第16話 【誓立】
ロザと再会してからというもの、ラムダは毎日彼女の部屋に通った。
なんだかんだで同じ歳とはいえ、ラムダにとっては妹分的な存在だったのかもしれない。
カイにロザのイスニアでの冒険者稼業ぶりについて調べてもらった。
ロザはやはり私達が学院に入学した2ヶ月後にイスニアに来たようで、すぐに冒険者としての活動を始めたようだ。
しかもあの容姿、ソロで活動していたら他の男どもが放っておくはずがない。
だがしかし、ロザのあの超人見知り?寡黙?な態度に扱いきれないまわりが音をあげて、しまいには誰も相手をしなくなったとのことだ。
特に問題を起こす訳ではないが、度々ソロでの活動中に危険な目にあい、その度にギルドから注意を受けているのだそうだ。
私はラムダがロザの元に行っている際、エマとミュー、カイと話した。
「これは…もう放ってはおけない…よね?」
みんな頷く。
「打算的な事を申し上げてもいいですか?アルファ様」
「なんだいカイ」
「彼女はお見受けしたところ剣士と思われます。しかもエマとは別タイプの剛腕タイプ。オメガには必須のメンバーかと…」
そう言えば前にカイが言っていた…もう1人エマとは違うタイプの剣士が欲しいと…
「これも縁かなぁ?」
「縁だと思います。アモルの件もありますし、私達が学院に通っている時間に自由に動ける仲間もいた方がいいと思います」
カイが答え、エマも
「仲間になるとしたら私とペアになるんでしょうけど、彼女のあの真面目さは私は大好きです」
もう決定のようなもんだ。
しかし今回はラムダとの関係もあることから、事情の説明と勧誘はラムダにやってもらうことにした。
幼少期の約束とはいえ、ロザはラムダを追いかけて来たのだから。
その後ラムダにあまり急かす事のないように少しづつロザに話をするように伝え、私達はその結果を待つことにした。
それから数日後、ラムダからロザの部屋に呼ばれた。
私がロザの部屋に入ると、目の前には片膝をつき頭を下げて私の到着を待つロザの姿があった。
その姿だけで答えは十分であった。
彼女との従者契約を結び、彼女には【剣豪】の加護を与えた後、数日に渡って他の仲間達と同等の基本能力値までの底上げを行った。
その後ロザには重要な役目を伝えた。
それは平日の日中、オメガ商会代表のアモルの護衛を行うこと。
大金を動かすアモル、最初の貴族との商談成功以降、貴族とのやり取りが増えてきていることから護衛は必須なのだ。
しかも商談時にロザなら余計な発言もしないだろうし、最適である。
そして学院の休日にはオメガメンバーとして迷宮探索に行き、連携や実戦経験を積んでもらった。
ロザを仲間に引き入れた事で思わぬ副産物も生まれた。
それはギルドからのオメガの信用である。
もはやソロ冒険者として「死」にまっしぐらだったロザをメンバーに引き入れ、上手に活動できている事がギルド側からすれば、かなりの好評価だったのだ。
これといって何かをもらえる訳ではないが、アモルが言っていたのだ
「命の次に大事なモノは、お金ではなくて、信用なんです」
と、確かにそう思う。
となれば、アモルには早々に拠点を確保してもらわねばならない。
アモル曰く現在候補地として上がっているのが、郊外の貴族の元別荘・市街地の元犯罪者グループの建物・城壁外の元農家、だそうだ。
どれも金額的には変わらないが、立地で選ぶか、広さで選ぶか、その中間で選ぶか…
「カイ、どう思う?」
「城壁外は論外です。犯罪者グループの建物は立地はいいですが、今後の事を考えた場合拡張性に乏しいです」
「となると…元別荘か」
「立地的にも許容範囲ですし、貴族の元別荘、つまり建物としての作りは信用できる、という事かと」
決定である。
アモルには早急に元別荘を買い上げ、改装に入るように指示した。
部屋数も20部屋以上あり、大広間・庭付きである。
まぁ細々としたところは私の【設計】の加護でどうとでもなる。
貴族出身のラムダからはこれだけは!とお願いされていた風呂も最初から設置されており貴族様様である。
それからしばらくして、拠点へのロザとアモルの移住が完了後、建物周りに強力な結界を張った。
そしてアモルは大量に貴族向けの置き物や玩具を仕入れ、休日に私がさらに洗練された物へと生まれた変わらせる作業が続いた。
休日のその間は私を外した5名で迷宮探索、平日はアモルとロザで貴族の屋敷巡り、と生活のルーティンが定まりつつあった。
一時は心配していたロザも、やはり平日に自由に動ける仲間として、その存在感と重要性には本当に感謝である。
私達学生も、当初の予定通り実力をひた隠しにし、成績は常に中の中程度。
剣術大会や魔術大会などにも参加する事もなく、平凡な学生としてまっしぐらである。
途中学生間で、学院生のパーティーがギルドで迷宮を荒らしまくっている、などという噂が流れてきた時は少々焦ったが、そこもどこぞの貴族のご子息パーティーが得意げに自慢してくれたおかげで、私達に矛先が向くことはなかった。
そして、いよいよ待ちに待ったCランク昇級の時期である。
準備は全て整った。
ロザも私達より先にDランクに昇級していたので、全員での受験だが心配はないだろう。




