第26.5話 【アシュレーの秘事】
夜が更け、屋敷が深い静寂に包まれる頃。
私は他のメンバーや従者たちに悟られないよう気配を消し、屋敷の別棟にあるメイド長室のドアを静かに叩いた。
「……っ!? アルファ様……!?」
カチャリと鍵が開き、隙間から顔を出したアシュレーは、驚きで綺麗な碧眼を大きく見開いた。
普段のミニスカートのメイド服ではなく、薄手で滑らかなシルクのナイティに身を包んだ彼女を、私は滑り込むように室内へと押し入れ、素早くドアの南京錠を施錠した。
「あ、アルファ様……っ! 一体どうされたのですか……!? こんな夜更けに、屋敷のメイド長である私のお部屋へお越しになるなんて……ダメです、絶対にいけません……っ!」
アシュレーは可憐な顔を真っ赤に染め、両手を胸の前で固く交差させながら、後ずさるように私から距離を取ろうとした。
没落貴族の令嬢として叩き込まれた上品な礼儀作法と、屋敷を預かるメイド長としての強い責任感が、彼女に必死の拒絶を選ばせているのだ。
「私のような元奴隷の女が、主であるアルファ様とこのような過ちを犯すなど……あってはならないことです! ほら、早くお部屋にお戻りください……っ!」
「本当に……戻ってほしいのか?」
私が静かに問いかけながら一歩踏み出すと、アシュレーは壁際に追い詰められ、逃げ場を失った。
私は彼女の細い手首をそっと掴み、壁と自分の体で挟み込むように距離を詰める。
「あっ……っ、アルファ様……ダメ、です……っ。私は……私はメイド長なのですから……っ」
口では必死に拒否の言葉を紡ぐアシュレー。
しかし、触れ合う手首からはドクドクと激しい脈打ちが伝わり、ポニーテールから覗く白い首筋は朱に染まっていた。
彼女の瞳は私への激しい情愛で揺れ動いており、本当は私を拒みたくなどないのだという本音が透けて見えていた。
「嘘をつかなくていい、アシュレー。君の体が……僕を求めている」
「そんな……私は……っ、んんっ……!?」
言いかけようとしたアシュレーの可憐な唇を、私は容赦なく自分の唇で塞いだ。
「んむ……っ!? ふ、ぁ……アルファ、様……っ! んぁ……む……っ」
はじめは驚き、私の胸を小さな手で必死に押し返そうとしていたアシュレーだったが、私が舌を深く入れ込み、甘い口内を力強く愛撫していくと、徐々にその抵抗の力が弱まっていく。
元貴族令嬢としての気品も、メイド長としての理性のタガも、私の情熱的な口づけによってボロボロと崩れ落ちていった。
「ふぁ……あっ……はぁっ……!ダメ……こんなの、我慢……できません……っ」
唇を離すと、アシュレーは潤んだ瞳で私を見上げ、荒い息を吐き出した。
もう彼女の瞳に拒絶の色はない。
私を欲するあまり、喉を鳴らすひとりの熟した女の顔があった。
「もう……限界です……っ! アルファ様、私……私をどうにでもしてください……っ!」
耐えかねたアシュレーはついに自ら理性を捨て去り、私の首元へとしがみついてきた。
その貪欲で甘いおねだりに応えるように、私は彼女の豊かな身体を抱き上げ、静かにベッドの上へと押し倒した。
彼女の着ている薄いナイティの肩紐をそっと滑り落とすと、眩しいほどに白い肌と、豊満な双丘、そしてキュッと引き締まった見事なくびれが露わになる。
「あぁっ……アルファ様……っ! 私、もう……あなた様なしでは生きていけません……っ!」
私の手が彼女のしなやかなくびれを撫でさすり、豊満な胸元へと伸びていく。
指先で愛でるたびに、アシュレーの身体が歓喜に可愛らしく跳ね、ベッドのシーツを固く握りしめた。
「んぁっ……あぁっ……! 手が……熱くて、溶けてしまいそうです……っ!」
屋敷内に声が響かないよう、アシュレーは自身の口元を腕で必死に覆いながら、密やかな喘ぎ声を漏らす。
だが、溢れ出る快楽と愛おしさは隠しきれず、彼女のしなやかな脚が私の腰に強く絡みついてきた。
「アルファ様……っ、私を……あなた様のものだと、身体の奥まで深く刻み込んでくださいませ……っ!」
最初に見せていた拒絶の面影は微塵もなく、私の愛撫を貪欲に求めるひとりの女として、彼女は私に強く抱きついてきた。
私に撫で回され、全身を愛でられる中で、アシュレーの肌は情熱に朱く染まり、甘い蜜のような体香が部屋中に充満していく。
「アシュレー、今夜は君を誰にも渡さないよ」
「はいっ……! 私は……生涯、あなた様だけのメイド……あなた様だけの女です……っ!」
密室の暗がりの中、互いの体温と情熱がどこまでも重なり合い、誰にも邪魔されない秘密の濃厚な時間が、夜が明けるまで静かに、そして激しく続いていった。
翌朝。
小鳥のさえずりと、薄カーテンの隙間から差し込むやわらかな光で目を覚ますと、私の胸元にはアシュレーの温かな体温が残っていた。
金髪のポニーテールが少し乱れたアシュレーは、私の胸に顔を預け、愛おしそうに私にしがみついて微睡んでいた。
シルクのシーツから覗く彼女の豊かな胸元と引き締まった腰回りには、昨夜の激しい情愛の痕跡が鮮やかに残っている。
私がそっと彼女の髪に触れると、アシュレーは長いまつ毛を揺らし、熱の残る瞳をゆっくりと開けた。
「……ん……アルファ様……おはようございます……」
昨夜の乱れを思い出して照れくさそうに頬を赤らめつつも、上品な笑みを浮かべながら、私にそっと唇を寄せてくる。
「おはよう、アシュレー。はじめはあんなに拒んでいたのに……可愛かったよ」
「うぅ……意地悪をおっしゃらないでください……っ。主従の線を守ろうと必死だったのですから……。でも……アルファ様の熱に触れられたら、もう抗えるはずがありませんでした……」
アシュレーは顔を真っ赤にして私の胸元に顔をうずめると、さらに私に強く身を寄せて胸を押し当ててきた。
「朝になりましたら、私はまた皆様の前に立つメイド長に戻ります。……ですから、あともう少しだけ……このお部屋の中で、『あなた様だけの私』でいさせてくださいませ……」
アシュレーは私を見上げ、可愛らしくおねだりをしてくる。
私は彼女の愛おしさに胸を打たれ、再びその豊かな身体を強く抱き締め返すと、秘密の余韻が満ちるお互いの甘い唇を、もう一度深く重ね合わせるのだった。
【オメガ建国記〜外伝〜】
本日から不定期連載開始しました
アルファを取り巻く女性達の知られざる過去
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