第14話 【復讐】
アモルがイスニアに来て1週間、ミューは毎日授業後に彼女に会いに行っていた。
体調は良くなってはいるものの、精神的ダメージがかなり残っているようだ。
そしてカイからの報告が入った。
「まず商品の現在地ですが、イスニア迷宮から北に行った山岳地帯の盗賊のアジトに未だ保管されているようです。盗賊の人数ですが10名ほどと思われますが能力的にはDランク相当のようです。盗賊と組んでいたと思われる冒険者パーティーですが、こちらもDランクの4人パーティーで、現在川下を中心にアモルの遺体を毎日捜索中のようですが、毎晩とある酒場に戻ってきているようです」
私は少し考えてから
「わかった、今からアモルの宿に全員招集をかけてくれ。明日は学院は休日だからそのまま対処に向かう事も伝えてくれ」
「はっ!」
どう料理するか悩みながら私もアモルの宿に向かった。
宿に私がついた時にはすでに全員が揃っていた。
「今から戦う相手は魔物じゃない。生身の人間だ。もし、少しでも気が引けるならこの時点でこの作戦から離脱してくれ。離脱したからといってそれはしょうがない事だから気にしないでいい」
「アルファならそう言うと思ったから、もう全員気持ちは固まってるよ!ハハハ!」
ラムダがニヤリと笑う。皆も頷いた。
「わかった。じゃあ作戦を伝える。カイ、もし他に良案があれば遠慮なく言ってくれ」
「分かりましたアルファ様」
「まず、冒険者パーティーにはカイ単独で向かってもらう。暗殺だ…。酒場から出たところからどこかで襲ってもらいたい。くれぐれも騒ぎにならないように気をつけて」
「分かりました」
「そして盗賊だ…。こっちは人数がいるから僕を含めた全員で一斉襲撃をかける。そしてその場で略奪された品物を回収する」
「はい!」
みんなが気合いの入った返事をした。
「あ、アモルは当然だが留守番だからね」
「私も行きます!」
「駄目です!あなたが行けば足手まといになります!ここでこの作戦の成功を祈りなさい」
すかさずミューが制した。
「…はい、ミュー様…」
私達はカイと別れ、転移で迷宮出入口まで移動し、そこから山岳地帯を目指した。
日も暮れ魔物の活動が活発になる時間なのでとにかく慎重に急いで移動する。
アジトに到着した頃には完全に暗くなっていたが、幸運にも魔物には遭遇しなかった。
アジトには外から確認したところ12名が酒盛りをしていた。
「ラムダ、ミュー、君達は外にいる12名を魔法で根絶やしにしてくれ。その混乱に乗じて僕とエマがアジト内に突入する。くれぐれも撃ち漏らしがないようにだけ頼む」
「了解!」
いよいよ作戦決行である。
ラムダとミューの強烈な魔法攻撃が炸裂したと同時に私とエマは建物内へ突入した。
建物内には盗賊の頭領らしき男ともう1名いたが、私とエマで一瞬にして真っ二つに切り裂いた。
ラムダ達の魔法攻撃も見事撃ち漏らしなく、わずか数秒で盗賊全員を殲滅する事に成功した。
建物内を確認したところ、これまで略奪したと思われる大量の宝石やお金、また骨董品や絵画などを発見した。
全てを空間収納に収めて早々に現場を離脱することにした。
私達がアモルの宿に戻ってきた時にはすでにカイも戻っており、任務完了の報告を受けた。
冒険者パーティーは酒場で明日のアモルの探索について話し合い、すぐに店を出た後薄暗い路地裏に入った瞬間に全員を暗殺したそうだ。
声すらも出せないほどの一瞬で終わらせたらしく、【隠密】で姿を隠していたから彼等は何が起きたかわからないままに死んでいったことだろう。
とりあえず、全員が無事に帰還した事を喜びつつも、このような作戦は二度と実行したくないと思った。
回収した荷物からアモルの荷物を取り出したところ、略奪時の影響と思われる傷や破損部位が見受けられた。
「アモル、この商品は僕が直すから、君は商談の準備をするんだ」
「分かりました…って直るのですか?」
まぁそうなるだろう。
「とりあえず黙って僕の指示に従うんだ。詳しくは全てが終わってからだ」
「分かりました!」
「とりあえず、アモル以外は寮に戻って明日朝ここに再度集合だ。僕は今から商品の修復をするから」
部屋に残った私はアモルに寝るように指示し、破損した商品を1個づつ手に取り、錬金術で元の造形よりもさらに美しく、そして煌びやかに修復していった。
全ての修復が終わったのは日が昇り始めた頃だった。
朝になると再び全員がアモルの部屋に集まり、私の修復した商品に感嘆の声を上げた。
「こ…これは…とんでもない修復ですわ。いや、修復ではなくて、もはや別物、国宝級と言っても過言ではないと思います」
ミューがとりわけ驚いていたが、やはり商会の娘、良い物の目利きに長けているのだろう。
カイに馬車を1台チャーターするように指示し、その間にアモルとミューは貴族の屋敷まわりをして午後からの商談の予定を組ませた。
私はその間アモルの部屋で少し寝させてもらう事とし、エマとラムダには冒険者ギルドに行って昨夜の暗殺と盗賊アジト襲撃についての、世間の様子を探ってきてもらった。
どれだけ寝たのだろうか…ふと目が覚めたら…そこには全員がすでに揃っていた。
「おはようございますアルファさん」
ミューが微笑むと
「ありがとうございました!本当にありがとうございました!全て商談が上手くいき、完売しました!それも予定以上の高値で!」
アモルが叫ぶ、どうやら完全にやってしまったらしい…
「ごめん!起こしてくれればよかったのに…」
ミューが感極まったのか半泣き状態で
「アルファさん、原価1千万ギルに対して5千万ギルです!貴族の皆様も驚きの商品でした!」
なんと、とんでもない金額で売れてしまったようだ。
みんなで大喜びしたいところだが、私にはまだ片付けなければならない物がある…アジトから持ち帰った他の財宝やお金だ。
「アルファ様、お金に関しましては、このまま我々で運用するしかないかと思います。盗賊の被害に遭った家族などに返還するのが好ましいのは承知しておりますが、おそらくそこから我々の犯行だとすぐにバレるかと」
カイが言う事も確かだ。
しかも分配比率なども考えるだけで頭が痛くなってくる。
「さらに財宝類も同じく表立って取り扱えば足がつく可能性が高いですので、闇オークションで流してしまうのが賢明です」
分かっていたが、やはりそうなる。
「わかった。カイ、君に新たに【変装】の加護を与えるから処分をお願いできるか?」
「はっ!」
アモルは何の話かよく分かっていないようであったが、突然私の前に膝をつき頭を下げ
「アルファ様、どうか私をアルファ様のしもべとして使えさせてください。本来であればミュー様の使用人であった身ですが、ミュー様からも背中を押していただきました。本当であればすでに亡くなっているこの命。どうか私の命、如何様にもお使い下さい!」
ここまで関わってしまった以上断る理由はない。
「アモル頭を上げて。わかったよ。けど一つ条件がある。君には僕らパーティーの金庫番になってもらいたいんだけど、君の直属の上司はカイだ。それでもいいなら、よろしく頼むよ」
「わかりました!命に変えても金庫番を務めさせていただきます!ご主人様」
私達のパーティーに金庫番が誕生した。




