、私の「可愛い女の子の仲間達計画」における魔術士招集に暗雲が立ち込めることとなるのだ。


 やはりこの加護なしの二人を仲間に引き入れるのがベストなのかもしれないと考えながら、私は今日の授業で行なった火属性初級魔法の全てを、わずか一時間で習得してしまった。


「はぁー!あんた何者なのよ!意味わかんないんだけど!」


 ラムダが予想通りに素っ頓狂な声を上げて叫んだ。


「わぁー!アルファさん、凄いです!素敵です!」


 ミューが目を輝かせて褒めてくれる。


 ひとまず、この二人に【好感度最高】を発動させることとした。

 とはいえ、二人同時には発動できないし、発動後はインターバルが一週間必要となるため、どちらから攻略するかが問題だ。


(ここはいつも一番うるさいラムダからにして、少し静かになってもらうか)



 そして一週間後。

 ラムダに発動させた【好感度最高】の効果が出ているはずなのだが、何も変わらない。


 ラムダの私に対するツンツンした態度が、全く変わらないのである。


 意味がわからないが時間がもったいないので、次はミューを対象に発動させることにした。


 ミューへの効果は覿面であった。

 エマの時のように、私と視線を交わして会話するだけで頬を赤らめ、それはそれは麗しく愛らしいのであるが、ラムダの態度は相変わらず変わらない。


 とりあえずラムダに効果が出ない事の原因は不明だが、今はミューを確実に仲間に引き入れる事が先決だ。


 ミューは現在、光・風の初級を習得しているが、前衛を守るためにぜひとも防御魔法の土属性も覚えてもらい、三属性を操れるようになってもらいたい。


 そして早いうちにエマとも顔合わせをして、仲間として仲良くしてもらいたいものだ。



挿絵(By みてみん)

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