第18話 【奴隷市】
私達が卒業してから数日、もう着ることもないかと思っていた学院の制服だが、何やら私の寝室に制服姿で現れる者がチラホラ…
嬉しいことだが、少し恥ずかしい気もする。
全員を集め今後の目標と、喫緊の計画を伝えることにした。
まず目標としては、早いうちに帝国全土の都市を回り、商会の販売網を広げると同時に各都市にオメガ商会の支店を設置すること。
これには、未だ誰も行ったことがない都市もあるため転移は使えない。
なお、当然ながら今いる全員での旅となるため、このイスニアの屋敷を守るための、護衛役やメイド、商会職員を確保することなどを説明した。
カイからの助言通り、これには奴隷市での買い付けを積極的に行っていくことも説明し理解を得た。
そして、アモルである。
彼女の地位を上げ、今後は私直属の従者として動いてもらう事にした。
最後に一番大事な事だ。
各自には自分の身代わりを任せられるような者を探すように指示をした。
つまり、ここが私達が留守中の護衛役と商会職員になるのである。
学院での授業もなくなり、お金もある、美女に囲まれて、なんて幸せ者なのだろうか。
そんな事を考えながら、ある日の昼私はカイとイスニアにある3つの奴隷市の1つに赴いた。
スラム街近くの路地裏に並ぶ長屋に、鉄格子で表を囲われた「見世物小屋」のような路地が縦横無尽に乱立していた。
繁華街に近い小屋ほど値段が高く人気の奴隷を置いており、スラム街に近づくにつれてその需要が乏しくなる安価な奴隷が配置されていた。
「僕には加護の力があるから、正直能力や健康状態についてはどうでもいいんだけど、どう思う?カイ」
「確かに、アルファ様のお好みの容姿のみが選定基準でよろしいかと」
私達は人波の逆の、スラム街近くから見て回ることにした。
人種は多種多様、年齢も性別もさまざまである。
若いから需要がある、女だから人気がある、ということではないという事もよくわかった。
店前に立つ奴隷商に尋ねたところ、やはり一番重要視されているのは、健康状態だそうだ。
そして、その奴隷商から面白い事を聞いた。
なんでも、最近帝国への納税が滞り取り潰しになった没落貴族のメイド達が、近々売りに出されるというのだ。
「元メイドであれば、仕事内容なども全て分かっているでしょうから話は早いかと思います」
カイも興味を持ったようだ。
私達はそのメイド達が売りに出されるオークションの日程を教えてもらい奴隷市を後にした。
そしてオークション当日
オークション会場は奴隷市の中心にある建物の地下において開催された。
素顔が割れないように私とカイは変装の加護で身なりを変え、会場へと入った。
ステージに一人づつ登壇し、購入希望者が手を挙げて言い値をオークションマスターに伝えていく、という方法であり、いたってシンプルであった。
私達は新顔であったことから、入場するや
「おいおい、ここは遊び場じゃないぞ貧乏人!さっさと帰れガキ!」
など散々嘲笑われ罵られたのだ。
カイがキレないか心配である。
そして、この日のメインである没落貴族の元メイド達の紹介が始まった。
「さて、皆様方、本日のメインです〜。即戦力!健康状態異常なし!まとめ買いでもバラ買いでも大丈夫です!」
「え〜本人達の希望で、まとめ買いをして下さる方がいれば嬉しい、との事ではあります!合計10名のメイド、全員20代女、5千万ギルから!どうですか?」
会場は一瞬ざわつくが、流石にポンと出る金額ではない。
「バラだと一人550万ギルから、まとめ買いがお買い得ですがぁ〜」
私はカイを見て合図をした。
「買った!まとめ買いです!」
カイが挙手して叫んだ。
会場中の視線が刺さる。
そりゃそうだ、さっきまで貧乏人だのガキだの馬鹿にされていた私達が5千万ギルに手を挙げたのだから。
「すみません、貧乏人のガキですが、お金さえ払えば問題ないですよね?」
私はオークションマスターに聞いた。
「もちろんでございます!私共にとっては皆様が大切なお客様です。他にいませんか?5千万ギル〜5千万ギル〜5千万ギル〜……はい!落札!ありがとうございます!」
他の客は誰も私と目を合わせようとしない。
落札後の手続きは全てのオークション終了後に行われるため、引き続きオークションを楽しむことにした。
そして全てのオークション終了後、特別室に招かれた私達はここで10人の元メイド達と直接会った。
皆若く働き者の雰囲気がよく伝わってきたが鑑定してみたところ、全員に
特殊能力 メイド
の文字が刻まれていたので本職なんだと改めて安心した。
「アルファ様?もしかしてステージ上で鑑定していなかったのですか?」
カイからのツッコミ…すみません…
そして、オークションマスターがニヤリと笑い…
「とりあえずお客様こちらにお座りください。絶品の紅茶をご用意いたしておりますので。あと…これは…お客様だけの特別なお話があるのですが…お聞きになりますか?」
「まぁ、まずは話だけなら…」
「実は…オークションには出せませんでしたが…この没落貴族には他国の学校に行っていた御令嬢がおりまして…その御令嬢も一緒にいかがでしょうか?」
「貴族のお嬢様??」
「左様でございます。この貴族、いや元貴族は酷くて亡くなった側室の子供だからという理由で、メイド達よりも先に御令嬢を奴隷商に売ってしまったんですよ〜。それを見たメイド達が、それならばと自分達も奴隷落ちを志願したという経緯がありましてー」
「ひどい話だ!」
怒り心頭である。
「で、御令嬢…5千万ギル…なんですが…まとめ買いして頂きましたのでーーー4500万ギル!いかがでしょうか?」
「4千万!これ以上なら買わない!」
勢いで出てしまった…
カイが睨む…
「うーん、ん〜、分かりました!4千万ギル!メイド達と合わせて9千万ギル!これでいいです!」
没落貴族の令嬢とそのメイド達、合計11名9千万ギル…買ってしまった…
しばらくカイの顔は見ないようにしておこう…




