第17話 【卒業】
私達は新たに加わったロザを含めたオメガ全員で昇級試験を受けたが、予想通りの全員合格となった。
これでパーティーランクもCランクとなり、当初の目的であるところまできた。
これ以上のランクアップは必要ないので、卒業までのこの半年はそれぞれの鍛錬に勤しむとしよう。
オメガ商会の方も貴族を得意先とし、主に貴金属や装飾品、骨董品などを中心に着実に利益を上げている。
生活必需品などにも手を広げては、とのアモルからカイへの打診もあったが、そこに手を出してしまったら既存の商店などに打撃を与えかねないため、無用な争いを避けるためカイが許可しなかった。
賢明な判断だ。
そして、私達オメガのメンバーは能力値をさらに底上げすることとし、卒業に向けての最終段階に入った。
私は基本能力値を600まで上げ、すでにS級冒険者でもかなりの実力となった。
他の5人も基本能力値を500以上まで上げ、こちらもすでにS級相当である。
アモルについては、もう立派に商会の代表としての地位と信用を得ており、何も心配することはない。
そこで私は、私達の全体の呼び名を「オメガファミリア」とし、冒険者パーティー名を「オメガ団」と改名、商会部門についてはこれまで通り「オメガ商会」として区別して運用していくことにした。
次に必要となるものは何かと、カイに聞いたところ
「ここまでは前進あるのみ、で成長してきました。これからは基盤を盤石とするための組織作りではないでしょうか」
とのことだった。
「つまり…どういうこと?」
「たとえば、我々が新たな都市などに出掛けている際、イスニアのオメガ商会を護衛する役目や、そのオメガ商会もアモル1人では仕入れから納品準備などは無理となってくるでしよう。つまり、それぞれの分野における人材確保と育成かと」
なるほど、より私達が自由に動けるようにするための人材確保育成、ということらしい。
さらにカイは
「まもなく学院を卒業となりますが、これからは今まで以上に素性のわからない者との交流が多くなります。したがって、新たな仲間を見つけるに際しては、絶対に裏切らないという確約が必要となります。そう奴隷なども利用していくのも良いかと」
奴隷か…あまり乗り気ではないなぁと思っていたが…
「アルファ様、貴方様の故郷ではどうだったかは分かりませんが、このイスニアでは奴隷の取り扱いには厳格な取り決めがあり、奴隷かどうかなどは契約者双方にしかわからないようになっております。奴隷の衣食住すべてに渡り、主人は責任を持たねばならないのです」
「つまり、奴隷にも市民権のようなものがある?ということかな?」
「その通りです」
で、あれば私の中のハードルも少し下がった。
考え方を変えれば、好みの人材を獲得しやすく、奴隷落ちした者の生活の面倒を見れるという、いわば慈善事業にもなるのではないか…と考えた。
とはいえ、学生の身分で奴隷を従えるなど言語道断、目立ってしまう。
これは卒業後の課題である。
卒業までにすることとしては…あとは、アレだな…
進路指導
成績トップクラスの者達は、やはり帝国騎士団や魔道士団からの拒否権無しのスカウトが舞い込んでいると聞く。
その他でも、有力貴族の軍人やお抱え冒険者などなど…
オメガ団の彼女らは想定通りの成績であったため、数件の貴族からの「側室」のお誘いはあったようだが、全て丁重にお断りしたようだ。
私には…何もなかった
想定通りとはいえ、少し寂しい…
教師達には全員が「冒険者」で生活していくと回答し、とりあえずのところは問題はない。
正直お金には困っていない。
余るくらいの余裕があるため、命を削って冒険者をするよりも、商会運営に重きを置き、その過程で力を発揮していくことが今の予定である。
まぁ、Cランク程度では苦戦することもないが、稼げる賃金も程度が知れているからである。
「あ、あのご主人、ちょっとお願いしてもいいですか?」
アモルが人懐っこい笑顔で擦り寄ってきた。
「なんだい?アモル」
「実は…手いっぱいです…商会業務が…。受文、発注、在庫管理、納品作業、資金管理…規模が大きくなるにつれて…カイ様がいない平日は目が回る忙しさで…その事をカイ様に相談したら『甘えるな』と怒られてしまいましたにゃ、テヘッ」
確かに聞くだけで大変だ。
これは先程カイから聞いた、各専門分野における人員確保の事だ。
さすがカイ、と言いたいところではあるが、アモルに少し手厳しい気がする…
間違いがあると大変な事になる部門でもあるため、人員の数には細心の注意が必要なのだと、私自身も反省した。
と、同時に、軌道に乗った商会については、そろそろアモルを皆と同じ私直属の従者の地位に上げてみようかと思っている。
そうこうしている間に学院の卒業日である。
寮の荷物をいそいそと運ぶ学生や、荷馬車に積み込む貴族達など、横目で見ながら私達は転移で一瞬である。
ロザとアモルが屋敷の2階にある個室を清掃してくれ、スムーズに荷物の移動も終わった。
どうやら屋敷では、私の部屋の隣に誰が入るのかで若干揉め事が発生したようだが、そこには触れないようにしておく。
卒業日、式も滞りなく終わり、騎士団や魔道士団に連れて行かれる者、貴族のお迎えつきの者、それぞれのお別れの余韻を楽しむ余裕もなく、私達の学院生活は幕を閉じた。
イスニアでの三度目の夏…気がつけばオメガ団全員が16歳になっていた。
- 第一章 加護の始まり 終 -




